【楞厳経】巻九
想陰の十種の魔境
アーナンダよ! 修行者が三摩地を修め、受陰が尽き果てた時、まだ漏尽の境地に達していないが、
阿難! 彼善男子修三摩提受陰盡者,雖未漏盡,[SG0908001]
鳥が籠を離れるように、心は肉体から離れることができる。
心離其形,如鳥出籠,已能成就。[SG0908002]
凡人の身で菩薩の六十の聖位を一歩ずつ修め、意生身(意念によって成り立つ身)を習得し、自由自在に去来することができる。
從是凡身、上歷菩薩六十聖位,得意生身隨往無礙。[SG0908003]
たとえば、熟睡している者は寝言を言う。それは無意識の話だが、その言葉は意味をなし、起きている者には理解できる。
譬如有人熟寐寱言,是人雖則無別所知,其言已成音韻倫次,令不寐者咸悟其語。[SG0908004]
『想陰区宇』はこれの如し。
此則名為想陰區宇。[SG0908005]
念の動きが尽き、心に浮かぶ雑念がすべて消滅し、
若動念盡,浮想銷除,[SG0908006]
心が明鏡のように何の塵垢もなければ、十二類の衆生の生死輪廻が心に現れる。
於覺明心如去塵垢;一倫死生首尾圓照,[SG0908007]
この境地は『想陰尽』と呼ばれる。
名想陰盡,[SG0908008]
この境地に達した者はすでに煩悩濁を超えている。
是人則能超煩惱濁。[SG0908009]
想陰の根本を究め、『融通(融合と相互に接続すること)妄想』がその根本なのである。
觀其所由,融通妄想以為其本。[SG0908010]
一、
アーナンダよ! 受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
阿難! 彼善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908011]
修行者は三摩地の中でこの円明の性に溺れ、欲望に駆られてさまざまな方便の法を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛圓明,銳其精思,貪求善巧。[SG0908012]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908013]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく方便の法を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人不覺是其魔著,自言謂得無上涅槃。來彼求巧善男子處,敷座說法。[SG0908014]
天魔は修行者を瞬間に比丘・帝釈天・婦人・比丘尼などの姿に変身させ、
其形斯須或作比丘令彼人見,或為帝釋,或為婦女,或比丘尼;[SG0908015]
あるいは真っ暗闇の部屋で身体から光を放たせる。
或寢暗室,身有光明。[SG0908016]
無知な信徒たちは修行者を菩薩と信じ込み、彼の言葉を信じて堕落し、如来の律儀を破り、密かに欲望にふける。
是人愚迷,惑為菩薩。信其教化,搖蕩其心,破佛律儀,潛行貪欲。[SG0908017]
修行者は常に吉凶や不思議な現象を語り、あるいは如来がどこに降誕することを予言し、
口中好言災祥變異,或言如來某處出世,[SG0908018]
あるいは劫火や戦争などことを語って人々を恐れさせ、これによって財物を騙し取る。
或言劫火、或說刀兵,恐怖於人,令其家資無故耗散。[SG0908019]
これらの天魔は本来妖怪であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此名怪鬼,年老成魔,惱亂是人。[SG0908020]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師俱陷王難。[SG0908021]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908022]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908023]
二、
また、アーナンダよ! 受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
阿難! 又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908024]
修行者は三摩地の中で遊歴に溺れ、心が飛躍してさまざまな体験を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛遊蕩,飛其精思,貪求經歷。[SG0908025]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908026]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく遍歴を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人亦不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求遊善男子處,敷座說法。[SG0908027]
修行者の姿は変わらないが、聴衆は急に自分が宝蓮華の上に座り、全身が紫金色に輝くのを目にする。
自形無變,其聽法者、忽自見身坐寶蓮華,全體化成紫金光聚。[SG0908028]
その場の全員は同じ体験をし、未曾有の喜びに浸る。
一眾聽人,各各如是,得未曾有。[SG0908029]
無知な信徒たちは修行者を菩薩と信じ込み、心が放縦になり、如来の律儀を破り、密かに欲望にふける。
