【楞厳経】巻八
六道の因
アーナンダは席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼し、恭しく合掌して言いました。
即從座起,頂禮佛足,合掌恭敬而白佛言:[SG0804001]
「大威徳が備わっている世尊様! 世尊様の法音には隠すことがございません。
「大威德世尊! 慈音無遮,[SG0804002]
善く衆生の隠微(かすかで目立たないこと)な迷いをお晴らしになります。
善開眾生微細沈惑,[SG0804003]
世尊様の慈悲により、私はいま、身心が爽やかになり、莫大な利益を得ました。
令我今日身心快然,得大饒益。[SG0804004]
世尊様! この妙明で、清浄な真心が本来遍在して円満であり、大地や草木、すべての生命は本来真如であり、
世尊! 若此妙明真淨妙心本來遍圓,如是乃至大地草木、蠕動含靈本元真如,[SG0804005]
すなわち如来の法身という真実の存在なのではありませんか?
即是如來成佛真體,佛體真實,[SG0804006]
ならば、どうして世間には地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道があるのでしょうか?
云何復有地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天等道? [SG0804007]
世尊様! それらは本来自ら存在するのでしょうか?
世尊! 此道為復本來自有? [SG0804008]
それとも、衆生の妄想と習性によって出現するのでしょうか?
為是眾生妄習生起? [SG0804009]
世尊様。たとえば、宝蓮香比丘尼は菩薩戒を受けながら、密かに淫行を犯し、
世尊! 如寶蓮香比丘尼,持菩薩戒,私行婬欲,[SG0804010]
『淫行は殺生でも盗みでもないから罪はない』と虚言を吐きました。
妄言行婬非殺、非偷,無有業報。[SG0804011]
その言葉が終わるやいなや、烈火が陰部から起こり、そして全身が焼け、彼女はそのまま無間地獄に落ち入りました。
發是語已,先於女根生大猛火,後於節節猛火燒然,墮無間獄。[SG0804012]
また、毘瑠璃王(波斯匿王の子)と善星比丘も同じです。
瑠璃大王、善星比丘;[SG0804013]
毘瑠璃王は釈迦族を殲滅し、
瑠璃為誅瞿曇族姓,[SG0804014]
善星比丘は『一切の法は空である(因果なしを指す)』と虚言を吐き、
善星妄說一切法空,[SG0804015]
それで、二人は生きたまま阿鼻地獄に落ち入りました。
生身陷入阿鼻地獄。[SG0804016]
それらの地獄は定まった場所に存在するのでしょうか?
此諸地獄,為有定處? [SG0804017]
それとも、自然に罪業によって別々に出現するのでしょうか?
為復自然彼彼發業、各各私受? [SG0804018]
どうかご慈悲を! 皆の疑念をお晴らしください。
唯垂大慈,發開童蒙,[SG0804019]
戒律を守る者がこの真義を聞けば、必ず喜んで世尊様のお教えを拝受し、決して戒を破ることはないでしょう!」
令諸一切持戒眾生聞決定義,歡喜頂戴,謹潔無犯!」[SG0804020]
お釈迦様はアーナンダに言いました。
佛告阿難:[SG0804021]
「これはいい質問だ! 衆生が邪見に惑わされないように私に問うた。
「快哉此問! 令諸眾生不入邪見。[SG0804022]
よく聴きなさい! いま、皆に説明してやろう。
汝今諦聽,當為汝說。[SG0804023]
アーナンダよ! 衆生の心は本来清浄であり、妄見を起こしたためにさまざまな習性を起こした。
阿難! 一切眾生實本真淨,因彼妄見有妄習生,[SG0804024]
それらは『内分』と『外分』に分かれる。
因此分開內分、外分。[SG0804025]
アーナンダよ! 『内分』とはつまり体内の虚妄である。
阿難! 內分即是眾生分內。[SG0804026]
愛に蝕まれるゆえに情という虚妄の性が生じる。
因諸愛染發起妄情,[SG0804027]
情が積み重なり、それで、愛の水が生じる。
情積不休能生愛水。[SG0804028]
それゆえ、おいしいものを思えば唾液が出る。
是故眾生心憶珍羞,口中水出;[SG0804029]
恨みや同情を抱けば、涙が出る。
心憶前人或憐或恨,目中淚盈;[SG0804030]
財を強く求めれば、愛の水は心から出て身を潤し、肌につやが出る。
貪求財寶,心發愛涎、舉體光潤;[SG0804031]
淫行を思えば、陰部に自然と淫水が出る。
心著行婬,男女二根自然流液。[SG0804032]
アーナンダよ! 種々の愛は違うが、その流れと会合の性は同じである。
阿難! 諸愛雖別,流結是同。[SG0804033]
湿潤の性は上昇せず、自然に下へ沈む。
潤濕不昇,自然從墜,[SG0804034]
