善徳長者

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 ぜんとくちょうしゃ


そこで、おシャ様はぜんとくちょうしゃに言いました。

佛告長者子善德:[VK0404001]

「お前がゆいきついに行ってきなさい。」

「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0404002]


ぜんとくはおシャ様に言いました。

善德白佛言:[VK0404003]

「申し訳ございません。そん様。私はその御方をうことができかねます。なぜかというと、

「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0404004]

かつて、私は父のていたくで七日間の大会をかいさいし、

憶念我昔自於父舍設大施會,[VK0404005]

すべてのしゃもんモン・諸どう

供養一切沙門、婆羅門,及諸外道、[VK0404006]

貧しい人々・卑しい人々・孤独な人々・乞食をよういたしました。

貧窮、下賤、孤獨、乞人。期滿七日,[VK0404007]


その時、ゆいきつ様が大会にお見えになり、私に話しかけられました。

時維摩詰來入會中,謂我言:[VK0404008]

ちょうしゃさんよ! このような大会ではなく、

『長者子!夫大施會不當如汝所設,[VK0404009]

ほう(仏法を施すこと。つまりしゅじょうさいする)の会をかいさいすべきだ。

當為法施之會,[VK0404010]

なぜこの大会はざい(財物を施すこと)の会になったのだろうか?』

何用是財施會為?』[VK0404011]


私はゆいきつ様に伺いました。

我言:[VK0404012]

様! ほうの会とはいったいどんなものでしょうか?』

『居士!何謂法施之會?』[VK0404013]


ゆいきつ様はお答えになりました。

答曰:[VK0404014]

『いつでも平等にすべてのしゅじょうようする、

『法施會者,無前無後,一時供養一切眾生,[VK0404015]

これがほうの会の意味なのだ。』

是名法施之會。』[VK0404016]


私は伺いました。

曰:[VK0404017]

『これはいったいどういうことでしょうか?』

『何謂也?』[VK0404018]


    (大乗の心を起こし、修行して衆生を済度する)

      ゆいきつ

    ( しゃ

『それは、だいしんによってしんあいの心)を起こす。

『謂以菩提,起於慈心;[VK0404019]

しゅじょうを救うことによってだいの心(どうじょうしん)を起こす。

以救眾生,起大悲心;[VK0404020]

しょうほうを学ぶことによってしん(喜び)を起こす。

以持正法,起於喜心;[VK0404021]

を培うことによってしゃしんあいぞうを捨てる心)を起こす。

以攝智慧,行於捨心;[VK0404022]

    (六みつかいにんにくしょうじんぜんじょう

けんどん(けちで欲深いこと)の心を除くことによってみつを修める。

以攝慳貪,起檀波羅蜜;[VK0404023]

かいりつを守ることによってかいみつを修める。

以化犯戒,起尸羅波羅蜜;[VK0404024]

を悟ることによってにんにくみつを修める。

以無我法,起羼提波羅蜜;[VK0404025]

身・心のしゅうちゃくを断ち切ることによってしょうじんみつを修める。

以離身心相,起毘梨耶波羅蜜;[VK0404026]

じゃくめつの相を悟ることによってぜんじょうみつを修める。

以菩提相,起禪波羅蜜;[VK0404027]

いっさい智を悟ることによってはんにゃみつを修める。

以一切智,起般若波羅蜜。[VK0404028]

    (三だつの門:空・そうさく

空のきょうに入ったまましゅじょうきょうする。

教化眾生,而起於空;[VK0404029]

そうきょうに至ったが、法を捨てぬ。

不捨有為法,而起無相;[VK0404030]

さくきょうに至ったが、しゅじょうさいするために転生する。

示現受生,而起無作;[VK0404031]


ほう便べんの力を利用して仏法をしゅする。

護持正法,起方便力;[VK0404032]

しょうほうを利用してしゅじょうさいする。

以度眾生,起四攝法;[VK0404033]

すべてを敬うことによってじょまんほうごうまんの心を除く修行方法)を修める。

以敬事一切,起除慢法;[VK0404034]

身・命・財物を利用して三けんの法(けんしんの法:修行によってほっしんを得ること・けんめいの法:修行によってしょうを超えること・けんざいの法:によってふくとくを得ること)を修める。

於身命財,起三堅法;[VK0404035]

六念(仏・法・僧・かいりつ・天界を思うこと)によって思念法(心の修行方法)を修める。

於六念中,起思念法;[VK0404036]

ろくけいそうだんにおいて身・口・意・戒・見・利を統一しているゆえ、紛争を起こさない)によってじきしんを起こす。

於六和敬,起質直心;[VK0404037]

ぜんほうを正しく行うことによってしょうみょうしょうじょうで正しい生活)を起こす。

正行善法,起於淨命;[VK0404038]

心がしょうじょうでうれしくて、これによって賢聖に親しんで近づく心を起こす。

心淨歡喜,起近賢聖;[VK0404039]

悪人を憎まないことによって悪人をさいする心を起こす。

不憎惡人,起調伏心;[VK0404040]