是人愚迷,惑為菩薩,婬逸其心,破佛律儀,潛行貪欲。[SG0908030]
修行者は常に、『諸如来はこの世にいる』と言い、
口中好言諸佛應世,[SG0908031]
『某所の某氏が某如来の化身であり、某氏が人々を救済するために来る某菩薩である』と放言をする。
某處某人當是某佛化身來此,某人即是某菩薩等來化人間。[SG0908032]
信徒たちはこれを信じ、修行者を崇拝し、邪見を抱き、智慧の種が消滅する。
其人見故、心生傾渴,邪見密興,種智銷滅。[SG0908033]
これらの天魔は本来旱魃の鬼であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此名魃鬼,年老成魔,惱亂是人。[SG0908034]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師俱陷王難。[SG0908035]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908036]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908037]
三、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908038]
修行者は三摩地の中で如来の心に投合することに溺れ、心を清めようとして、その投合を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛綿㳷,澄其精思,貪求契合。[SG0908039]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908040]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく心の投合を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人實不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求合善男子處,敷座說法。[SG0908041]
修行者と聴衆の姿は変わらないが、聴衆はその未聞(まだ聞いたことがないこと)の法を聴いてすぐ悟りを開いた。
其形及彼聽法之人,外無遷變,令其聽者,未聞法前心自開悟。[SG0908042]
心には変化が起こり、あるいは宿命通(自他の前の世と後の世のことを知る能力)や他心通(他人の心を読み取る能力)が覚醒し、あるいは地獄の光景が見られ、
念念移易,或得宿命、或有他心、或見地獄、[SG0908043]
あるいは世間の吉凶を予知し、あるいは口が自動的に詩をうたい、経を読誦する。
或知人間好惡諸事,或口說偈、或自誦經。[SG0908044]
皆は喜び、未曾有の体験をした。
各各歡喜,得未曾有。[SG0908045]
無知な信徒たちは修行者を菩薩と信じ込み、神通の力に迷い、如来の律儀を破り、密かに欲望にふける。
是人愚迷,惑為菩薩。綿愛其心,破佛律儀,潛行貪欲。[SG0908046]
修行者は常に、『如来には大小・先後・真偽・男女の区別があり、菩薩も同じである』と言い、
口中好言佛有大小,某佛先佛,某佛後佛,其中亦有真佛、假佛、男佛、女佛,菩薩亦然。[SG0908047]
信徒たちはそれを信じて本来の信心を捨て去り、邪見に陥る。
其人見故,洗滌本心,易入邪悟。[SG0908048]
これらの天魔は本来魅惑の鬼であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此名魅鬼,年老成魔,惱亂是人。[SG0908049]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師,俱陷王難。[SG0908050]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908051]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908052]
四、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908053]
修行者は三摩地の中で万物の根源を究めることに溺れ、探究の欲望に燃えている。
三摩地中心愛根本,窮覽物化性之終始,精爽其心,貪求辯析。[SG0908054]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908055]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく根源の探究を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人先不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求元善男子處,敷座說法。[SG0908056]
信徒たちは修行者の神威に圧倒され、説法を聞かなくても自然と修行者に心服する。
身有威神摧伏求者,令其座下雖未聞法自然心伏。[SG0908057]
修行者は、『如来の涅槃・菩提・法身とは、まさにいまここにある私の肉身である。
是諸人等,將佛涅槃、菩提、法身,即是現前我肉身上。[SG0908058]
私の子孫が代々これを受け継ぐゆえ、法身は常住して絶えないのだ。
父父子子遞代相生,即是法身常住不絕。[SG0908059]
また、この世界こそ仏国であり、他の浄土も金色の相もない』と信徒たちに言い放つ。
