【楞厳経】巻五
一、声塵
その時、お釈迦様は大会に集った大菩薩、そして漏尽(煩悩を完全に断ち切ったこと)の大阿羅漢たちに問いました。
爾時,世尊普告眾中諸大菩薩及諸漏盡大阿羅漢:[SG0502001]
「菩薩及び阿羅漢のお前たちは、修行によって無学の境地に達した。
「汝等菩薩及阿羅漢,生我法中得成無學。[SG0502002]
では、答えなさい。
吾今問汝,[SG0502003]
お前たちは最初の発心から十八界の本質を見極めるまで、何の法門をもって三摩地に入ったのか、どの法門が円通であると思うか?」
最初發心悟十八界,誰為圓通? 從何方便入三摩地?」[SG0502004]
アジュニャータなどの五比丘が席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
憍陳那五比丘即從座起,頂禮佛足而白佛言:[SG0502005]
「かつて、世尊様がご成道になった時、私は鹿野苑の鶏園で世尊様にお目にかかりました。
「我在鹿苑及於雞園,觀見如來,最初成道,[SG0502006]
私は世尊様の法音によって四聖諦の理を悟りました。
於佛音聲悟明四諦。[SG0502007]
その時、世尊様が『誰が理解しましたか』とお聞きになり、私は真っ先にお答えいたしました。
佛問比丘,我初稱解;[SG0502008]
そのため、世尊様は私に『阿若(理解したという意味)』の名を授けてくださいました。
如來印我名阿若多。[SG0502009]
妙音(如来蔵から現れる声)は密円(円満で、隠れるさま)です。
妙音密圓,[SG0502010]
私は音声によって阿羅漢の境地に達しました。
我於音聲得阿羅漢。[SG0502011]
世尊様が円通の法門をお尋ねになるなら、
佛問圓通,[SG0502012]
私の修行によれば、音声が最もすぐれた円通の法門であると存じます。」
如我所證,音聲為上。」[SG0502013]
二、色塵
ウパニシャダ(優波尼沙陀)尊者が席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
優波尼沙陀即從座起,頂禮佛足而白佛言;[SG0502014]
「世尊様がご成道になった時、私もまた世尊様にお目にかかりました。
「我亦觀佛,最初成道,[SG0502015]
かつて、私が不浄観(身体が腐敗し、白骨化していくさまを想像すること)を修め、身に強い嫌悪を覚えました。
觀不淨相,生大厭離,[SG0502016]
私はこのように観想(観察することと想像すること)し、色の身は腐敗して白骨化し、そして白骨は骨灰となって風に吹き払われ、最後には骨灰は虚空に消え去りました。
悟諸色性,以從不淨、白骨、微塵歸於虛空;[SG0502017]
この観想から色と空が不二であると悟り、私は無学の境地に達したのです。
空色二無,成無學道。[SG0502018]
世尊様は私に『ニシャダ(極小という意味)』の名を授けてくださいました。
如來印我名尼沙陀。[SG0502019]
外界の色を離れ、妙色(如来蔵から現れる色)は密円です。
塵色既盡,妙色密圓,[SG0502020]
私は色の観想によって阿羅漢の境地に達しました。
我從色相得阿羅漢。[SG0502021]
世尊様が円通の法門をお尋ねになるなら、
佛問圓通,[SG0502022]
私の修行によれば、色が最もすぐれた円通の法門であると存じます。」
如我所證,色因為上。」[SG0502023]
三、香塵
香厳童子が席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
香嚴童子即從座起,頂禮佛足而白佛言:[SG0502024]
「かつて、世尊様は私に有為の相を観察することを教えてくださいました。
「我聞如來教我諦觀諸有為相。[SG0502025]
世尊様のもとを辞した後、私は静室(静かな部屋)にこもって修行しておりました。
我時辭佛,宴晦清齋,[SG0502026]
その折、比丘たちが沈水香木を焚くのを見かけ、その香りはそっと鼻に入ってきました。
見諸比丘燒沈水香,香氣寂然來入鼻中。[SG0502027]
私はその香りを観察し、香りは木から生じるものでもなく、虚空・煙・火から生じるものでもなく、往来する跡もありません。
我觀此氣,非木、非空、非煙、非火,去無所著,來無所從,[SG0502028]
この理を悟った瞬間、偽の心が消滅し、無漏の智慧が出ました。
由是意銷,發明無漏,[SG0502029]
世尊様は私に『香厳』の名を授けてくださいました。
如來印我得香嚴號,[SG0502030]
外界の香りを離れ、妙香(如来蔵から現れる香り)は密円です。
塵氣倏滅,妙香密圓,[SG0502031]
私は香りの本質を悟ることによって阿羅漢の境地に達したのです。
我從香嚴得阿羅漢。[SG0502032]
世尊様が円通の法門をお尋ねになるなら、
佛問圓通,[SG0502033]
私の修行によれば、香りが最もすぐれた円通の法門であると存じます。」
如我所證,香嚴為上。」[SG0502034]
四、味塵
薬王・薬上の二人の法王子と、大会に集った五百人の梵天衆が席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
