【楞厳経】巻九
色陰の十種の魔境
聴きなさい! アーナンダよ! 心を正し、雑念を滅却し、
阿難當知,汝坐道場銷落諸念,[SG0906001]
もし雑念が尽きれば、心は清明になり、外界が騒動しても静まっても、心は不動で、追想も忘却もない境地にある。
其念若盡,則諸離念一切精明,動靜不移,憶忘如一。[SG0906002]
心がこのようにして三摩地に入る時、目が利く者は暗闇の中にいるように、妙浄な真心の中には光がなお現れていない。
當住此處入三摩提,如明目人處大幽暗,精性妙淨心未發光;[SG0906003]
この境地は『色陰区宇』と呼ばれる。
此則名為色陰區宇。[SG0906004]
心の目は清明となり、光が現れ、十方の闇がすべて消え去る。
若目明朗,十方洞開無復幽黯,[SG0906005]
この境地は『色陰尽(色陰が尽き果てたこと)』と呼ばれる。
名色陰盡,[SG0906006]
この境地に達した者はすでに劫濁を超えている。
是人則能超越劫濁。[SG0906007]
色陰の根本を究め、『堅固妄想』がその根本なのである。
觀其所由,堅固妄想以為其本。[SG0906008]
一、
アーナンダよ! このように禅那に入って妙明な真心を究め、
阿難! 當在此中精研妙明,[SG0906009]
四大の幻相を見極めた時、突然身の束縛から解放される。
四大不織,少選之間身能出礙。[SG0906010]
これは心が溢れ出る一時の現象にすぎず、聖者の境地ではない。
此名精明流溢前境,斯但功用暫得如是,非為聖證。[SG0906011]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906012]
二、
また、アーナンダよ! 禅那に入って妙明な真心を究める時、
阿難! 復以此心精研妙明,[SG0906013]
にわかに身が透明となり、手で体内の回虫や蟯虫をつかみ出すことができる。しかも、身体に些かも傷を負わない。
其身內徹,是人忽然於其身內拾出蟯蛔,身相宛然亦無傷毀。[SG0906014]
これは集中する心が体内に流れ入る一時の現象にすぎず、聖者の境地ではない。
此名精明流溢形體,斯但精行暫得如是,非為聖證。[SG0906015]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906016]
三、
また、禅那に入って身の内外を深く観察する時、
又以此心內外精研,[SG0906017]
魂魄・意志・精神が互いに溶け込み、支配し合う。
其時魂魄、意志、精神,除執受身,餘皆涉入,互為賓主;[SG0906018]
突然、空から説法の声が聞こえ、あるいは十方から同時に秘密の教義を説く声が聞こえる。
忽於空中聞說法聲,或聞十方同敷密義。[SG0906019]
これは精神や魂魄の結合・分離によって起こる一時の善の境にすぎず、聖者の境地ではない。
此名精魄遞相離合成就善種,暫得如是,非為聖證。[SG0906020]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906021]
四、
また、禅那に入る時、心が澄み渡って光明を放つ。
又以此心澄露皎徹,內光發明,[SG0906022]
十方の世界がすべて閻浮檀金の色となり、すべての衆生が如来となったことを目にする。
十方遍作閻浮檀色,一切種類化為如來。[SG0906023]
突然、毘盧遮那如来が出現し、天光と呼ばれる師子の座に座り、千人の如来に取り囲まれ、百億の国土と蓮華が同時に出現する。
于時忽見毘盧遮那踞天光臺,千佛圍繞,百億國土及與蓮華俱時出現。[SG0906024]
これは過去の世の記憶が心に浮かぶことによって起こる善の境であり、心が光明を放って世界を照らす。
此名心魂靈悟所染,心光研明照諸世界,[SG0906025]
これは一時の現象にすぎず、聖者の境地ではない。
暫得如是,非為聖證。[SG0906026]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906027]
五、
また、禅那に入って妙明な真心を究め、絶え間なく観察し、心を制して静かにさせる。
又以此心精研妙明,觀察不停,抑按降伏制止超越,[SG0906028]
その時、突然十方の虚空は七宝の色あるいは百宝の色に染まり、
於時忽然十方虛空成七寶色、或百寶色,[SG0906029]
青・黄・赤・白の純粋な色が互いに妨げることなく虚空に満ちるのを目にする。
同時遍滿不相留礙,青、黃、赤、白各各純現。[SG0906030]
これは心を制することによって起こる一時の現象にすぎず、聖者の境地ではない。