都指現在即為佛國,無別淨居及金色相。[SG0908060]
信徒たちはこれを信じ、本来の信心を捨てて修行者に帰依し、未曾有の喜びに浸る。
其人信受,忘失先心,身命歸依,得未曾有。[SG0908061]
無知な信徒たちは修行者を菩薩と信じ込み、心が堕落し、如来の律儀を破り、密かに欲望にふける。
是等愚迷,惑為菩薩。推究其心,破佛律儀,潛行貪欲,[SG0908062]
また、修行者は常に、『眼・耳・鼻・舌はすべて浄土であり、男女の陰部こそが菩提と涅槃の所在である』と公言する。
口中好言眼、耳、鼻、舌皆為淨土,男女二根即是菩提涅槃真處。[SG0908063]
無知な信徒たちは、その汚らわしい言葉を信じ込んでいる。
彼無知者,信是穢言。[SG0908064]
これらの天魔は本来蠱毒・呪いの鬼であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此名蠱毒魘勝惡鬼,年老成魔,惱亂是人。[SG0908065]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師,俱陷王難。[SG0908066]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908067]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908068]
五、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908069]
修行者は三摩地の中で神霊との感応を渇望し、精査を重ね、啓示を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛懸應,周流精研,貪求冥感。[SG0908070]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908071]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく感応を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人元不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求應善男子處,敷座說法。[SG0908072]
天魔の力によって、修行者は百・千歳の人のように見え、
能令聽眾,暫見其身如百千歲,[SG0908073]
その姿を目にし、聴衆たちは修行者を崇拝し、離れがたくなる。
心生愛染,不能捨離。[SG0908074]
彼らは自ら召使いとなり、四事(衣服・飲食・臥具・湯薬)を供養し、疲れを知らない。
身為奴僕,四事供養不覺疲勞。[SG0908075]
天魔の魔力の下で、信徒たちは修行者を自分の前世の師、あるいは善知識と信じ込み、のりに付着するように親しみ、未曾有の喜びを感じる。
各各令其座下人心,知是先師本善知識。別生法愛,粘如膠漆,得未曾有。[SG0908076]
無知な信徒たちは修行者を菩薩と信じ込み、教えに従い、如来の律儀を破り、密かに欲望にふける。
是人愚迷,惑為菩薩。親近其心,破佛律儀,潛行貪欲。[SG0908077]
修行者は信徒たちにこのように言う、
口中好言:[SG0908078]
『過去の世において、私はまず誰それを済度した。その時、お前は私の妻妾や兄弟であった。いま来てお前を済度し、皆一緒にある仏土に帰り、如来を供養しよう。』
『我於前世、於某生中先度某人,當時是我妻妾兄弟,今來相度;與汝相隨歸某世界,供養某佛。』[SG0908079]
あるいは、『別に大光明天という世界があり、そこはすべての如来の住まうところである。』
或言:『別有大光明天,佛於中住,一切如來所休居地。』[SG0908080]
無知な信徒たちはこれを信じ、本来の信心を捨て去る。
彼無知者,信是虛誑,遺失本心。[SG0908081]
これらの天魔は本来悪霊であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此名厲鬼,年老成魔,惱亂是人。[SG0908082]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師,俱陷王難。[SG0908083]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908084]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908085]
六、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908086]
修行者は三摩地に深く入り、自分を厳しく律して修行に励み、静寂の境地を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛深入,克己辛勤,樂處陰寂,貪求靜謐。[SG0908087]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908088]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく静寂を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人本不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求陰善男子處,敷座說法。[SG0908089]
