【楞厳経】巻九
陰魔
法会が終わりに近づく時、師子の座に座るお釈迦様は、七宝の机を身近に引き寄せました。
即時如來將罷法座,於師子床攬七寶机,[SG0905001]
そのお身体が紫金の山のように堂々とそびえ立ち、机に手をかけ、アーナンダと会衆に言いました。
迴紫金山,再來凭倚,普告大眾及阿難言:[SG0905002]
「有学の声聞と縁覚たちよ。今日は心を転じ、無上正等覚の境地へ進もう。
「汝等有學緣覺、聲聞,今日迴心趣大菩提無上妙覺,[SG0905003]
私はすでに真の修行の法を説き終えた。しかし、お前たちは奢摩他と毘婆舎那の修行中に出現する微細な魔境を見極めることができない。
吾今已說真修行法。汝猶未識修奢摩他、毘婆舍那微細魔事;[SG0905004]
魔境が出現する時、それを認識せず、心を正しく清めることができず、かえって邪見に陥ってしまう。
魔境現前,汝不能識,洗心非正,落於邪見。[SG0905005]
あるいは五陰の魔、あるいは天魔・鬼神・魑魅(妖怪)に惑わされる。
或汝陰魔,或復天魔,或著鬼神,或遭魑魅;[SG0905006]
智慧が不足するゆえ、賊を子と誤認し、わずかな悟りを得ただけで満足してしまう。
心中不明,認賊為子。又復於中得少為足,[SG0905007]
たとえば、四禅の境地に達しただけの無聞比丘が、自分がすでに阿羅漢の境地に達したと称した。
如第四禪無聞比丘妄言證聖,[SG0905008]
やがて天界の報いが尽き、衰えの相が現れた時、彼は如来を誹謗中傷し、『阿羅漢が輪廻を脱したのは嘘だ』と非難した。
天報已畢衰相現前,謗阿羅漢身遭後有,[SG0905009]
その結果、彼は阿鼻地獄に落ちた。
墮阿鼻獄。[SG0905010]
よく聞きなさい! お前たちよ! 私はいま、詳しく説明してやろう!」
汝應諦聽! 吾今為汝子細分別。」[SG0905011]
その時、アーナンダは席から立ち上がり、大会の有学の人々と共に歓喜してお釈迦様に頂礼し、平伏してその教えに聴き入りました。
阿難起立,并其會中同有學者,歡喜頂禮,伏聽慈誨。[SG0905012]
お釈迦様はアーナンダと会衆に告げました。
佛告阿難及諸大眾:[SG0905013]
「お前たちよ! よく聴きなさい! 有漏の世界における十二種類の衆生が備わる妙明で円満な真心と、十方の如来の心は不同ではない。
「汝等當知有漏世界十二類生,本覺妙明覺圓心體,與十方佛無二無別。[SG0905014]
衆生は妄想を起こし、邪見に陥り、真心が無明に覆われる。その結果、虚空という性質は出現した。
由汝妄想迷理為咎,癡愛發生,生發遍迷,故有空性;[SG0905015]
無明と妄想は止むことなく続き、それで、世界が形成された。
化迷不息,有世界生。[SG0905016]
十方の微塵数の国土は真実ではなく、ただ無明と妄想によって仮に成り立つものにすぎない。
則此十方微塵國土,非無漏者,皆是迷頑妄想安立。[SG0905017]
聴きなさい! 澄み渡る空に一片の薄雲が浮かぶように、虚空は心の中に現れる幻影にすぎない。ましてや、虚空の中に出現する世界はなおさらだ。
當知虛空生汝心內,猶如片雲點太清裏。況諸世界在虛空耶? [SG0905018]
もしお前たちの中に、一人でも心の真性を恢復する者がいれば、十方の虚空はすべて崩れ去る。
汝等一人發真歸元,此十方空皆悉銷殞;[SG0905019]
いわんや、虚空に依存する国土が破滅しないことはあろうか?
