【楞厳経】巻八
十種の地獄の因
種々の悪業は自ら作るものだが、報いを受ける場所は同じ業力によって形成される。
循造惡業,雖則自招,眾同分中兼有元地。[SG0805001]
アーナンダよ! すべては衆生が自ら招いた結果であり、
阿難! 此等皆是彼諸眾生自業所感,[SG0805002]
衆生は十種の因を作り、そして六種の交報(交わっている報い)を受けるのである。
造十習因,受六交報。[SG0805003]
アーナンダよ! 十種の因とは何だろうか?
云何十因? 阿難! [SG0805004]
一種目は、淫欲の心は交合の念を起こす。
一者、婬習交接,[SG0805005]
男女が交合をして互いの体を擦り合わせ、それで、猛火のような熱がその摩擦によって発生する。
發於相磨,研磨不休,如是故有大猛火光於中發動;[SG0805006]
両手を擦り合わせれば熱が発生するのと同じである。
如人以手自相磨觸,暖相現前。[SG0805007]
その結果、衆生は自身の罪業で焼かれ、鉄床地獄(焼けている鉄の寝台に臥す地獄)・銅柱地獄(焼けている銅の柱を抱く地獄)といった地獄の報いを受ける。
二習相然,故有鐵床、銅柱諸事。[SG0805008]
ゆえに、十方のすべての如来は淫欲を『欲火』と呼び、
是故十方一切如來,色目行婬同名欲火,[SG0805009]
菩薩は火の穴を避けるように淫欲を遠ざけるのである。
菩薩見欲如避火坑。[SG0805010]
二種目は、貪欲の心は吸取の念を起こす。
二者、貪習交計,發於相吸,[SG0805011]
吸い取る行為が飽きず、それで、寒気は積もり、堅い氷となる。
吸攬不止,如是故有積寒堅氷於中凍冽;[SG0805012]
口で風を吸い込めば冷たさを感じるのと同じである。
如人以口吸縮風氣,有冷觸生。[SG0805013]
その結果、衆生は自身の罪業に凍結され、頞哳吒地獄(寒氷地獄の一つ。寒すぎて『あたた』という悲鳴を発する)・臛臛婆地獄(寒氷地獄の一つ。寒すぎて舌がもつれて動かず、『ははば』という声しか出ない)・虎虎婆地獄(寒氷地獄の一つ。寒すぎて口が開かず、『ふふば』という声しか出ない)・青蓮・紅蓮・白蓮(寒氷地獄のうちの三つ。寒すぎて体は青蓮・紅蓮・白蓮の色になる)といった寒氷地獄の報いを受ける。
二習相凌,故有吒吒、波波、囉囉、青、赤、白蓮、寒氷等事。[SG0805014]
ゆえに、十方のすべての如来は貪欲を『貪水』と呼び、
是故十方一切如來,色目多求同名貪水。[SG0805015]
菩薩は瘴気の海を避けるように貪欲を遠ざけるのである。
菩薩見貪如避瘴海。[SG0805016]
三種目は、慢心は軽蔑の念を起こす。
三者、慢習交凌,發於相恃,[SG0805017]
他人を侮る心は洪水のように氾濫して溢れ出る。
馳流不息,如是故有騰逸奔波,積波為水;[SG0805018]
舌を動かし続ければ唾液が出るのと同じである。
如人口舌自相綿味,因而水發。[SG0805019]
その結果、衆生は自身の罪業の中に沈み、血河地獄・灰河地獄・熱砂地獄・毒海地獄・融銅灌吞地獄(焼き溶かした銅を口に灌ぐ地獄)といった地獄の報いを受ける。
二習相鼓,故有血河、灰河、熱沙、毒海、融銅灌吞諸事。[SG0805020]
ゆえに、十方のすべての如来は慢心を『愚癡の水を飲む』と呼び、
是故十方一切如來,色目我慢名飲癡水,[SG0805021]