修行者は信徒たちに前世の記憶を呼び起こさせ、
令其聽人各知本業;[SG0908090]
あるいは信徒に、『お前の寿命は尽きていないが、魂はすでに畜生となった』と告げ、
或於其處語一人言:『汝今未死已作畜生。』[SG0908091]
別の者に、『その人の後ろに立ち、彼の尻尾を踏め』と命じる。
勅使一人於後踏尾,[SG0908092]
すると、その人がにわかに立ち上がれなくなる。
頓令其人起不能得。[SG0908093]
信徒たちはこれを見て修行者の能力に深く敬服する。
於是一眾傾心欽伏。[SG0908094]
修行者は他人の心を読み取ることができ、
有人起心,已知其肇。[SG0908095]
如来の律儀を廃止し、別に苦行を定め、比丘を誹謗中傷し、他人の信徒を罵り、口が軽く他人の秘密を公表する。
佛律儀外,重加精苦。誹謗比丘,罵詈徒眾,訐露人事,不避譏嫌。[SG0908096]
また、常に未来の吉凶を予言し、それらの予言がことごとく的中する。
口中好言未然禍福,及至其時,毫髮無失。[SG0908097]
これらの天魔は本来大力の鬼であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此大力鬼,年老成魔,惱亂是人。[SG0908098]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師多陷王難。[SG0908099]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴,[SG0908100]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908101]
七、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908102]
修行者は三摩地の中で知見を広めることに溺れ、過去の事柄を詮索し、宿命の知ることを貪欲に追い求める。
三摩地中心愛知見,勤苦研尋,貪求宿命。[SG0908103]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908104]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく知見を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人殊不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求知善男子處,敷座說法。[SG0908105]
そこで、理由なく説法の場に大きな宝珠を発見する。
是人無端於說法處,得大寶珠。[SG0908106]
あるいは天魔が動物の姿に変身し、口に宝珠・種々の宝物・古文書・呪符・珍奇な物品をくわえて信徒に捧げ、そして、信徒の身体に憑依する。
其魔或時化為畜生,口銜其珠,及雜珍寶、簡策、符牘、諸奇異物,先授彼人,後著其體。[SG0908107]
あるいは修行者は宝物の埋蔵場所を語り、信徒が探しに行くと、本当に明月珠を見つける。
或誘聽人,藏於地下有明月珠,照耀其處。[SG0908108]
信徒たちは皆、未曾有の喜びに包まれる。
是諸聽者得未曾有。[SG0908109]
修行者は薬草だけ食べ、あるいは一日に一粒の麻や麦だけを食べ、しかし、天魔の加護の下で、体格が太っている。
多食藥草,不飡嘉膳,或時日飡一麻一麥,其形肥充,魔力持故。[SG0908110]
口が軽く比丘を誹謗中傷し、他人の信徒を罵り、
誹謗比丘,罵詈徒眾,不避譏嫌。[SG0908111]
常に宝蔵の位置や聖賢の隠居所を語り、毎回その言葉は的中する。
口中好言他方寶藏,十方聖賢潛匿之處。隨其後者,往往見有奇異之人。[SG0908112]
これらの天魔は本来山林や土地の守護神、あるいは河川・高山の鬼神であり、長年を経て天魔となったものである。
此名山林、土地、城隍、川嶽鬼神,年老成魔。[SG0908113]
淫行を広め、如来の戒律を破壊し、信徒と共に密かに欲望にふけり、あるいは苦行をして草や植物のみを食べる。
或有宣婬破佛戒律,與承事者潛行五欲;或有精進純食草木,[SG0908114]
天魔は人々を惑わし、行いが気まぐれで、やがて飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
無定行事,惱亂彼人。厭足心生,去彼人體;弟子與師,多陷王難。[SG0908115]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908116]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908117]
八、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908118]
修行者は三摩地の中で種々の神通の変化に溺れ、神通の力を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛神通種種變化,研究化元,貪取神力。[SG0908119]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908120]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく神通の力を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人誠不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求通善男子處,敷座說法。[SG0908121]
