【楞厳経】巻七
道場設立の儀軌
お釈迦様:
[SG0701001]
「アーナンダよ! お前は先ほど心を制する法を問うた。
「阿難! 汝問攝心,[SG0701002]
私はすでに三摩地に入るためのすぐれた法を説き終わった。菩薩の道を求める者は、まずこの四つの律儀(戒律と規定)を守らなければならない。
我今先說入三摩地修學妙門。求菩薩道,要先持此四種律儀,[SG0701003]
戒律を守り、行いが霜・雪のように潔白であれば、自然とあらゆる魔障が出現しない。
皎如氷霜,自不能生一切枝葉。[SG0701004]
心の三毒(貪欲・瞋恚・愚昧)と口の四つの過ち(妄語・綺語・悪口・両舌)を断ち切れば、三界に生まれる因は消滅する。
心三口四,生必無因。[SG0701005]
アーナンダよ! この四つの戒律を犯さず、心が色・香・味・触などの塵境を追わなければ、どうして魔障が出現しえるのか?
阿難! 如是四事若不失遺,心尚不緣色、香、味、觸,一切魔事云何發生? [SG0701006]
もし久しい悪習を断ち切ることができない者がいるならば、その者に、私の『仏頂光明摩訶薩怛多般怛囉』という無上神呪を一心に唱えよと教えなさい。
若有宿習不能滅除,汝教是人一心誦我佛頂光明摩訶薩怛多般怛囉無上神呪。[SG0701007]
これは、如来の無見頂相(如来の三十二相の一つ。頭頂部の肉髻)から放った光の中に現れた、無為心如来が宝蓮華に座って唱えた心の呪である。
斯是如來無見頂相無為心佛,從頂發輝,坐寶蓮華所說心呪。[SG0701008]
お前と摩登伽女との因縁は、多くの劫から積んできた情愛であり、一世や一劫だけの縁ではない。
且汝宿世與摩登伽,歷劫因緣恩愛習氣,非是一生及與一劫,[SG0701009]
しかし、彼女はこの神呪を聞いただけで、刹那に情愛の心を断ち切り、阿羅漢の境地に達した。
我一宣揚,愛心永脫成阿羅漢。[SG0701010]
修行の心を持たない淫乱女でさえ、この神呪の力によってすぐに無学の境地に達した。
彼尚婬女無心修行,神力冥資速證無學,[SG0701011]
ましてや、ここにいる声聞のお前たちが、最上の悟りを求め、成仏を目指すことは、追い風に乗った塵が大空へ舞い上がるように、容易なことではないだろうか?
云何汝等在會聲聞,求最上乘決定成佛。譬如以塵揚于順風,[SG0701012]
もし末法の世の衆生が道場を設けたいなら、まず比丘の清浄の禁戒を受けるべきだ。
若有末世欲坐道場,先持比丘清淨禁戒,[SG0701013]
必ず戒律を清浄に保つ沙門から戒律を受けよ。さもなくば、その儀式は円満とはならない。
要當選擇戒清淨者第一沙門以為其師。若其不遇真清淨僧,汝戒律儀必不成就。[SG0701014]
戒律を受けた後は、新しく清潔な服を着て静室に入り、香を焚き、心を清めてこの無為心如来の神呪を百八遍唱え、そして、結界を張り、道場を設けよ。
戒成已後,著新淨衣,然香閑居。誦此心佛所說神呪一百八遍,然後結界建立道場。[SG0701015]
十方の国土の無上の如来たちに、大悲の光を放ち、自分を灌頂してくださるように、祈願しなさい。
求於十方現住國土無上如來,放大悲光來灌其頂。[SG0701016]
アーナンダよ! 末法の世の清浄な比丘・比丘尼・白衣の居士たちが、
阿難! 如是末世清淨比丘,若比丘尼、白衣檀越,[SG0701017]
貪欲と情欲を断ち切り、如来の清浄の戒律を守り、道場で菩薩の誓願を立て、
心滅貪婬,持佛淨戒;於道場中發菩薩願,[SG0701018]
道場に出入りするたびに必ず入浴し、六時(晨朝・日中・日没・初夜・中夜・後夜)に修行に励み、
出入澡浴,六時行道。[SG0701019]
このように眠らずに三七日を過ごしたら、
如是不寐,經三七日,[SG0701020]
私はきっとその人の前に姿を現し、その頭を撫でて慰め、悟りを開かせよう。」
我自現身至其人前,摩頂安慰,令其開悟。」[SG0701021]
アーナンダはお釈迦様に言いました。
阿難白佛言:[SG0701022]
「世尊様。私はいま、世尊様の無上の慈悲深い教えを拝受し、自ら悟りを開き、無学の境地に達したことを存じております。
「世尊! 我蒙如來無上悲誨,心已開悟,自知修證無學道成;[SG0701023]
末法の世の修行者が道場を設ける時、どのように結界を張れば、世尊様の清浄の規定を満たせるのでしょうか?」
