【楞厳経】巻二
是非の区別
その時、会衆の中で、無学の境地に達していない人々は、お釈迦様の言葉を聴き、茫然とし、意味を理解できませんでした。彼らは驚き慌て、これまで信じていた観念が崩れてしまいました。
於是大眾非無學者,聞佛此言,茫然不知是義終始,一時惶悚,失其所守。[SG0205001]
お釈迦様は皆の不安を感じ取り、憐れみを起こしてアーナンダと会衆を慰めて言いました。
如來知其魂慮變慴,心生憐愍,安慰阿難及諸大眾:[SG0205002]
「善人たちよ! 無上の法王は実相のままを語り、言葉が真実であり、嘘ではない。
「諸善男子! 無上法王是真實語! 如所如說不誑不妄,[SG0205003]
それは、マッカリ外道の説く四種の不死(亦変亦恒・亦生亦滅・亦有亦無・亦増亦減)のような詭弁ではない。
非末伽梨四種不死矯亂論議。[SG0205004]
皆! よく考えなさい。慌てることはない。」
汝諦思惟,無忝哀慕。」[SG0205005]
その時、会衆の中にいた文殊菩薩は四部衆を憐れみ、席から立ち上がり、お釈迦様に頂礼し、恭しく合掌して言いました。
是時,文殊師利法王子愍諸四眾,在大眾中即從座起,頂禮佛足,合掌恭敬而白佛言:[SG0205006]
「世尊様。ここに集った大衆は世尊様のお言葉を聴いて、色や虚空などが見であるかどうか、理解できません。
「世尊! 此諸大眾,不悟如來發明二種精見色空、是非是義。[SG0205007]
世尊様。もし色や虚空などが見であるならば、見を指し示すことはできるはずです。
世尊! 若此前緣色空等象,若是見者,應有所指;[SG0205008]
もし見でなければ、それらを見ることはできないはずです。
若非見者,應無所矚。[SG0205009]
いま皆はこの矛盾を理解できないから驚き慌てています。決して、皆の善根(諸善を生み出す根本となるもの)が浅いわけではありません。
而今不知是義所歸,故有驚怖,非是疇昔善根輕尠。[SG0205010]
世尊様。どうかご慈悲を!
唯願如來大慈,[SG0205011]
見と万物はいかなる関係にあるのでしょうか?
發明此諸物象與此見精元是何物,[SG0205012]
どうして是(見である)の概念も非(見ではない)の概念も、この場合に適用されないのでしょうか? どうかお説きください。」
於其中間無是非是。」[SG0205013]
お釈迦様は文殊菩薩と会衆に告げました。
佛告文殊及諸大眾:[SG0205014]
「十方の如来や大菩薩たちが自性三摩地(元の不動の本性に立ち返る禅定)に入った時、見も、見の対象も、心に浮かぶ相も、すべて虚空に現れる幻影のように本来存在しないと知っている。
「十方如來及大菩薩,於其自住三摩地中,見與見緣并所想相,如虛空花本無所有;[SG0205015]
見及び見の対象はこの妙浄(妙明と清浄)な真心に現れる幻影にすぎない。
此見及緣,元是菩提妙淨明體,[SG0205016]
なぜその中に是と非の概念を付けることができると思うのか?
云何於中有是非是? [SG0205017]
文殊よ。答えよ。お前以外に、別の『是文殊』が存在するのか? 別の『非文殊』が存在するのか?」
文殊! 吾今問汝,如汝文殊,更有文殊是文殊者? 為無文殊?」[SG0205018]
文殊菩薩:
[SG0205019]
「いいえ。世尊様。
「如是,世尊! [SG0205020]
私は本当の文殊であり、別の『是文殊』は存在しません。なぜなら、
我真文殊,無是文殊。何以故? [SG0205021]
もし『是文殊』が存在するならば、『非文殊』も存在します。しかし、文殊は一人しかございません。
若有是者,則二文殊。然我今日非無文殊,[SG0205022]
それゆえ、ここには、是非の概念が適用されないのです。」
於中實無是非二相。」[SG0205023]
お釈迦様:
佛言:[SG0205024]
「この妙明な見と塵境も同じことだ。
「此見妙明與諸空塵,亦復如是。[SG0205025]
すべてはこの妙明な真心の変化であり(海と波のような関係)、衆生は誤って皆を色や空や見に区分する。
本是妙明無上菩提淨圓真心,妄為色空及與聞見,[SG0205026]
第二の月の例と同じように、どちらが『是月』か、どちらが『非月』か?
如第二月,誰為是月? 又誰非月? [SG0205027]
文殊よ。ただ一つの月があり、『是月』や『非月』という概念は適用されない。
文殊! 但一月真,中間自無是月、非月。[SG0205028]
同じように、見も塵境も、すべてこの妙明な真心から起こった幻影であり、『是非』の概念は適用されない。
是以汝今觀見與塵種種發明,名為妄想,不能於中出是非是。由是精真妙覺明性,[SG0205029]
だから、何を指し示しても、それは見とも非見とも言えない。」
故能令汝出指非指!」[SG0205030]
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