修行者は松明を手にし、火炎を摘み取って信徒たちの頭上に置くことができる。しかも、火炎は数尺の長さがありながら熱くなく、燃えもしない。
是人或復手執火光,手撮其光,分於所聽四眾頭上。是諸聽人,頂上火光皆長數尺,亦無熱性,曾不焚燒。[SG0908122]
あるいは修行者は地上を歩くかのように水面を歩き、
或水上行如履平地,[SG0908123]
あるいは空中に座り、
或於空中安坐不動,[SG0908124]
あるいは瓶や袋の中に入り、
或入瓶內,或處囊中,[SG0908125]
あるいは壁を自在に通り抜けることもできる。
越牖透垣曾無障礙,[SG0908126]
ただし、刀剣などの武器をなお恐れる。
唯於刀兵不得自在。[SG0908127]
修行者は自らを如来と称し、白衣を纏い、比丘から礼拝を受ける。
自言是佛,身著白衣,受比丘禮,[SG0908128]
禅定の修行や戒律を誹謗し、他人の信徒を罵り、口が軽く他人の秘密を公表する。
誹謗禪律,罵詈徒眾,訐露人事,不避譏嫌。[SG0908129]
常に自分の神通の力を誇り、あるいは人々の前に仏土の光景を現すことができ、しかし、それらは人々を惑わすものにすぎず、真実ではない。
口中常說神通自在,或復令人傍見佛土,鬼力惑人非有真實。[SG0908130]
また、人々の卑猥な行いを阻止しないばかりか、淫行を讃え、それを法の伝授と称する。
讚歎行婬,不毀麁行,將諸猥媟以為傳法。[SG0908131]
これらの天魔は本来山・海・風・川・土の大力の妖精、あるいは長年を経て成った草木の妖精、
此名天地大力山精、海精、風精、河精、土精、一切草樹積劫精魅,[SG0908132]
あるいは龍の妖怪、
或復龍魅,[SG0908133]
あるいは寿命が尽きた仙人が魔として生き返ったもの、
或壽終仙再活為魅,[SG0908134]
あるいは仙人の死体に憑依している妖怪であり、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
或仙期終計年應死、其形不化他怪所附,年老成魔,惱亂是人。[SG0908135]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師,多陷王難。[SG0908136]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908137]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908138]
九、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908139]
修行者は三摩地の中で滅尽(すべてが消滅したこと)の境地に溺れ、深い空の境地を貪欲に追い求める。
三摩地中心愛入滅,妍究化性,貪求深空。[SG0908140]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908141]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく空の境地を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人終不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求空善男子處,敷座說法。[SG0908142]
修行者は人々の前で突然消失したり、出現したりすることができ、
於大眾內其形忽空,眾無所見,還從虛空突然而出,存沒自在。[SG0908143]
あるいは身が瑠璃のように透き通り、
或現其身洞如瑠璃,[SG0908144]
あるいは手足を垂らして栴檀香の香りを放ち、
或垂手足作栴檀氣,[SG0908145]
あるいは大小便を濃い石蜜のような味にすることもできる。
或大小便如厚石蜜。[SG0908146]
修行者は戒律を軽んじ、出家者を誹謗中傷し、
誹毀戒律,輕賤出家。[SG0908147]
『すべては断滅であり、因果も転生もなく、聖者もいない』と常に説く。
口中常說無因無果,一死永滅,無復後身及諸凡聖。[SG0908148]
空寂の境地に達したが、密かに欲望にふける。
雖得空寂,潛行貪欲,[SG0908149]
信徒たちも空の境地に達したが、欲望にふけり、因果を否定する。
受其欲者,亦得空心,撥無因果。[SG0908150]
これらの天魔の前身は、金・玉・霊芝・麒麟(伝説上の瑞獣)・鳳凰・亀・鶴などであり、千・万年を経て日蝕・月蝕の霊気を吸収して精霊となった。そして、長年を経て天魔となり、人々を惑わす。
此名日月薄蝕精氣、金玉芝草、麟鳳龜鶴、經千萬年不死為靈,出生國土,年老成魔;惱亂是人。[SG0908151]
やがて天魔は飽きて修行者の身体を離れ、修行者と信徒たちは国法の裁きを受けることになる。
厭足心生,去彼人體;弟子與師,多陷王難。[SG0908152]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908153]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908154]
十、
また、受陰が尽き果て、魔障に陥ることなく、禅定の力が円明となる。
又善男子受陰虛妙,不遭邪慮,圓定發明;[SG0908155]