菩薩は大波を避けるように慢心を遠ざけるのである。
菩薩見慢如避巨溺。[SG0805022]
四種目は、瞋恚の心は衝突の念を起こす。
四者、嗔習交衝,發於相忤,[SG0805023]
恨みを抱き、怒りに燃え、怒気は凝縮して金属になった。
忤結不息,心熱發火,鑄氣為金,[SG0805024]
それで、刀山・鉄棒・剣樹・剣輪・斧鉞・槍鋸の地獄が出現した。
如是故有刀山、鐵橛、劍樹、劍輪、斧鉞、鎗鋸;[SG0805025]
恨みを抱けば殺気立つのと同じである。
如人銜冤殺氣飛動。[SG0805026]
その結果、衆生は自身の罪業に討たれ、割く・切る・穿つ・削る・刺す・打つ・叩くといった刑罰を受ける。
二習相擊,故有宮割、斬、斫、剉、刺、搥、擊諸事。[SG0805027]
ゆえに、十方のすべての如来は瞋恚を『鋭い刀剣』と呼び、
是故十方一切如來,色目嗔恚名利刀劍,[SG0805028]
菩薩は斬殺を避けるように瞋恚を遠ざけるのである。
菩薩見嗔如避誅戮。[SG0805029]
五種目は、狡猾の心は詐欺の念を起こす。
五者、詐習交誘,發於相調,[SG0805030]
わなを仕掛けるために、縛る縄や木の檻など束縛の器具を作る。
引起不住,如是故有繩木、絞挍;[SG0805031]
水を田に引けば草木が自然に生えるのと同じである。
如水浸田,草木生長。[SG0805032]
その結果、衆生は自身の罪業に縛られ、手枷・足枷・首枷・鎖・鞭・杖などの刑具が地獄に出現した。
二習相延,故有杻械、枷鎖、鞭杖、撾棒諸事。[SG0805033]
ゆえに、十方のすべての如来は狡猾の心を『詐欺師』と呼び、
是故十方一切如來,色目姦偽同名讒賊,[SG0805034]
菩薩は山犬や狼を恐れるように狡猾の心を遠ざけるのである。
菩薩見詐如畏犲狼。[SG0805035]
六種目は、偽りの心は欺瞞の念を起こす。
六者、誑習交欺,發於相誷,[SG0805036]
嘘をついて人目をごまかし、それで、塵土・大小便・汚物などの不浄が出現した。
誣誷不止,飛心造姦,如是故有塵土、屎尿、穢污不淨;[SG0805037]
砂塵暴が視界を遮るのと同じである。
如塵隨風,各無所見。[SG0805038]
その結果、衆生は自身の罪業に害され、黒砂地獄(黒い砂嵐が起きる地獄)・屎尿地獄(屎尿に溺れる地獄)・飛墜地獄(高い所から落とされて死ぬ地獄)といった地獄の報いを受ける。
二習相加,故有沒溺、騰擲、飛墜、漂淪諸事。[SG0805039]
ゆえに、十方のすべての如来は偽りの心を『劫殺(財物を奪うために人を殺害すること)』と呼び、
是故十方一切如來,色目欺誑同名劫殺,[SG0805040]
菩薩は偽りの心を、蛇や毒虫を踏むように警戒するのである。
菩薩見誑如踐蛇虺。[SG0805041]
七種目は、恨みの心は怨恨の念を起こす。
七者、怨習交嫌,發于銜恨,[SG0805042]
それで、石や砕石を投げ付け、箱や檻車(檻が装備された車)に閉じ込め、甕に入れて焼き、嚢に入れて投げ落とすなどの刑が出現した。
如是故有飛石、投礰、匣貯、車檻、甕盛、囊撲;[SG0805043]
暴虐な者は常に悪意を抱くのと同じである。
如陰毒人,懷抱畜惡。[SG0805044]
その結果、衆生は自身の罪業に食われ、投擲地獄(石を投げられる地獄)・擒捉地獄(猛獣に狩られて殺される地獄)・撃射地獄(射殺される地獄)・拋撮地獄(差し上げられて地に投げられる地獄)といった地獄の報いを受ける。
