【楞厳経】巻三
十八界
また、アーナンダよ! なぜ十八界は本来如来蔵の妙明な真如の性であるのか?
復次,阿難! 云何十八界本如來藏妙真如性? [SG0303001]
一、眼界・色界・眼識界
アーナンダよ! お前が理解しているとおり、眼根が色塵と接触すると眼識は生起する。
阿難! 如汝所明,眼、色為緣生於眼識,[SG0303002]
では、眼識は眼根によって生起し、眼根に存在するのか? それとも、眼識は色塵によって生起し、色塵に存在するのか?
此識為復因眼所生、以眼為界? 因色所生、以色為界? [SG0303003]
アーナンダよ! もし眼識が眼根によって生起するものであれば、色塵と虚空は不要になってしまう。
阿難! 若因眼生,既無色、空,[SG0303004]
たとえ眼識が生起しても、対象がなければ、識別の働きは成り立ちえないはずだ。
無可分別,縱有汝識,欲將何用? [SG0303005]
また、見は青・黄・赤・白など相ではなく、眼識界(識界とは、識が存在する区域)はいったいどこに成り立つのか?
汝見又非青、黃、赤、白,無所表示,從何立界? [SG0303006]
もし眼識が色塵によって生起するものであれば、色塵のない虚空を見る時、眼識は消失するはずだ。では、なぜ虚空の存在を識別できるのか?
若因色生,空無色時汝識應滅,云何識知是虛空性? [SG0303007]
また、色が変わる時、お前はその変化を識別できる。
若色變時,汝亦識其色相遷變;[SG0303008]
しかし、眼識そのものは変わらないのに、眼識界がその変化に従って成り立つことはありえないはずだ。
汝識不遷,界從何立? [SG0303009]
もし眼識が色の変化につれて変わるならば、眼識界は混乱するはずだ。
從變則變,界相自無;[SG0303010]
逆に、眼識が不変であるならば、眼識は常住するものということになってしまう。
不變則恒。[SG0303011]
また、眼識が色塵によって生起するものであれば、虚空の所在を識別できるはずがない。
既從色生,應不識知虛空所在? [SG0303012]
さらに、もし眼識が眼根と色塵の双方によって生起するものであれば、二つの相反する性質を持つ眼識は一つに結合するということになってしまう。
若兼二種眼、色共生,合則中離、離則兩合,[SG0303013]
眼識の性質はこのように混乱し、眼識界は成り立ちえないはずだ。
體性雜亂,云何成界? [SG0303014]
それゆえ、眼根が色塵と接触すると眼識が生起するということについて、
是故當知,眼、色為緣生眼識界,[SG0303015]
眼根、色塵と眼識はいずれも在り処がなく、因縁によって存在するものでもなく、自然に存在するものでもないのだ。
三處都無,則眼與色及色界三,本非因緣、非自然性。[SG0303016]
二、耳界・声界・耳識界
アーナンダよ! お前が理解しているとおり、耳根が声塵と接触すると耳識は生起する。
阿難! 又汝所明,耳、聲為緣生於耳識,[SG0303017]
では、耳識は耳根によって生起し、耳根に存在するものか? それとも、耳識は声塵によって生起し、声塵に存在するものか?
此識為復因耳所生、以耳為界? 因聲所生、以聲為界? [SG0303018]
アーナンダよ! もし耳識が耳根によって生起するものであれば、動塵と静塵という対象は不要になってしまう。
阿難! 若因耳生,動、靜二相既不現前,[SG0303019]
しかし、聞く対象がなければ、耳識はいったい何を識別するのか?
根不成知,必無所知。知尚無成,識何形貌? [SG0303020]
また、もし耳識が耳界に存在するものであれば、声塵のない耳界では聴くという働きは成り立ちえないはずだ。
若取耳聞,無動、靜故,聞無所成。[SG0303021]
そもそも耳界そのものは色塵と触塵に属するものであり、そこに耳識界がどのように成り立つのか?
云何耳形雜色、觸塵名為識界? 則耳識界復從誰立! [SG0303022]
一方、もし耳識が声塵によって生起するものであれば、耳識は聞くという働きとは無関係となってしまう。
若生於聲,識因聲有、則不關聞,[SG0303023]
聞かなければ、声の存在を知ることはありえない。
無聞則亡聲相所在。[SG0303024]
もし耳識が声塵によって生起し、声を聞くことで声を知るというなら、耳識は聞く対象となってしまう。
識從聲生,許聲因聞而有聲相,聞應聞識,[SG0303025]
耳識を聞かなければ、耳識界は成り立ちえない。
不聞非界。[SG0303026]
逆に、耳識を聞けば、耳識を聞くことに気づける人はいるのか?