藥王、藥上二法王子,并在會中五百梵天即從座起,頂禮佛足而白佛言:[SG0502035]
「過去無数の劫の間、私は世間の医者をしておりました。
「我無始劫為世良醫,[SG0502036]
私の味見したこの娑婆世界の草木・金石などの数は十万八千にも達しました。
口中嘗此娑婆世界草木、金石,名數凡有十萬八千。[SG0502037]
それらの草木がどんな味がするか、苦い・酸っぱい・塩辛い・薄い・甘い・辛い、そしてその味の融合・併存・変化、寒熱の性、毒性の有無をすべて熟知しております。
如是悉知苦、醋、鹹、淡、甘、辛等味,并諸和合、俱生、變異。是冷、是熱,有毒、無毒,悉能遍知。[SG0502038]
如来様に奉仕した中で、味は空でも有でもなく、身心の中に存在するものでもなく、身心を離れて存在するものでもないと承知しました。
承事如來,了知味性非空非有,非即身心、非離身心。[SG0502039]
私は味の本質を見極め、それで、悟りを開いたのです。
分別味因,從是開悟,[SG0502040]
世尊様は私たち兄弟に薬王と薬上の名を授けてくださいました。いま、私たちは法王子としてこの大会に参加します。
蒙佛如來印我昆季藥王、藥上二菩薩名,今於會中為法王子。[SG0502041]
私は味覚によって悟りを開き、そして菩薩の位に登りました。
因味覺明,位登菩薩。[SG0502042]
世尊様が円通の法門をお尋ねになるなら、
佛問圓通,[SG0502043]
私の修行によれば、味が最もすぐれた円通の法門であると存じます。」
如我所證,味因為上。」[SG0502044]
五、触塵
跋陀婆羅菩薩及び彼の同士である十六人の菩薩が席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
跋陀婆羅并其同伴十六開士,即從座起,[SG0502045]
「かつて、私は出家して威音王如来様のもとで仏法を学びました。
「我等先於威音王佛聞法出家,[SG0502046]
ある入浴の日(僧団が半月に一度入浴する日)、お風呂に入った時、水に触れた瞬間に悟りを開きました。
於浴僧時隨例入室。忽悟水因,[SG0502047]
そもそもこの身も、水も、垢も四大にすぎず、この触覚はいったいどこから生じるのでしょうか?
既不洗塵,亦不洗體;[SG0502048]
私は根と塵の幻相から解放され、空の境地に達しました。
中間安然,得無所有。[SG0502049]
この遠い昔から得た悟りはなお消えておらず、今世、世尊様のもとで出家し、これを思い出して私は無学の境地に達したのです。
宿習無忘,乃至今時從佛出家,令得無學。[SG0502050]
世尊様は私に跋陀婆羅(善を守るという意味)の名を授けてくださいました。
彼佛名我跋陀婆羅,[SG0502051]
私は妙触(如来蔵から現れる触覚)の認識によって菩薩の位に登りました。
妙觸宣明,成佛子住。[SG0502052]
世尊様が円通の法門をお尋ねになるなら、
佛問圓通,[SG0502053]
私の修行によれば、触塵が最もすぐれた円通の法門であると存じます。」
如我所證,觸因為上。」[SG0502054]
六、法塵
マハーカーシヤパ尊者と紫金光比丘尼が席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
摩訶迦葉及紫金光比丘尼等即從座起,頂禮佛足而白佛言;[SG0502055]
「過去の劫、日月灯如来様が世に御在世になった時、私は日月灯如来様のもとで仏法を学ぶ縁に恵まれました。
「我於往劫,於此界中有佛出世名日月燈,我得親近聞法修學。[SG0502056]
如来様がご入滅なさった後、私は如来様の御舎利(仏や聖者が火葬された後に残る結晶のような遺骨)を供養し、灯明を供え、紫金で如来様の御像をご塗装いたしました。
佛滅度後供養舍利,然燈續明,以紫光金塗佛形像。[SG0502057]
その功徳により、私の身は世々円満な紫金色に輝いておりました。この紫金光比丘尼は私の眷属であり、当時、私たちは一緒に発心しました。
自爾已來,世世生生身常圓滿紫金光聚,此紫金光比丘尼等即我眷屬,同時發心。[SG0502058]
私は『六塵(法塵)は必ず消失する』と悟り、そして空・静寂の境地に入って滅尽定の境地に達しました。
我觀世間六塵變壞,唯以空寂修於滅盡,[SG0502059]
百・千劫を経ても、弾指の間のように短いと覚えます。
身心乃能度百千劫猶如彈指。[SG0502060]
私は空の法によって阿羅漢の境地に達しました。
我以空法成阿羅漢,[SG0502061]
世尊様は、私が『頭陀(十二頭陀。仏道修行者が守るべき衣・食・住に関する十二の基本的規律)第一』の弟子であると称賛してくださいました。
世尊說我頭陀為最。[SG0502062]
私は妙法(如来蔵から現れる法塵)の認識によってすべての煩悩を断ち切りました。
妙法開明,銷滅諸漏。[SG0502063]
世尊様が円通の法門をお尋ねになるなら、
佛問圓通,[SG0502064]
私の修行によれば、法塵が最もすぐれた円通の法門であると存じます。」
如我所證,法因為上。」[SG0502065]
Copyright © 2024- 天経閣. All rights reserved.