これを『内分』と呼ぶ。
此名內分。[SG0804035]
アーナンダよ! 『外分』とは体外の虚妄である。
阿難! 外分即是眾生分外。[SG0804036]
渇仰(渇いた者が水を切望するように仰ぎ慕うこと)の心から正念(正しい思念)を起こす。
因諸渴仰,發明虛想,[SG0804037]
正念が積み重なり、それで、殊勝な気が生じる。
想積不休能生勝氣。[SG0804038]
それゆえ、心から禁戒を守れば身体が軽く清らかになる。
是故眾生心持禁戒,舉身輕清;[SG0804039]
常に呪を唱えれば、威厳が満ちる。
心持呪印,顧眄雄毅;[SG0804040]
天界に転生したいと願えば、飛翔する夢を見る。
心欲生天,夢想飛舉;[SG0804041]
仏国を切望すれば、夢の中で神聖な地に入る。
心存佛國,聖境冥現;[SG0804042]
善知識に仕えれば、身命が軽いと感じる。
事善知識,自輕身命。[SG0804043]
アーナンダよ! 種々の正念は違うが、軽さと上昇の性質は同じである。
阿難! 諸想雖別,輕舉是同。[SG0804044]
上昇の性は沈まず、自然に世俗を超越する。
飛動不沈,自然超越,[SG0804045]
これを『外分』と呼ぶ。
此名外分。[SG0804046]
アーナンダよ! あらゆる衆生は生死輪廻を絶えず続けている。
阿難! 一切世間生死相續,[SG0804047]
生前は習性に従って業を作り、命が尽きる時は業力の流れに従って輪廻に入る。
生從順習,死從變流。[SG0804048]
臨終の際、なお体温が残っている時、一生の間に積んだ善悪の業が同時に現れる。
臨命終時,未捨暖觸,一生善惡俱時頓現。[SG0804049]
死を厭い、生を求め、この二種の習性が心の中で交わっている。
死逆、生順,二習相交。[SG0804050]
六道
心に情がなく、純粋に正念のみを持てば、必ず天界に転生する。
純想即飛,必生天上。[SG0804051]
さらに福徳と智慧が備わり、浄土への往生を願えば、自然に心が開き、十方の如来に出迎えられ、願いどおり浄土に往生する。
若飛心中兼福兼慧及與淨願,自然心開見十方佛,一切淨土隨願往生。[SG0804052]
情が少なく正念が多ければ、魂は軽い。しかし、高き天界に昇れない。
情少想多,輕舉非遠,[SG0804053]
その者は、飛行の仙人・大力の鬼王・飛行の夜叉・地上の羅刹などに転生し、四天に自由に遊ぶことができる。
即為飛仙、大力鬼王、飛行夜叉、地行羅剎,遊於四天所去無礙。[SG0804054]
その中で、善い願いや善心を抱いて仏法を守護し、
其中若有善願善心護持我法,[SG0804055]
あるいは戒律、持戒者を守護し、
或護禁戒、隨持戒人,[SG0804056]
あるいは神呪、神呪を唱える者を守護し、
或護神呪、隨持呪者,[SG0804057]
あるいは禅定を修める人を守護する者は、
或護禪定、保綏法忍,[SG0804058]
護法神として如来のそばに仕える。
是等親住如來座下。[SG0804059]
情と正念が均等であれば、魂は昇らず沈まず、人間道に生まれ変わる。
情想均等,不飛、不墜,生於人間,[SG0804060]
正念が強くなれば人は聡明となる。
想明斯聰,[SG0804061]
情が深くなれば人は愚鈍となる。
情幽斯鈍。[SG0804062]
情が多く正念が少なければ、畜生道に生まれ変わる。
情多想少,流入橫生;[SG0804063]
魂が重ければ獣類に生まれ、
重為毛群,[SG0804064]
魂が軽ければ鳥類に生まれる。
輕為羽族。[SG0804065]
七割が情、三割が正念であれば、魂は水輪の下、火輪の上へ沈み、猛火の気を受けて餓鬼道に転生する。
七情、三想,沈下水輪,生於火際,受氣猛火,身為餓鬼,[SG0804066]
常に火で焼かれ、水は火に変わり、百・千劫の間、飲食することはない。
常被焚燒;水能害己,無食無飲經百千劫。[SG0804067]
九割が情、一割が正念であれば、魂は火輪の底に沈み、風輪と火輪の交わる地へ落ちる。
九情一想,下洞火輪,身入風、火二交過地,[SG0804068]
魂が軽ければ有間地獄に落ち入り、
輕生有間、[SG0804069]
魂が重ければ無間地獄に落ち入る。
重生無間二種地獄。[SG0804070]
心が情に完全に占められていれば、阿鼻地獄に落ち入る。
純情即沈,入阿鼻獄。[SG0804071]
もし大乗を誹謗したり、如来の戒律を廃止したり、邪法を説いたり、人々の布施や尊敬を騙し取ったり、五逆罪・十重罪(十悪)を犯したりしたら、別に十方の阿鼻地獄に入る。
若沈心中有謗大乘、毀佛禁戒、誑妄說法、虛貪信施、濫膺恭敬、五逆十重,更生十方阿鼻地獄。[SG0804072]
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