【楞厳経】巻二
見の探究
アーナンダ:
阿難白佛言:[SG0204001]
「世尊様は、『見の性が他者のものではなく、必ず自身のものである』とおっしゃいました。
「世尊! 若此見性必我非餘,[SG0204002]
私が世尊様と共に日月宮から四天王の宮殿を見渡した際、この見は全娑婆世界に広がっていました。
我與如來觀四天王勝藏寶殿,居日月宮,此見周圓遍娑婆國;[SG0204003]
しかし、精舍に戻った時、伽藍(寺院の建物の総称)しか見えません。
退歸精舍只見伽藍,[SG0204004]
私はいま、この清心戸堂にいて、ただ天井や回廊のみが見えます。
清心戶堂但瞻簷廡。[SG0204005]
世尊様。このように、先ほどこの見は全世界に広がっていたのに、いまはただ一室に満ちるのみです。
世尊! 此見如是,其體本來周遍一界,今在室中唯滿一室,[SG0204006]
これは、見が縮んで小さくなったのでしょうか? それとも、壁や屋根が見を断ち切っているのでしょうか?
為復此見縮大為小? 為當牆宇夾令斷絕? [SG0204007]
なぜ見は時に大きく、時に小さくなるのか? 私は理解できかねます。
我今不知斯義所在,[SG0204008]
どうかご慈悲を! 私たちにお説きください。」
願垂弘慈為我敷演!」[SG0204009]
お釈迦様:
佛告阿難:[SG0204010]
「大小や内外など種々の差異は、すべて塵境の変化である。
「一切世間大小、內外諸所事業,各屬前塵,[SG0204011]
見が拡大したり、縮小したりすることはない。
不應說言見有舒縮。[SG0204012]
たとえば、四角い器の中には四角い虚空がある。
譬如方器中見方空,[SG0204013]
では、その虚空の形が固定したのか、それとも固定しないのか?
吾復問汝,此方器中所見方空,為復定方? 為不定方? [SG0204014]
もし固定したというなら、四角い器を丸い器に置き換えた時、そこにある虚空は丸くならないはずだ。
若定方者,別安圓器空應不圓;[SG0204015]
もし虚空の形が固定しないというなら、四角い器の中にある虚空は四角ではないはずだ。
若不定者,在方器中應無方空。[SG0204016]
お前は、『なぜ見は拡大したり、縮小したりする』と問うたが、器の例のとおり、なぜ変化があると言えるのか?
汝言不知斯義所在,義性如是,云何為在? [SG0204017]
アーナンダよ! もし四角い虚空を除きたいなら、四角い器を取り去れば十分だ。
阿難! 若復欲令入無方圓,但除器方。[SG0204018]
虚空自身は形がなく、四角い虚空を取り去ることは意味をなさない。
空體無方,不應說言更除虛空方相所在。[SG0204019]
お前は、『部屋に入ると見は縮んだ』と言ったが、では、太陽を仰ぎ見る時、もしかしてお前は見を引き伸ばして太陽に達させるのか?
若如汝問『入室之時縮見令小』,仰觀日時,汝豈挽見齊於日面? [SG0204020]
また、もし壁が見を断ち切るというなら、壁に小さな穴を開けた時、見には継ぎ目があるはずだ。事実はそうではないのだ。
若築牆宇能夾見斷,穿為小竇,寧無續迹? 是義不然。[SG0204021]
すべての衆生は、無始から肉身を自分自身と誤認し、真心を見失い、塵境の幻相に惑わされるゆえ、大小の観念に執着している。
一切眾生從無始來迷己為物,失於本心,為物所轉;故於是中觀大、觀小。[SG0204022]
もし万物の実相を見抜くことができれば、如来と同じく身心が円明(円満・清明)となり、動揺せず、
若能轉物,則同如來身心圓明,不動道場,[SG0204023]
一毛の先に十方の国土を収納することができるのだ。」
於一毛端遍能含受十方國土。」[SG0204024]
アーナンダ:
阿難白佛言:[SG0204025]
「世尊様。この見はいま私の前にあり(目を開けて前を見る)、もし真心が見そのものであり、見の性こそが私の妙明な真性であるならば、では、私のこの身と心はいったい何なのでしょうか?
「世尊! 若此見精必我妙性,今此妙性現在我前,見必我真,我今身心復是何物? [SG0204026]
私はいま、この身と心を感じられます。
而今身心分別有實,[SG0204027]
前にある見が私自身の存在であると思えません。
彼見無別分辨我身。[SG0204028]
もし真心が見そのものであり、身ではなく、見の性こそが私自身のものであるというならば、
若實我心,令我今見,見性實我而身非我,[SG0204029]
これは世尊様が先ほど私にご反論になった、『物(前にある見)は見ることができます』ということと同じではないでしょうか?