此名抑按功力踰分,暫得如是,非為聖證。[SG0906031]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906032]
六、
また、禅那に入って妙明な真心を究め、心の光に集中する時、
又以此心研究澄徹,精光不亂,[SG0906033]
夜であっても、昼のように暗室の物が見え、闇が消え去るわけではない。
忽於夜合在暗室內,見種種物不殊白晝,而暗室物亦不除滅。[SG0906034]
これは心が細密になったことに起因する視力の鋭敏化であり、一時の現象にすぎず、聖者の境地ではない。
此名心細密澄其見,所視洞幽,暫得如是,非為聖證。[SG0906035]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906036]
七、
また、禅那に入って心が虚無に溶け込む時、
又以此心圓入虛融,[SG0906037]
にわかに身体が草木のようになり、火で焼かれても刀で斬られても、痛みを覚えない。
四𨈛忽然同於草木,火燒、刀斫曾無所覺。[SG0906038]
それに、身体に火を通すことができず、肉を切っても、まるで木を削るようである。
又則火光不能燒爇,縱割其肉猶如削木。[SG0906039]
これは色塵から四大の性質を取り除いた後起こる一時の現象にすぎず、聖者の境地ではない。
此名塵併排四大性一向入純,暫得如是,非為聖證。[SG0906040]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906041]
八、
また、禅那に入って心を清め、そして極致に達した時、
又以此心成就清淨,淨心功極,[SG0906042]
突然、十方の世界は仏国となり、七宝の光明が遍く満ちることを目にする。
忽見大地十方山河皆成佛國,具足七寶光明遍滿。[SG0906043]
また、恒河沙数の如来が虚空に満ち、華麗な楼閣と宮殿がそびえ立つのも目にする。
又見恒沙諸佛如來,遍滿空界,樓殿華麗。[SG0906044]
下へ見れば地獄、上を見れば天界の宮殿が障礙なく見える。
下見地獄、上觀天宮,得無障礙。[SG0906045]
これは深い愛憎の念によって起こる幻境にすぎず、聖者の境地ではない。
此名欣厭凝想日深,想久化成,非為聖證。[SG0906046]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906047]
九、
また、禅那に入って心を遠方に集中させる時、
又以此心研究深遠,[SG0906048]
夜中ににわかに遠方の村や街、親族の姿が見られ、あるいは皆の話が聞こえる。
忽於中夜遙見遠方市井街巷,親族眷屬,或聞其語。[SG0906049]
これは心が迫られすぎて飛び出る現象にすぎず、聖者の境地ではない。
此名迫心逼極飛出,故多隔見,非為聖證。[SG0906050]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,名善境界;若作聖解,即受群邪。[SG0906051]
十、
また、禅那に入って真心を究め、そして極致に達した時、
又以此心研究精極,[SG0906052]
突然、善知識が出現し、瞬間にさまざまな姿に変わるのを目にする。
見善知識形體變移,少選無端種種遷改。[SG0906053]
これは、魑魅が邪心に引き付けられた結果であり、
此名邪心含受魑魅,[SG0906054]
あるいは心が天魔に潜り込まれ、修行者は急に説法ができ、深い教義に通じる。
或遭天魔入其心腹,無端說法,通達妙義,[SG0906055]
これは聖者の境地ではない。
非為聖證。[SG0906056]
自分がすでに聖者の境地に達したと思えば、天魔に惑わされる。そう思わなければ、これは善の境地である。
不作聖心,魔事銷歇;若作聖解,即受群邪。[SG0906057]
アーナンダよ! これら十種の禅那における境地は、色陰を突破しようとする際に起きるものである。
阿難! 如是十種禪那現境,皆是色陰用心交互,故現斯事。[SG0906058]
修行者は頑迷で、身の程をわきまえず、これらの境地に遭遇する時、見破ることができず、
眾生頑迷,不自忖量,逢此因緣,迷不自識,[SG0906059]
自分がすでに聖者の境地に達したと公言し、大妄語を犯し、死後には無間地獄に落ち入る。
謂言登聖。大妄語成,墮無間獄。[SG0906060]
如来が入滅した後、お前たちは必ずこの教えを末法の世の衆生に広く伝え、
汝等當依如來滅後,於末法中宣示斯義;[SG0906061]
天魔に隙を与えず、衆生を守護して皆に無上の道を成就させよ。
無令天魔得其方便,保持覆護,成無上道。[SG0906062]
Copyright © 2024- 天経閣. All rights reserved.