末法修行建立道場,云何結界,合佛世尊清淨軌則?」[SG0701024]
お釈迦様はアーナンダに告げました。
佛告阿難:[SG0701025]
「末法の世に道場を設けることについて、まず雪山に棲む力強く白い牛の糞を採集しよう。
「若末世人願立道場,先取雪山大力白牛,[SG0701026]
それらの牛は山中の健やかな香草を食べ、雪山の清らかな水のみを飲むゆえ、糞は微細だ。
食其山中肥膩香草,此牛唯飲雪山清水;其糞微細,[SG0701027]
それらの糞と栴檀香を混ぜ合わせて道場の地に敷く。
可取其糞和合栴檀以泥其地。[SG0701028]
雪山の牛でなければ、糞が臭く不潔で、地に敷くには適しない。
若非雪山,其牛臭穢不堪塗地。[SG0701029]
あるいは平原の表土を取り除き、五尺以下から掘り出した黄土を用いなさい。
別於平原穿去地皮,五尺已下取其黃土,[SG0701030]
栴檀香・沈水香・蘇合香・薫陸香・鬱金・白膠木・青木・零陵香・甘松・鶏舌香をひいて粉末にし、黄土に混ぜて泥を作り、道場の地に敷きなさい。
和上栴檀、沈水、蘇合、薰陸、欝金、白膠、青木、零陵、甘松、及雞舌香,以此十種細羅為粉,合土成泥,以塗場地。[SG0701031]
道場の中には半径一丈六尺の八角形の祭壇を設置する。
方圓丈六,為八角壇。[SG0701032]
祭壇の中央には金・銀・銅・木で作った蓮華をそれぞれ一つずつ据え、蓮華の上に鉢を置き、
壇心置一金、銀、銅、木所造蓮華,華中安鉢,[SG0701033]
八月に採集した露を鉢に盛り、露にいろいろな生花や若葉を撒く。
鉢中先盛八月露水,水中隨安所有華葉。[SG0701034]
八つの円形の鏡を祭壇の八方に据えて蓮華を囲み、
取八圓鏡各安其方,圍繞花鉢。[SG0701035]
さらに、鏡の外側には十六の蓮華と十六の荘厳な香炉をかわるがわる据える。
鏡外建立十六蓮華,十六香鑪間花鋪設。[SG0701036]
香炉には沈水香のみを焚き、火が見えないようにする。
莊嚴香鑪,純燒沈水,無令見火。[SG0701037]
そして、十六の器ごとに、白い牛の乳で作った焼き餅・砂糖・油餅・乳粥・酥合・蜜生姜・純酥・純蜜、及び諸菓子・飲食・葡萄・石蜜(氷砂糖)・種々の上等の美食を盛り、蓮華の外側に置いて祭壇を囲む。
取白牛乳置十六器,乳為煎餅,并諸沙糖、油餅、乳糜、酥合、蜜薑、純酥、純蜜,及諸菓子、飲食、葡萄、石蜜,種種上妙等食,於蓮華外各各十六,圍繞華外,[SG0701038]
毎日の正午、これらを如来と大菩薩たちに供える。
以奉諸佛及大菩薩,每以食時。[SG0701039]
夜半には、半升の蜂蜜と三合(一合は一升の十分の一)の酥油を用意し、祭壇の前に小さな火炉を置き、
若在中夜,取蜜半升,用酥三合;壇前別安一小火鑪,[SG0701040]
兜楼婆香(白茅香)で香水を沸かし、そしてその香水を炭火に注いで火勢を強める。
以兜樓婆香,煎取香水,沐浴其炭,然令猛熾;[SG0701041]
炭火に蜂蜜と酥油を投げ入れ、煙が尽きるまで如来と菩薩を供養する。
投是酥蜜於炎鑪內,燒令煙盡,饗佛、菩薩。[SG0701042]
祭壇の周りに幢幡(仏堂に飾る旗)を立て、室内の四方の壁には十方の如来と諸菩薩の尊像を掛ける。
令其四外遍懸幡華。於壇室中,四壁敷設十方如來及諸菩薩所有形像。[SG0701043]
最上位の位置には毘盧遮那(大日如来)様の尊像を掛け、
應於當陽張盧舍那、[SG0701044]
左右には釈迦・弥勒・阿閦・弥陀、そして種々の姿の観音・金剛蔵王の尊像を掛ける。
釋迦、彌勒、阿閦、彌陀,諸大變化觀音形像兼金剛藏,安其左右。[SG0701045]
門の両側には、帝釈天・梵天の王・烏枢沙摩・青面金剛・軍荼利(明王)・毘俱胝・護世四天王(天下を守護している四天の天王)・毘那夜迦(歓喜天。象頭人身の護法神)の像を掛ける。
帝釋、梵王、烏芻瑟摩,并藍地迦、諸軍茶利,與毘俱知、四天王等,頻那、夜迦,張於門側,左右安置。[SG0701046]
最後に八つの鏡を天井から吊るし、祭壇の八方に据えた鏡に向けて互いに映し合うようにする。
又取八鏡,覆懸虛空。與壇場中所安之鏡,方面相對,使其形影重重相涉。[SG0701047]
最初の七日間、誠心誠意十方の如来・大菩薩・阿羅漢に頂礼し、