二習相吞,故有投擲、擒捉、擊射、𢱍撮諸事。[SG0805045]
ゆえに、十方のすべての如来は恨みを『加害の鬼』と呼び、
是故十方一切如來,色目怨家名違害鬼,[SG0805046]
菩薩は毒酒を避けるように恨みを遠ざけるのである。
菩薩見怨如飲鴆酒。[SG0805047]
八種目は、有身見(五陰を我と認める見解)・戒禁取見(不正な禁戒を信じる見解)などの邪見を信じて真理を否定し、
八者、見習交明,如薩迦耶見、戒禁取、邪悟諸業,發於違拒,出生相返;[SG0805048]
それで、地獄には証文を持つ判事や官吏が出現した。
如是故有王使主吏、證執文籍;[SG0805049]
道を行けば必ず人に出会うのと同じである。
如行路人,來往相見。[SG0805050]
その結果、衆生は自身の罪業に裁かれ、証文を持つ善悪童子は地獄に出現し、衆生を審問したり、拷問したり、尋問したりし、罪を引き出したり、検察したり、抉り出したり、照らし出したりする。
二習相交,故有勘問、權詐、考訊、推鞫、察訪、披究、照明,善惡童子手執文簿辭辯諸事。[SG0805051]
ゆえに、十方のすべての如来は邪見を『見解の落とし穴』と呼び、
是故十方一切如來,色目惡見同名見坑,[SG0805052]
菩薩は毒の淵を避けるように虚妄・不正な見解を遠ざけるのである。
菩薩見諸虛妄遍執,如入毒壑。[SG0805053]
九種目は、陥害(人を陥れて損なうこと)の心は誹謗中傷の念を起こす。
九者、枉習交加,發於誣謗,[SG0805054]
それで、合山地獄(山に挟まれる地獄)・合石地獄(巨石に挟まれる地獄)・碾磑地獄(輪で轢かれ、やすりで研磨される地獄)・耕磨地獄(舌が鍬で耕され、石臼で碾かれる地獄)などの地獄が出現した。
如是故有合山、合石、碾磑、耕磨;[SG0805055]
讒言する者が善人を陥れるのと同じである。
如讒賊人,逼枉良善。[SG0805056]
その結果、衆生は自身の罪業に迫害され、押し付ける・揉む・叩く・絞る・鉤で掛けるといった刑罰を受ける。
二習相排,故有押捺、搥按、蹙漉、衡度諸事。[SG0805057]
ゆえに、十方のすべての如来は迫害の心を『讒言する虎』と呼び、
是故十方一切如來,色目怨謗同名讒虎,[SG0805058]
菩薩は落雷を避けるように陥害の心を遠ざけるのである。
菩薩見枉如遭霹靂。[SG0805059]
十種目は、罪を隠す心は論争の念を起こす。
十者、訟習交諠,發於藏覆,[SG0805060]
それで、地獄には審判の制度が出現した。
如是故有鑒見、照燭;[SG0805061]
太陽の下では影を隠せないのと同じである。
如於日中不能藏影,[SG0805062]
証人や業鏡(罪を映し出す鏡)や火の珠(心の善悪を照らし出す珠)が出現して罪人の罪を暴き出す。
故有惡友、業鏡、火珠、披露宿業、對驗諸事。[SG0805063]
ゆえに、十方のすべての如来は覆い隠す心を『闇の賊』と呼び、
是故十方一切如來,色目覆藏同名陰賊,[SG0805064]
菩薩は罪を隠す行為を、高山を背負って大海を渡るような難事だと思うのである。
菩薩觀覆,如戴高山,履於巨海。[SG0805065]
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