聞則同聲,識已被聞,誰知聞識? [SG0303027]
誰も気づけないというならば、人は草木のように耳識を持っていないということになってしまう。
若無知者,終如草木,[SG0303028]
耳識が耳根と声塵の双方によって、双方の中間という所に生起するもののはずがない。
不應聲、聞雜成中界。[SG0303029]
もしそうであれば、耳根と声塵の境界は曖昧になってしまう。
界無中位,則內、外相復從何成? [SG0303030]
それゆえ、耳根が声塵と接触すると耳識が生起するということについて、
是故當知,耳、聲為緣生耳識界,[SG0303031]
耳根、声塵と耳識はいずれも在り処がなく、因縁によって存在するものでもなく、自然に存在するものでもないのだ。
三處都無,則耳與聲及聲界三,本非因緣、非自然性。[SG0303032]
三、鼻界・香界・鼻識界
アーナンダよ! お前が理解しているとおり、鼻根が香塵と接触すると鼻識が生起する。
阿難! 又汝所明,鼻、香為緣生於鼻識,[SG0303033]
では、鼻識は鼻根によって生起し、鼻根に存在するものか? それとも、鼻識は香塵によって生起し、香塵に存在するものか?
此識為復因鼻所生、以鼻為界? 因香所生、以香為界? [SG0303034]
アーナンダよ! もし鼻識が鼻根によって生起するものであれば、鼻根とは何を指すのか?
阿難! 若因鼻生,則汝心中以何為鼻? [SG0303035]
それは爪の形の肉(外鼻)なのか、それとも嗅覚という知覚なのか?
為取肉形雙爪之相? 為取嗅知動搖之性? [SG0303036]
もし鼻根が爪の形の肉であるなら、それは身根に属し、身根の知覚は触覚であって嗅覚ではない。
若取肉形,肉質乃身,身知即觸,[SG0303037]
身根は鼻根ではなく嗅覚の働きを持っていないのだから、鼻識界は身根に成り立ちえるはずがない。
名身非鼻,名觸即塵;鼻尚無名,云何立界? [SG0303038]
もし鼻根が嗅覚というものであるなら、その嗅覚はどこに存在するのか?
若取嗅知,又汝心中以何為知? [SG0303039]
もし肉の鼻に存在するというなら、肉の知覚は嗅覚ではなく、触覚のはずだ。
以肉為知,則肉之知元觸非鼻。[SG0303040]
もし嗅覚が虚空に存在するものであれば、虚空が匂いを嗅ぎ、肉の鼻は匂いを知ることができないということになってしまう。
以空為知,空則自知,肉應非覺。[SG0303041]
そうであれば、虚空こそがお前であり、いまアーナンダは空虚になってしまう。
如是則應虛空是汝,汝身非知,今日阿難應無所在。[SG0303042]
もし嗅覚が香塵に存在するものであれば、香塵は自分の匂いを嗅ぐことになってしまい、お前とは無関係になってしまう。
以香為知,知自屬香,何預於汝? [SG0303043]
もし香ばしさと臭さが鼻から生起するものであれば、栴檀の木(香木)や伊蘭の木(極臭木)といった外物がなくても、香ばしさと臭さを感じるはずだ。
若香、臭氣必生汝鼻,則彼香、臭二種流氣,不生伊蘭及栴檀木。[SG0303044]
そうであれば、お前が自分の鼻を嗅ぐ時、いい匂いを感じるのか、それとも臭い匂いを感じるのか?
二物不來,汝自嗅鼻,為香為臭? [SG0303045]
臭ければ香ばしくなく、香ばしければ臭くない。
臭則非香、香應非臭。[SG0303046]
もし同時にいい匂いと臭い匂いを感じるというなら、お前は二つの鼻を持ち、ここには二人のアーナンダがいて私と対話しているということになってしまう。どちらが本当のお前なのか?