於初七日中,至誠頂禮十方如來、諸大菩薩及阿羅漢,[SG0701048]
六時の間、常に神呪を唱えつつ祭壇を巡り、一心に修行に励む。
恒於六時誦呪繞壇,至心行道。[SG0701049]
一時ごとに神呪を百八遍唱える。
一時常行一百八遍。[SG0701050]
次の七日間は、絶え間なく一心に菩薩の誓願を立てる。
第二七中,一向專心發菩薩願,心無間斷。[SG0701051]
私が説いた律蔵には、その規範がある。
我毘奈耶,先有願教。[SG0701052]
第三の七日間は、一日中神呪を唱え続ける。
第三七中,於十二時一向持佛般怛羅呪。[SG0701053]
第七日になると、十方の如来が同時に鏡の光の錯綜するところに出現し、修行者の頭を撫でてやる。
至第七日,十方如來一時出現,鏡交光處承佛摩頂。[SG0701054]
末法の世、修行者がこのような道場で三摩地を修めるなら、身心が瑠璃のように澄み、清浄となるのだ。
即於道場修三摩地,能令如是末世修學,身心明淨猶如瑠璃。[SG0701055]
アーナンダよ! もし戒律を授けた法師及び同じ道場で修行する十人の比丘の中に、一人でも戒律を犯した者がいれば、恐らくその道場の修行者は成道できないだろう。
阿難! 若此比丘本受戒師及同會中十比丘等,其中有一不清淨者,如是道場多不成就。[SG0701056]
第三の七日から、もしすぐれた資質のある修行者が百日間ずっと静かに端座(姿勢を正して座ること)し続けて座を立たなければ、須陀洹の境地に達することができる。
從三七後,端坐安居經一百日,有利根者不起于座,得須陀洹。[SG0701057]
たとえなお如来の境地に達していなくても、未来に必ず成仏することを深く信じている。
縱其身心聖果未成,決定自知成佛不謬。[SG0701058]
お前が問うた道場の設置とは、まさにこのようにするのだ。」
汝問道場,建立如是。」[SG0701059]
アーナンダはお釈迦様に頂礼して言いました。
阿難頂禮佛足,而白佛言:[SG0701060]
「私が出家して以来、世尊様のご慈悲に頼んでおり、ただ多聞を追求し、まだ無為の境地に達しておりません。
「自我出家,恃佛憍愛,求多聞故未證無為;[SG0701061]
先ほど先梵天の呪術にかかった時、頭がさえておりましたが、力が不自由になりました。
遭彼梵天邪術所禁,心雖明了力不自由,[SG0701062]
その時、文殊菩薩様は如来様の『仏頂神呪』を唱え、そのおかげで私は呪術から解放されました。しかし、神呪を耳にすることはありませんでした。
賴遇文殊令我解脫。雖蒙如來佛頂神呪,冥獲其力,尚未親聞。[SG0701063]
どうかご慈悲を! もう一度神呪をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
唯願大慈重為宣說,[SG0701064]
この大会にいる修行者たち、そして未来に輪廻に苦しむ衆生が、如来様の真言によって解脱の境地に達しえるように。」
悲救此會諸修行輩,末及當來在輪迴者,承佛密音身意解脫!」[SG0701065]
そこで、すべての会衆は共に礼をし、静かに如来の秘密の真言に聴き入りました。
于時會中一切大眾,普皆作禮,佇聞如來祕密章句。[SG0701066]
その時、お釈迦様は肉髻から百色の宝光を放ち、光の中には千枚の葉を持つ宝蓮華が出現し、
爾時,世尊從肉髻中涌百寶光,光中涌出千葉寶蓮,[SG0701067]
その上にある化身の如来が結跏趺坐し、彼らの頭の頂から十本の百色の宝光を放ちました。
有化如來坐寶華中,頂放十道百寶光明,[SG0701068]
各光明の中には十恒河沙数の金剛神が出現して虚空に満ち、それらの金剛杵(すべてを打ち割ることができる古代インドの武器)を持っている金剛神は山を打ち砕くことができます。
一一光明,皆遍示現十恒河沙金剛密跡,擎山持杵遍虛空界。[SG0701069]
会衆はその光景を仰ぎ見て、畏敬と敬愛の念を抱き、
大眾仰觀,畏愛兼抱,求佛恃怙,[SG0701070]
お釈迦様の無見頂相に現れて光明を放っている化身の如来が唱える神呪に、一心に耳を傾けました。
一心聽佛無見頂相放光如來宣說神呪。[SG0701071]
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