【楞厳経】巻十
五陰妄想
これを聴き、アーナンダは席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼し、すべての教えを銘記し、会衆の中でお釈迦様に言いました。
阿難即從坐起,聞佛示誨,頂禮欽奉,憶持無失。於大眾中重復白佛:[SG1003001]
「世尊様のおっしゃるとおり、五陰の根本は五種の妄想の心でございます。
「如佛所言『五陰相中,五種虛妄為本想心」,[SG1003002]
これほど詳しいご説明を、これまで拝聴したことはございません。
我等平常未蒙如來微細開示。[SG1003003]
では、五陰の消滅は同時に起こるのでしょうか? それとも順次に起こるのでしょうか?
又此五陰為併銷除? 為次第盡? [SG1003004]
五陰の境界はいかなるものでしょうか?
如是五重詣何為界? [SG1003005]
世尊様よ! どうかご慈悲を!
唯願如來發宣大慈,[SG1003006]
ここに集う大衆の心と目をお清めくださり、未来のすべての衆生を光明へ導いてくださいますようお願い申し上げます。」
為此大眾清明心目,以為末世一切眾生作將來眼!」[SG1003007]
お釈迦様はアーナンダに告げました。
佛告阿難:[SG1003008]
「妙明な本覚の心は本来円浄であり、生死も塵垢もない。
「精真妙明本覺圓淨,非留死生及諸塵垢;[SG1003009]
虚空でさえも妄想から生じるものである。
乃至虛空皆因妄想之所生起,[SG1003010]
世間のすべては妙明な本覚の心に起こる妄想にすぎない。
斯元本覺妙明真精,妄以發生諸器世間。[SG1003011]
演若達多はにわかに気が狂ったように、本来根元がない。
如演若多迷頭認影,妄元無因,[SG1003012]
妄想に対して因縁の理を立て、あるいは因縁を否定して自然の説を立てる。
於妄想中立因緣性;迷因緣者,稱為自然。[SG1003013]
虚空の性は確かに幻であり、因縁も自然も妄想から立てる推論にすぎない。
彼虛空性猶實幻生,因緣、自然,皆是眾生妄心計度。[SG1003014]
アーナンダよ! 衆生は妄想を抱いて因縁を説き、そもそも虚妄は存在せず、存在しないものに因縁があるのか?
阿難! 知妄所起,說妄因緣,若妄元無,說妄因緣元無所有,[SG1003015]
ましてや自然の説は言うまでもない。
何況不知推自然者! [SG1003016]
それゆえ、私は、『五陰の根本は妄想である』とお前に説くのだ。
是故如來與汝發明,五陰本因同是妄想。[SG1003017]
色陰
お前の身体は、父母からの愛欲の妄想によって生じたものである。
汝體先因父母想生,[SG1003018]
もしお前に愛欲の念がなければ、妄想に従って生まれることはなかっただろう。
汝心非想,則不能來想中傳命。[SG1003019]
先ほど私が言った、『梅干しを思えば、口は自然に唾液を分泌する。高い崖のはしに立つことを想像すれば、足がすくむ』と。
如我先言『心想醋味,口中涎生;心想登高,足心酸起』,[SG1003020]
崖も梅干しも実際に目の前にあるわけではない。
懸崖不有,醋物未來,[SG1003021]
もし身体が妄想に繋がるものではないならば、なぜ梅干しの話を聞いただけで、口は自然に唾液を分泌するのか?
汝體必非虛妄通倫,口水如何因談醋出? [SG1003022]
それゆえ、いま現れているお前の身体は、『堅固妄想』と呼ばれる第一種の妄想である。
是故當知汝現色身,名為堅固第一妄想。[SG1003023]
受陰
高い崖のはしに立つという想像は、身体をすくませることができる。
即此所說臨高想心,能令汝形真受酸澁。[SG1003024]
生起した念は、身に反応を起こさせることができる。
由因受生,能動色體。[SG1003025]
いまお前の身に起こる苦楽などの感じは、『虚明妄想』と呼ばれる第二種の妄想である。
汝今現前順益、違損、二現驅馳,名為虛明第二妄想。[SG1003026]
想陰
身体は念に操られる。しかし、身体と念は同じ性質のものではない。それでは、なぜ身体は念に従って動くのか?
