【楞厳経】巻七
衆生転倒と世界転倒
アーナンダは席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼して言いました。
阿難即從座起,頂禮佛足而白佛言:[SG0704001]
「私は愚かで、多聞を好むばかりで、煩悩を断ち切ろうと求めておりませんでした。
「我輩愚鈍,好為多聞,於諸漏心,未求出離;[SG0704002]
いま、世尊様の慈悲深い教えを頂戴し、正しく修行の道を知り、身心が爽やかになり、大きな利益を獲得いたしました。
蒙佛慈誨,得正熏修,身心快然,獲大饒益。[SG0704003]
世尊様。三摩地の境地から涅槃に至るまで、最初の『乾慧地』とはどのような境地でしょうか?
世尊! 如是修證佛三摩提,未到涅槃,云何名為乾慧之地? [SG0704004]
次の『四十四心(四十四の修行の段階。十信・十住・十行・十廻向・四加行)』を、どのように修めるのでしょうか?
四十四心至何漸次、得修行目? [SG0704005]
どんな境地に達すれば、『菩薩の十地』に登ったと言えるのでしょうか?
詣何方所,名入地中? [SG0704006]
『等覚菩薩』の境地とは、いかなる境地でしょうか? どうかお教えください。」
云何名為等覺菩薩?」[SG0704007]
言い終えると、アーナンダはお釈迦様に五体投地をし、会衆はお釈迦様を仰ぎ見て、一心に如来の説法を待ちました。
作是語已,五體投地,大眾一心,佇佛慈音,瞪矒瞻仰。[SG0704008]
その時、お釈迦様はアーナンダを讃えて言いました。
爾時,世尊讚阿難言:[SG0704009]
「これはいい質問だ! お前は大衆、そして末法の世において、大乗を求め、三摩地を修めるすべての衆生のために、凡人から大涅槃に至る無上の正しい修行の道を問うた。
「善哉! 善哉! 汝等乃能普為大眾,及諸末世一切眾生修三摩提求大乘者,從於凡夫,終大涅槃,懸示無上正修行路。[SG0704010]
よく聴きなさい! いま、皆に説明してやろう。」
汝今諦聽! 當為汝說。」[SG0704011]
アーナンダと大衆は合掌し、心を清め、静かに教えを受けました。
阿難、大眾,合掌、刳心,默然受教。[SG0704012]
お釈迦様:
佛言:[SG0704013]
「聴きなさい。アーナンダよ! 真性は妙明で、円満で、すべての名と相を離れている。
「阿難當知! 妙性圓明離諸名相,[SG0704014]
本来、世界も衆生も存在しない。妄想から『生』という現象が出現し、『生』が出現するゆえに『滅』も出現する。
本來無有世界、眾生。因妄有生,因生有滅,[SG0704015]
生滅は虚妄であり、虚妄が完全に消滅した状態が『真』である。これこそが、如来の無上菩提と大涅槃である。
生滅名妄,滅妄名真;是稱如來無上菩提及大涅槃二轉依號。[SG0704016]
アーナンダよ! お前がいま、如来の大涅槃の境地を求め、真の三摩地を修めようとするならば、まず衆生と世界が出現する二つの転倒の因を理解しなければならない。
阿難! 汝今欲修真三摩地,直詣如來大涅槃者,先當識此眾生、世界二顛倒因。[SG0704017]
転倒なき状態、それこそが如来の真の三摩地なのである。
顛倒不生,斯則如來真三摩地。[SG0704018]
アーナンダよ! 『衆生転倒』とは何を指すのか?
阿難! 云何名為眾生顛倒? [SG0704019]
アーナンダよ! 真心は本来清明で、円満である。
阿難! 由性明心,性明圓故,[SG0704020]
無明を起こして真心に清明の印象を付け加え、そこから、見という虚妄の働きが生起した。
因明發性,性妄見生,[SG0704021]
こうして、絶対の『無』から虚妄の『有』が出現した。
從畢竟無成究竟有。[SG0704022]
そもそも『有(あるという現象)』・『所有(あるもの)』・『非因(因らないこと)』・『所因(因ること)』・『住(とどまるという現象)』・『所住(とどまるもの)』の相は根本がなく、
此有所有,非因所因;住所住相,了無根本。[SG0704023]
この本来『無住』の真心に、衆生と世界が築かれてしまった。
本此無住,建立世界及諸眾生。[SG0704024]
本来の円明の真性を見失い、さまざまな虚妄が次々と生じる。
迷本圓明,是生虛妄,[SG0704025]
虚妄は本来存在せず、依存するものがない。
妄性無體,非有所依。[SG0704026]
真性を恢復しようとする心さえ、すでに真心から離れてしまっている。
將欲復真,欲真已非真真如性;[SG0704027]
虚妄の心で真性を求めれば、得られるのは虚妄だけである。
非真求復,宛成非相。[SG0704028]
こうして『生』・『住』・『心』・『法』という虚妄の現象は次々と生起し、互いを増強し、その無明の力が積み重なって業力となった。
非生、非住,非心、非法,展轉發生,生力發明,熏以成業,[SG0704029]
それらの業力は互いに引き合い、それによって『相滅』・『相生』の現象が起こる。
同業相感,因有感業,相滅、相生,[SG0704030]
これは『衆生転倒』ということだ。
由是故有眾生顛倒。[SG0704031]
アーナンダよ! 『世界転倒』とは、何を指すのか?
阿難! 云何名為世界顛倒? [SG0704032]
『有』と『所有』は生起するゆえ、界(空間)は成り立った。
是有所有,分段妄生,因此界立。[SG0704033]
『非因』・『所因』・『住』・『所住』は絶えず移り変わっているゆえ、世(時間)は成り立った。
非因所因,無住所住,遷流不住,因此世成。[SG0704034]
この三世と四方が互いに交わり、これらの変化から十二類の衆生が現れた。
三世、四方和合相涉,變化眾生成十二類。[SG0704035]
この世界においては、動きが起こるゆえに声の妄想を起こし、
是故世界,因動有聲,[SG0704036]
声の妄想から色の妄想を起こし、
因聲有色,[SG0704037]
色の妄想から匂いの妄想を起こし、
因色有香,[SG0704038]
匂いの妄想から触の妄想を起こし、
因香有觸,[SG0704039]
触の妄想から味の妄想を起こし、
因觸有味,[SG0704040]
味の妄想から法塵を起こす。
因味知法。[SG0704041]
こうして六種の妄想を起こし、種々の業を作り、その業によって十二類の衆生が出現した。
六亂妄想成業性故,十二區分由此輪轉。[SG0704042]
それゆえ、声・色・香・味・触が生起したことで十二類の衆生は出現し、世界はこれらの転倒の相の循環から成り立っている。
是故世間聲、香、味、觸,窮十二變為一旋復。乘此輪轉顛倒相故,是有世界。[SG0704043]
アーナンダよ!十二類の衆生とは、卵生・胎生・湿生・化生・有色・無色・有想・無想・非有色・非無色・非有想・非無想である。」
卵生、胎生、濕生、化生,有色、無色,有想、無想,若非有色、若非無色,若非有想、若非無想。阿難! [SG0704044]
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