若香、臭二俱能聞者,則汝一人應有兩鼻,對我問道有二阿難,誰為汝體? [SG0303047]
もし一つの鼻を持ち、臭さが香ばしさであり、香ばしさが臭さであるというなら、区別がない場合には鼻識界が成り立ちえない。
若鼻是一,香、臭無二,臭既為香,香復成臭,二性不有,界從誰立? [SG0303048]
もし鼻識は香塵によって生起し、香塵に存在するものであれば、目は自分自身を見ることができないように、
若因香生,識因香有,如眼有見不能觀眼,[SG0303049]
香塵に存在する鼻識は香塵を嗅ぐことがありえないはずだ。
因香有故應不知香。[SG0303050]
もし香塵を嗅ぐことができるならば、鼻識は香塵に存在するはずがない。
知則非生,[SG0303051]
香塵を嗅ぐことができないならば、鼻識は匂いを識別できないものになってしまう。
不知非識,[SG0303052]
香塵は知覚がないゆえ、鼻識界は香塵に存在するはずがない。
香非知有,香界不成。[SG0303053]
だから、鼻識が香りを知らないゆえ鼻識は香塵によって生起するものという説は成り立たない。
識不知香,因界則非從香建立。[SG0303054]
中間という所はないゆえ、内と外の区別は成り立ちえず、嗅覚は本来虚妄である。
既無中間,不成內、外,彼諸聞性畢竟虛妄! [SG0303055]
それゆえ、鼻根が香塵と接触すると鼻識が生起するということについて、
是故當知,鼻、香為緣生鼻識界,[SG0303056]
鼻根、香塵と鼻識はいずれも在り処がなく、因縁によって存在するものでもなく、自然に存在するものでもないのだ。
三處都無,則鼻與香及香界三,本非因緣、非自然性。[SG0303057]
四、舌界・味界・舌識界
アーナンダよ! お前が理解しているとおり、舌根が味塵と接触すると舌識が生起する。
阿難! 又汝所明,舌、味為緣生於舌識,[SG0303058]
では、舌識は舌根によって生起し、舌根に存在するものか? それとも、舌識は味塵によって生起し、味塵に存在するものか?
此識為復因舌所生、以舌為界? 因味所生、以味為界? [SG0303059]
アーナンダよ! もし舌識が舌根によって生起するものであれば、世間のサトウキビ・烏梅・黄連・岩塩・細辛・生姜・肉桂などは味がないことになってしまう。
阿難! 若因舌生,則諸世間甘蔗、烏梅、黃連、石鹽、細辛、薑、桂、都無有味。[SG0303060]
お前は自分の舌を味わってみよ! それは甘いか、苦いか?
汝自嘗舌,為甜、為苦? [SG0303061]
もし舌根そのものが苦いのであれば、いったい何がその苦味を味わうのか?
若舌性苦,誰來嘗舌? [SG0303062]
舌根は自身の味を味わうことができないのに、味を味わえる人はいるのか?
舌不自嘗,孰為知覺? [SG0303063]
逆に、もし舌根そのものが苦くないのであれば、舌識界は味のない舌根に成り立ちえないはずだ。
舌性非苦,味自不生,云何立界? [SG0303064]
また、もし舌識が味塵によって生起するものであれば、舌識は味そのものとなってしまう。
若因味生,識自為味,[SG0303065]
その場合、舌根と同様に、舌識が自身の味を味わうことはありえないはずだ。なぜ味を識別できるのか?
同於舌根,應不自嘗,云何識知是味非味? [SG0303066]
それに、種々の味は異なり、味塵によって生起する舌識もまた多様であるはずだ。
又一切味非一物生,味既多生,識應多體! [SG0303067]
もし舌識が味塵によって生起して必ず単一であるならば、塩味・薄味・甘味・辛味などをどのように混ぜても、単一の味しか感じないはずだ。
識體若一,體必味生,鹹、淡、甘、辛、和合俱生諸變異相,同為一味,應無分別! [SG0303068]
味の区別ができない場合には、なぜ舌識界があると言えるのか?
分別既無則不名識,云何復名舌味識界? [SG0303069]
一方、舌識は虚空によって生起するもののはずがない。
不應虛空生汝心識! [SG0303070]
もし舌識が舌根と味塵との接触によって生起するものであれば、中間という所はなく、舌識界はどのように成り立つのか?
舌、味和合,即於是中元無自性,云何界生? [SG0303071]
それゆえ、舌根が味塵と接触すると舌識が生起するということについて、
是故當知,舌、味為緣生舌識界,[SG0303072]
舌根、味塵と舌識はいずれも在り処がなく、因縁によって存在するものでもなく、自然に存在するものでもないのだ。
三處都無,則舌與味及舌界三,本非因緣、非自然性。[SG0303073]
五、身界・触界・身識界
アーナンダよ! お前が理解しているとおり、身根が触塵と接触すると身識が生起する。
阿難! 又汝所明,身、觸為緣生於身識,[SG0303074]
では、身識は身根によって生起し、身根に存在するものか? それとも、身識は触塵によって生起し、触塵に存在するものか?
此識為復因身所生、以身為界? 因觸所生、以觸為界? [SG0303075]
アーナンダよ! もし身識が身根によって生起するものであれば、分離と接触の二つの触塵は不要になってしまう。それでは、身識はいったい何を識別するのか?