しゅっすることによってしんしんを起こす。

以出家法,起於深心;[VK0404041]

もんによってにょせつぎょうにょらいのおっしゃるとおりに行うこと)を起こす。

以如說行,起於多聞;[VK0404042]

そうほう(争いを避ける方法)に則って暇を過ごす。

以無諍法,起空閑處;[VK0404043]

にょらいを得るようにぜんを修める。

趣向佛慧,起於宴坐;[VK0404044]

しゅじょうそくばくから解放するように修行をする。

解眾生縛,起修行地;[VK0404045]

そうごうしょうじょうな仏土を得るようにふくとくを積む。

以具相好,及淨佛土,起福德業;[VK0404046]

によってすべてのしゅじょうの思いを知り、それに応じて皆に説法する。

知一切眾生心念,如應說法,起於智業;[VK0404047]

いっさいの法を知り、取ることも捨てることもせず、いっそうきょうに入り、これによってにょらいを起こす。

知一切法,不取不捨,入一相門,起於慧業;[VK0404048]

いっさいぼんのうしょうがいぜんを断ち切り、これによってすべての善を起こす。

斷一切煩惱、一切障礙、一切不善法,起一切善業;[VK0404049]

すべてのぜんほうを獲得し、そして利用して仏法を伝え広めるのだ。

以得一切智慧、一切善法,起於一切助佛道法。[VK0404050]


ぜんりょうな男よ! これがほうの会なのだ。

如是,善男子!是為法施之會。[VK0404051]

もしさつがそのようにほうの会を行えば、彼は大慈善家であり、

若菩薩住是法施會者,為大施主,[VK0404052]

また、世間のふくふくとくが生長する畑)なのだ。』

亦為一切世間福田。』[VK0404053]


そん様! ゆいきつ様がこのごきょうをお説きになった時、

世尊!維摩詰說是法時,[VK0404054]

モンたちの中の二百人は皆、のくさんみゃくさんだいしんを発しました。

婆羅門眾中二百人,皆發阿耨多羅三藐三菩提心。[VK0404055]

あの時、私は心がしょうじょうになり、であるとさんたんいたしました。

我時心得清淨,歎未曾有![VK0404056]

私はへいふくし、額をゆいきつ様のお足につけて拝み、

稽首禮維摩詰足,[VK0404057]

すぐ身から百千金以上の価値のあるようらくそうしん)をはずし、ゆいきつ様にさしあげました。

即解瓔珞價直百千以上之,[VK0404058]

しかし、ゆいきつ様は拒絶なさりました。

不肯取。[VK0404059]


私は申し上げました。

我言:[VK0404060]

様よ! どうかご笑納ください。

『居士!願必納受,[VK0404061]

ご自由に別の人にお贈りになってもいいですから。』

隨意所與。』[VK0404062]


それで、ゆいきつ様はようらくを受け取って、二つにお分けになり、

維摩詰乃受瓔珞,分作二分,[VK0404063]

一つを大会の中でもっとも卑しい乞食にお施しになり、

持一分施此會中一最下乞人,[VK0404064]

別の一つをなんしょうにょらい様にお奉りになりました。

持一分奉彼難勝如來。[VK0404065]

大会中のすべての人々は皆、こうみょう国土のなんしょうにょらい様が見えました。

一切眾會皆見光明國土難勝如來,[VK0404066]

ようらくにょらい様の上空中で四本の柱を持つほうだいになり、

又見珠瓔在彼佛上變成四柱寶臺,[VK0404067]

そのほうだいの四面は厳かに飾られ、それがはっきりと見えました。

四面嚴飾,不相障蔽。[VK0404068]


ゆいきつ様はそのしんぺんしんつうりきへん)をお現しになって皆におっしゃいました。

時維摩詰現神變已,作是言:[VK0404069]

『もししゅをする人)が平等の心を持って、りょうどくが備わっているにょらい様をようするように、もっとも卑しい乞食にし、

『若施主等心施一最下乞人,猶如如來福田之相,[VK0404070]

対象をべつせず、

無所分別,[VK0404071]

皆に対して同等な大を持ち、

等于大悲,[VK0404072]

の報いを求めなければ、

不求果報,[VK0404073]

これはけつほうと呼ばれるのだ。』

是則名曰具足法施。』[VK0404074]


その時、ヴァイシャーリー大都市でもっとも卑しい乞食は、

城中一最下乞人,[VK0404075]

ゆいきつ様のしんつうりきを見て、ごきょうを聴いて、

見是神力,聞其所說,[VK0404076]

のくさんみゃくさんだいしんを発しました。

皆發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0404077]

それゆえ、私はその御方をうことができかねます。」

故我不任詣彼問疾。」[VK0404078]


このようにして、さつたちはそれぞれおシャ様に自分のことを語り、

如是諸菩薩各各向佛說其本緣,[VK0404079]

ゆいきつの言葉を述べ、皆もこう言いました。

稱述維摩詰所言,皆曰:[VK0404080]

「申し訳ございません。その御方をうことができかねます。」

「不任詣彼問疾!」[VK0404081]



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