云何空中所有國土而不振裂? [SG0905020]
お前たちが禅定を修め、三摩地に入った時、
汝輩修禪飾三摩地,[SG0905021]
もし心が十方の菩薩や無漏の大阿羅漢の心に合えば、すべては湛然となる。
十方菩薩及諸無漏大阿羅漢心精通㳷,當處湛然。[SG0905022]
その時、天界では、理由もなく宮殿が崩れ、地震が起き、水が激しく波立つ。それを目にした魔王、鬼神、天界の天人に、恐れ慌てない者はいない。
一切魔王及與鬼神、諸凡夫天,見其宮殿無故崩裂,大地振坼;水陸飛騰,無不驚慴。[SG0905023]
凡人の心は暗く愚かで、その変異に気づかない。
凡夫昏暗,不覺遷訛。[SG0905024]
すでに五種の神通を得て、漏尽通(煩悩が尽きた境地)だけを得ていない天人たちは、この六塵の世界を愛着しているため、自らの世界がお前に破壊されることを許さない。
彼等咸得五種神通,唯除漏盡,戀此塵勞,如何令汝摧裂其處? [SG0905025]
だから、お前が三摩地に入った時、鬼神・天魔・魍魎・妖精たちは来てお前を悩ますのだ。
是故神鬼及諸天魔、魍魎、妖精,於三昧時僉來惱汝。[SG0905026]
天魔たちは怒り、お前を害そうとするが、彼らはなお塵境の世界にとらわれ、一方、お前はすでにその世界を超え、妙なる悟りの境地に入った。
然彼諸魔雖有大怒,彼塵勞內,汝妙覺中,[SG0905027]
風が光を吹き払おうとし、刀で水を断とうとするように、すべては無駄だ。
如風吹光,如刀斷水,了不相觸。[SG0905028]
お前は湯熱の如く、彼らは堅い氷の如し。氷が湯熱に近づけば、直ちに溶けて消えるだろう。
汝如沸湯,彼如堅氷,煖氣漸隣,不日銷殞。[SG0905029]
彼らは神力を持つが、それは外から来る客にすぎない。お前の五陰こそが真心を乱せる主人なのだ。
徒恃神力,但為其客;成就破亂,由汝心中五陰主人。[SG0905030]
主人が迷えば、客はその隙に潜り込むことができる。
主人若迷,客得其便。[SG0905031]
しかし、禅那・覚悟に迷いのない者に対して、天魔は施す術がない。
當處禪那覺悟無惑,則彼魔事無奈汝何。[SG0905032]
五陰の闇が消え去り、光明が現れ、光が闇を破れるゆえ、陰の気によって成る天魔は修行者に近づけば、すぐに消滅する。
陰銷入明,則彼群邪咸受幽氣。明能破暗,近自銷殞,[SG0905033]
では、なぜ彼らにお前の禅定を妨げる勇気などがあろうか?
如何敢留擾亂禪定? [SG0905034]
アーナンダよ! 五陰に惑わされ、悟りを開くことができなければ、お前は必ず魔族となり、天魔の力になる。
若不明悟被陰所迷,則汝阿難必為魔子,成就魔人。[SG0905035]
摩登伽女は呪術を使ってお前に如来の戒律を破らせたが、それはただ八万の細行(微細な行為)の中で一つの戒律だけである。
如摩登伽,殊為眇劣,彼雖呪汝破佛律儀,八萬行中秖毀一戒,[SG0905036]
幸いにも、お前の心は清浄で堕落に至らなかった。魔の害とは、比べ物にならない。
心清淨故尚未淪溺。[SG0905037]
なぜなら、天魔はお前の善根と慧命(悟りの智慧を命に喩えた語)を断つことができるからだ。
此乃隳汝寶覺全身,[SG0905038]
それは、大臣が国王から流刑に処され、家が没落し、誰も助けられないようなものだ。
如宰臣家忽逢籍沒,宛轉零落,無可哀救。[SG0905039]
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