阿難! 若因身生,必無合、離二覺觀緣,身何所識? [SG0303076]
もし身識は触塵によって生起するものであれば、身識は身根と無関係になってしまう。
若因觸生,必無汝身,[SG0303077]
では、身根を通じずに分離や接触を感じられる人はいるのか?
誰有非身知合、離者? [SG0303078]
アーナンダよ! 物は触覚がなく、身は触覚がある。
阿難! 物不觸知,身知有觸;[SG0303079]
触覚は身を感じる働きであり、身は触覚を知る主体である。
知身即觸,知觸即身;[SG0303080]
触覚は身根ではなく、身根は触覚ではない。
即觸非身,即身非觸,[SG0303081]
身根と触覚は本来在り処がなく、接触という感覚は身自身の感覚(皮膚の温度・圧力の変化など)である。
身、觸二相元無處所。合身即為身自體性,[SG0303082]
非接触という感覚は虚空の相である。
離身即是虛空等相,[SG0303083]
内(身根)と外(触塵)の区別が成り立たず(身もまた触塵である)、中間はどこに位するのか?
內、外不成,中云何立? [SG0303084]
中間が存在しないゆえ内と外の区別は虚妄である。
中不復立,內、外性空,[SG0303085]
それでは、身識界はどこに存在するのか?
即汝識生從誰立界? [SG0303086]
それゆえ、身根が触塵と接触すると身識が生起するということについて、
是故當知,身、觸為緣生身識界,[SG0303087]
身根、触塵と身識はいずれも在り処がなく、因縁によって存在するものでもなく、自然に存在するものでもないのだ。
三處都無,則身與觸及身界三,本非因緣、非自然性。[SG0303088]
六、意界・法界・意識界
アーナンダよ! お前が理解しているとおり、意根が法塵と接触すると意識は生起する。
阿難! 又汝所明,意、法為緣生於意識,[SG0303089]
では、意識は意根によって生起し、意根に存在するものか? それとも、意識は法塵によって生起し、法塵に存在するものか?
此識為復因意所生、以意為界? 因法所生、以法為界? [SG0303090]
アーナンダよ! もし意識が意根によって生起するものであれば、法塵という対象は不要になってしまう。
阿難! 若因意生,於汝意中必有所思發明汝意,[SG0303091]
法塵のない場合には意識は何を識別するのか?
若無前法,意無所生,離緣無形,識將何用? [SG0303092]
また、意根、法塵及び意識は同一なのか、それとも別物なのか?
又汝識心、與諸思量、兼了別性,為同為異? [SG0303093]
もし同一であれば、なぜ意識が意根によって生起するものと言えるのか?
同意即意,云何所生? [SG0303094]
もし別物であれば、意根は識別の働きを持っていないはずだ。
異意不同,應無所識! [SG0303095]
そうであれば、なぜ意根は意識を起こせると言うのか?
若無所識,云何意生? [SG0303096]
もし識別の働きを持つならば、なぜ自分自身を識別できるのか?
若有所識,云何識意? [SG0303097]
同一・別物のいずれの説も成り立たないのに。なぜ意識界が成り立つことはできるのか?
唯同與異二性無成,界云何立? [SG0303098]
さらに、世間の諸法は必ず五塵(色塵・声塵・香塵・味塵・触塵)に関わる。
若因法生,世間諸法不離五塵。[SG0303099]
見なさい。色塵・声塵・香塵・味塵・触塵はそれぞれの根に対応し、意根と接触するものではない。
汝觀色法及諸聲法、香法、味法、及與觸法,相狀分明以對五根,非意所攝。[SG0303100]
もし意識が法塵によって生起するものであれば、法塵はいったいどのような相を持つのか?
汝識決定依於法生,汝今諦觀法法何狀? [SG0303101]
もし色・虚空・動塵・静塵・流通・閉塞・分離・接触・生滅など五塵の相を離れれば、法塵は何ものでもない。
若離色空、動靜、通塞、合離、生滅,越此諸相,終無所得。[SG0303102]
法塵の生滅とは、五塵の相の生滅にほかならない。
生則色、空諸法等生,滅則色、空諸法等滅;[SG0303103]
では、実体のない法塵によって生起した意識界はどのような相を持つのか?
所因既無,因生有識,作何形相? [SG0303104]
なぜ形も相もない意識界が成り立つことができるのか?
相狀不有,界云何生? [SG0303105]
それゆえ、意根が法塵と接触すると意識が生起するということについて、
是故當知,意、法為緣生意識界,[SG0303106]
意根、法塵と意識はいずれも在り処がなく、因縁によって存在するものでもなく、自然に存在するものでもないのだ。」
三處都無,則意與法及意界三,本非因緣、非自然性。」[SG0303107]
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