修行者は三摩地の中で長寿の道に溺れ、分段生死(六道を輪廻する凡夫の生死)を厭い、永生を貪欲に追い求め、変易生死(生死輪廻を離れた聖者がただ念の生滅がある状態)という微妙で、常住の境地を渇望する。
三摩地中心愛長壽,辛苦研幾,貪求永歲,棄分段生,頓希變易細相常住。[SG0908156]
その時、天魔がその隙に乗じて修行者に憑依し、修行者の口を借りて種々の邪法を説く。
爾時,天魔候得其便,飛精附人,口說經法。[SG0908157]
修行者は自分が天魔に操られていることに気づかず、自分がすでに無上の涅槃に至ったと公言し、同じく永生を求める人々のもとへ赴き、皆に説法してやる。
其人竟不覺知魔著,亦言自得無上涅槃。來彼求生善男子處,敷座說法。[SG0908158]
修行者は、『私が自在に遠方へ往来し、瞬時に万里の外へ至ることができる』と誇り、遠方から持ち帰ったものを信徒に誇示する。
好言他方往還無滯,或經萬里瞬息再來,皆於彼方取得其物。[SG0908159]
あるいは信徒を宅の東の壁から西の壁へ行かせ、二つの壁の距離はただ数歩であるが、たとえ信徒が急いで歩いても、数年をかけても西の壁に到達できない。
或於一處在一宅中數步之間,令其從東詣至西壁,是人急行累年不到。[SG0908160]
それを見て、皆は修行者を真の如来と信じ込む。
因此心信,疑佛現前。[SG0908161]
また、修行者は常に、『十方の衆生は我が子である。我は諸如来を生み、世界を創造した。
口中常說,十方眾生皆是吾子,我生諸佛,我出世界,[SG0908162]
我は如来の元祖であり、修行する必要がなく自然の如来である』と言い放つ。
我是元佛,出世自然不因修得。[SG0908163]
これらの天魔は自在天の魔王の眷属であり、たとえば、遮文荼(嫉妬の魔女)や、毘舎闍(精気を吸い取る鬼)など、まだ発心していない悪鬼であり、
此名住世自在天魔,使其眷屬如遮文茶,及四天王毘舍童子未發心者,[SG0908164]
修行者に力を貸し与える代わりに、彼の精気を吸い取る。
利其虛明,食彼精氣。[SG0908165]
あるいは天魔は美女の姿で現れ、『お前に金剛不壊の長寿の法を授けてやる』と称して修行者と無節制に淫行をする。
或不因師,其修行人親自觀見,稱執金剛與汝長命。現美女身,盛行貪欲,[SG0908166]
一年も経たず血気は衰え、修行者は常に鬼魅と話すように独り言を言い、何を言っているか分からない。
未逾年歲,肝腦枯竭。口兼獨言,聽若𩲓魅,前人未詳。[SG0908167]
その後、修行者は国法の裁きを受け、しかし、刑罰を受ける前にすでに精気が枯れ果てて息絶える。
多陷王難,未及遇刑,先已乾死。[SG0908168]
天魔はこのように修行者を操り、死に至るまで離れない。
惱亂彼人,以至殂殞。[SG0908169]
それゆえ、お前たちは必ずあらかじめこれらの魔境に用心し、輪廻に落ち入ってはならない。
汝當先覺,不入輪迴;[SG0908170]
もし無知のまま天魔に惑わされれば、必ず無間地獄に落ち入るのだ。
迷惑不知,墮無間獄。[SG0908171]
アーナンダよ! 聴きなさい!
阿難當知,[SG0908172]
末法の世には、これら十種の天魔は僧侶や修行者の中に紛れ込みあるいは人の身体に憑依し、あるいは自ら姿を現し、
是十種魔於末世時在我法中出家修道,或附人體,或自現形,[SG0908173]
自分が無上正等覚に至ったと公言し、淫行を讃え、如来の律儀を破壊する。
皆言已成正遍知覺;讚歎婬欲,破佛律儀。[SG0908174]
天魔に憑依された修行者とその弟子は互いに淫行をし、さらにこの悪習を広め、心が完全に天魔に惑わされた。
先惡魔師與魔弟子,婬婬相傳。如是邪精,魅其心腑,[SG0908175]
短ければ九生(九百年)、長ければ百世(一世は三十年である)、修行者は天魔の眷属となる。
近則九生,多踰百世,令真修行總為魔眷。[SG0908176]
そして死後には必ず魔民となり、正覚の心を失い、最後には無間地獄に落ち入るのだ。
命終之後必為魔民,失正遍知,墮無間獄。[SG0908177]
お前はすでに無学の境地に達したが、急いで寂滅を求める必要はない。
汝今未須先取寂滅,縱得無學,[SG0908178]
誓いを立て、大慈悲の心を起こし、末法の世の信心深い衆生を救済しなさい。
留願入彼末法之中,起大慈悲,救度正心深信眾生;[SG0908179]
天魔から人々を守り、正知見(真相のとおりの知見)を得させよ。
令不著魔,得正知見。[SG0908180]
私はすでにお前を生死輪廻から救い出した。お前が私の言葉に従うことこそが、如来の恩に報いることなのだ。
我今度汝已出生死,汝遵佛語,名報佛恩。[SG0908181]
アーナンダよ! これら十種の禅那における魔障は、想陰を突破しようとする際に起きるものである。
阿難! 如是十種禪那現境,皆是想陰用心交互,故現斯事。[SG0908182]
修行者は頑迷で、身の程をわきまえず、以上の魔障に遭遇する時、それを見破ることができず、
眾生頑迷,不自忖量,逢此因緣、迷不自識,[SG0908183]
自分がすでに聖者の境地に達したと公言し、大妄語を犯し、死後には無間地獄に落ち入る。
謂言登聖,大妄語成,墮無間獄。[SG0908184]
如来が入滅した後、お前たちは必ずこの教えを末法の世の衆生に広く伝え、皆に悟りを開かせ、
汝等必須將如來語,於我滅後傳示末法,遍令眾生開悟斯義。[SG0908185]
天魔に隙を与えず、衆生を守護して皆に無上の道を成就させよ。」
無令天魔得其方便,保持覆護,成無上道。[SG0908186]
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