【楞厳経】巻一
二種の根本
その時、会衆の中にいるアーナンダは席から立ち上がり、右肩をあらわにし、右膝を地につけ、恭しく合掌してお釈迦様に言いました。
爾時,阿難在大眾中,即從座起,偏袒右肩,右膝著地,合掌恭敬而白佛言:[SG0103001]
「私は世尊様の末の従弟でございます。長年、世尊様のご厚情にあずかりました。
「我是如來最小之弟,蒙佛慈愛,[SG0103002]
すでに出家しましたが、常に世尊様のご慈悲に頼っております。
雖今出家,猶恃憍憐,[SG0103003]
多くの教えを拝聴してきましたが、まだ無漏の境地に達しておりません。
所以多聞未得無漏;[SG0103004]
娑毗迦羅の先梵天呪を突破できかね、呪術にかかって淫女の部屋に誘い込まれました。
不能折伏娑毘羅呪,為彼所轉,溺於婬舍,[SG0103005]
私はまだ悟りを開いていないゆえそのような失態を演じたのです。
當由不知真際所詣。[SG0103006]
世尊様よ! どうかご慈悲を!
唯願世尊大慈哀愍,[SG0103007]
私たちに奢摩他の道をお示しくださり、闡提(仏法を信じず誹謗する者)たちと辺地の人々の邪見(誤った見解)をお打ち破りください。」
開示我等奢摩他路,令諸闡提隳彌戾車!」[SG0103008]
そう言い終えると、アーナンダはお釈迦様に五体投地(全身を地面に投げ伏して礼拝する礼法)をしました。
作是語已,五體投地。[SG0103009]
講堂に集った会衆もお釈迦様に願いました。
及諸大眾,傾渴翹佇,欽聞示誨。[SG0103010]
その時、お釈迦様は御顔からさまざまな祥光(めでたい光)を放ち、その光は、さながら百千の太陽が集まったかのように眩しく輝いていました。
爾時,世尊從其面門放種種光,其光晃耀如百千日,[SG0103011]
諸仏の世界は六種類の震動(縁起の良い前兆)が起こり、十方の微塵数(宇宙に存在するすべての粒子のような数量を意味する。きわめて大きな数量)の仏国は同時に出現しました。
普佛世界六種震動。如是十方微塵國土一時開現,[SG0103012]
お釈迦様は神威の力によってすべての世界を合わせて一つの世界にしました。
佛之威神,令諸世界合成一界。[SG0103013]
それらの世界のすべての大菩薩たちは皆合掌し、お釈迦様の教えを聴くために集まってきました。
其世界中,所有一切諸大菩薩,皆住本國合掌承聽。[SG0103014]
お釈迦様はアーナンダに告げました。
佛告阿難:[SG0103015]
「すべての衆生は無始からさまざまな転倒(真理に背くこと)の観念を抱いてきた。
「一切眾生,從無始來種種顛倒,[SG0103016]
そのせいで種々の悪を行い、報いを受ける。転倒の観念・悪業・報いの三者は、悪叉の木(毎小枝に三顆の実を結ぶ木)の実のように集まっている。
業種自然如惡叉聚。[SG0103017]
多くの修行者は無上正等覚の境地に達することができず、ただ声聞や縁覚の境地だけに達し、あるいは外道(異教徒)、諸天界の魔王や魔王の眷属となった。
諸修行人,不能得成無上菩提乃至別成聲聞、緣覺,及成外道、諸天魔王及魔眷屬,[SG0103018]
なぜなら、皆が二つの根本的な誤りに陥って修行をするからだ。
皆由不知二種根本錯亂修習;[SG0103019]
それは、砂を煮ておいしい料理にしようとするように、たとえ微塵数の劫(きわめて長い時間の単位。一小劫は千六百七十九万八千年)をかけて煮ても、砂はおいしい料理になりえないのだ。
猶如煮沙欲成嘉饌,縱經塵劫終不能得。[SG0103020]
では、その二つの根本的な誤りは何だろうか? アーナンダよ!
云何二種? 阿難! [SG0103021]
一つ目は、衆生は無始から攀縁(心が対象を追いかけて働くこと)の心を自分の真心と誤認しているゆえ、生死輪廻から解放されることができない。
一者、無始生死根本,則汝今者與諸眾生用攀緣心為自性者。[SG0103022]
一方、衆生が無始から持っている本来の真心は、本来清明(清く明らかなこと)で、正覚・涅槃(円満・静寂の境地)の本性が備わっている清浄の体である。この心は、種々の縁を生起でき、しかし、自分の存在が感じられないものだ(鏡のように自分が自分に映ることができない)。
二者、無始菩提、涅槃元清淨體,則汝今者。識精元明,能生諸緣緣所遺者。[SG0103023]
衆生はこの本来持っている清明な心を見失い、一緒にいても、その存在を知らない。これは二つ目の誤りである。
由諸眾生遺此本明,雖終日行而不自覺,[SG0103024]
結果はむなしく六道輪廻の中をさまよっているのだ。」
枉入諸趣。[SG0103025]
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