由汝念慮使汝色身,身非念倫,汝身何因隨念所使種種取像? [SG1003027]
心を起こせば、身体はそれに応じて反応する。
心生形取,與念相應,[SG1003028]
目覚めている時に思いを起こし、眠っている時に夢を見る。
寤即想心,寐為諸夢。[SG1003029]
想念は種々の虚妄的な感情を引き起こすことができ、これは『融通妄想』と呼ばれる第三種の妄想である。
則汝想念搖動妄情,名為融通第三妄想。[SG1003030]
行陰
変化はとまることなく、密かに刻々と移り変わる。
化理不住,運運密移,[SG1003031]
爪や髪は成長し、血気は衰え、顔には皺が寄る。変化は昼夜続いているが、人はほとんど気づかない。
甲長髮生,氣銷容皺,日夜相代曾無覺悟。[SG1003032]
アーナンダよ! もし行陰がお前と無関係ならば、なぜ身体は変化するのか?
阿難! 此若非汝,云何體遷? [SG1003033]
もし行陰がお前自身であるならば、なぜお前はその変化に気づかないのか?
如必是真,汝何無覺? [SG1003034]
この絶え間なく刻々と起こる変化は、『幽隠妄想』と呼ばれる第四種の妄想である。
則汝諸行念念不停,名為幽隱第四妄想。[SG1003035]
識陰
また、この湛然で、動揺せず、恒常的な識陰は、見・聞・覚・知を離れたものではない。
又汝精明湛不搖處名恒常者,於身不出見、聞、覺、知。[SG1003036]
もし識陰が純粋な真実の存在であるならば、なぜ虚妄を蔵することがあるのか?
若實精真,不容習妄,[SG1003037]
たとえば、かつて一度見た奇妙なものを、長年忘れていても、再び見れば、記憶は鮮明に蘇り、失われることがない。これはなぜか?
何因汝等曾於昔年覩一奇物,經歷年歲憶忘俱無;於後忽然覆覩前異,記憶宛然曾不遺失! [SG1003038]
この湛然で、動揺しない識陰は刻々とさまざまな妄想に染まり、蔵している虚妄は計り知れない。
則此精了湛不搖中,念念受熏,有何籌算? [SG1003039]
聴きなさい! アーナンダよ! この湛然な識陰は真心ではない。
阿難當知,此湛非真,[SG1003040]
静かに見えるが、実は急流のように流れている。
如急流水,望如恬靜,[SG1003041]
その流れは見えないが、流れていないわけではない。
流急不見,非是無流。[SG1003042]
それが妄想の心でないならば、なぜ妄想を蔵することがあるのか?
若非想元,寧受想習? [SG1003043]
六根の働きを互いに転じることができない限り、妄想を断ち切ることはできない。
非汝六根互用合開,此之妄想無時得滅。[SG1003044]
見・聞・覚・知には、さまざまな微細な妄想が連なっている。
故汝現在見、聞、覺、知中串習幾,[SG1003045]
これは『罔象虚無転倒妄想』と呼ばれる第五種の極微な妄想である。
則湛了內罔象虛無,第五顛倒細微精想。[SG1003046]
アーナンダよ! 五陰はこの五種の妄想によって成り立つ。お前は五陰の境界を知りたいだろう?
阿難! 是五受陰,五妄想成。汝今欲知因界淺深,[SG1003047]
色と空は色陰の境界、
唯色與空,是色邊際;[SG1003048]
接触と分離は受陰の境界、
唯觸及離,是受邊際;[SG1003049]
記憶と忘却は想陰の境界、
唯記與忘,是想邊際;[SG1003050]
滅と生は行陰の境界、
唯滅與生,是行邊際;[SG1003051]
湛然の境地(第八識)に入ることと、とどまることは識陰の境界である(そもそも第八識も、その出入りも妄想である)。
湛入合湛,歸識邊際。[SG1003052]
五陰は識陰から重なり合って生起し、五陰の消滅は色陰から始まる。
此五陰元重疊生起,生因識有,滅從色除。[SG1003053]
悟りを開けば瞬間に迷いから覚めるが、久しく染まったさまざまな習性を一気に断ち切ることはできない。
理則頓悟,乘悟併銷;事非頓除,因次第盡。[SG1003054]
先ほど、私は華巾の例を挙げて説明した。なぜ再び問うのか?
我已示汝劫波巾結,何所不明再此詢問? [SG1003055]
お前はこの妄想を除き、真心を恢復する教えを、末法の世の修行者に伝えるべきだ。
汝應將此妄想根元心得開通,傳示將來末法之中諸修行者,[SG1003056]
彼らが虚妄を認識して深く厭い、涅槃を知って三界に愛著しないように導きなさい。」
令識虛妄深厭自生,知有涅槃不戀三界。[SG1003057]
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