何殊如來先所難言:『物能見我』? [SG0204030]
どうかご慈悲を! なお迷いの中にある私たちにお説きください。」
唯垂大慈,開發未悟!」[SG0204031]
お釈迦様:
佛告阿難:[SG0204032]
「お前は、『見はお前の前にある』と言ったが、これは道理に合わない。
「今汝所言『見在汝前』,是義非實。[SG0204033]
もし見が本当に実在してお前の前にあるというなら、見そのものを指し示すことができるはずだ。
若實汝前,汝實見者,則此見精既有方所,非無指示。[SG0204034]
いま私たちは祇陀林の中に座っており、周りには林、水路や講堂がある、空には日月がある。前方にはガンジス川がある。
且今與汝坐祇陀林,遍觀林渠及與殿堂,上至日月,前對恒河。[SG0204035]
お前はいま、私の師子の座の前に来て、手を上げてさまざまなものを指し示してみよ。
汝今於我師子座前,舉手指陳是種種相——[SG0204036]
暗いものは林、明るいものは太陽、邪魔な物は壁、通る空間は虚空である。
陰者是林,明者是日,礙者是壁,通者是空,[SG0204037]
このように草や葉など小さなものさえも指し示すことができる。
如是乃至草樹纖毫——[SG0204038]
物の大きさが違いながらも、形があればそれを指し示すことができる。
大小雖殊,但可有形無不指著。[SG0204039]
もし見が本当にお前の前にあるならば、お前はそれを指し示して皆に見せてみよ。
若必有見現在汝前,汝應以手礭實指陳何者是見? [SG0204040]
よく聴きなさい! アーナンダよ!
阿難當知,[SG0204041]
もし虚空が見であるならば、虚空はすでに見となり、何が虚空であろうか?
若空是見,既已成見,何者是空? [SG0204042]
もし物が見であるならば、物はすでに見となり、何が物であろうか?
若物是見,既已是見,何者為物? [SG0204043]
万物を一つ一つ除外し、その中から見という清浄で、妙明な存在を抜き出し、他の物を指し示すようにこの見をはっきりと指し示してみよ。」
汝可微細披剝萬象,析出精明淨妙見元,指陳示我,同彼諸物分明無惑。」[SG0204044]
アーナンダ:
阿難言:[SG0204045]
「私はいまこの大講堂の中で遠くにガンジス川や日月が見えます。
「我今於此重閣講堂,遠洎恒河、上觀日月,[SG0204046]
何を指し示しても、何を見ても、すべては物であり、見ではありません。
舉手所指、縱目所觀,指皆是物,無是見者。[SG0204047]
世尊様のおっしゃるとおり、
世尊! 如佛所說,[SG0204048]
私のような未熟な有漏の声聞どころか、菩薩でさえも、万物の相から純粋な見を抜き出すことができません。」
況我有漏初學聲聞,乃至菩薩,亦不能於萬物象前剖出精見,離一切物別有自性!」[SG0204049]
お釈迦様:
佛言:[SG0204050]
「まさにそのとおり。」
「如是,如是!」[SG0204051]
お釈迦様は続けて言いました。
佛復告阿難:[SG0204052]
「お前の言うとおり、見は万物から離れて独立的に存在するものではない。
「如汝所言『無有精見離一切物別有自性』,[SG0204053]
指し示されることができるものはすべて見ではない。
則汝所指是物之中無是見者。[SG0204054]
我々はいまこの祇陀林の中に座っており、園林や日月などさまざまなものが見える。
今復告汝,汝與如來坐祇陀林,更觀林苑乃至日月種種象殊,[SG0204055]
何を指し示しても、それは見ではない。
必無見精受汝所指;[SG0204056]
では、逆に問おう。これらの景や物の中で、どれが見ではないのか?」
汝又發明此諸物中何者非見?」[SG0204057]
アーナンダ:
阿難言:[SG0204058]
「いま私はこの祇陀林を見回しており、どれが見ではないか判断できかねます。なぜかというと、
「我實遍見此祇陀林,不知是中何者非見。何以故? [SG0204059]
もし木が見でなければ、どうして木を見ることができるのでしょうか?
若樹非見,云何見樹? [SG0204060]
もし木そのものが見であるならば、どうしてそれを木と呼ぶのでしょうか?
若樹即見,復云何樹? [SG0204061]
同じように、もし虚空が見でなければ、どうして虚空を見ることができるのでしょうか?
如是乃至若空非見,云何為空? [SG0204062]
もし虚空が見であるならば、どうしてそれを虚空と呼ぶのでしょうか?
若空即見,復云何空? [SG0204063]
さらに観察すれば、いま私はこのように存じます、
我又思惟:[SG0204064]
『目に入ったものはすべて見である』と。」
『是萬象中微細發明無非見者!』」[SG0204065]
お釈迦様:
佛言:[SG0204066]
「まさにそのとおり。」
「如是,如是!」[SG0204067]
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