持世菩薩
【維摩経】菩薩品
持世菩薩
そこで、お釈迦様は持世菩薩に言いました。
佛告持世菩薩:[VK0403001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0403002]
持世菩薩はお釈迦様に言いました。
持世白佛言:[VK0403003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0403004]
かつて、私はある静室(静かな部屋)に住んでおりました。
憶念我昔,住於靜室,[VK0403005]
あの日、魔王波洵が姿を帝釈天に変えて、一万二千人の天女を連れて私のところにやってきました。
時魔波旬,從萬二千天女,狀如帝釋,[VK0403006]
天女たちは歌ったり、楽器を演奏したりしました。
鼓樂絃歌,[VK0403007]
そして、皆は平伏して額を私の足につけて拝み、
來詣我所。與其眷屬,稽首我足,[VK0403008]
その後、恭しく合掌してそばに立っていました。
合掌恭敬,於一面立。[VK0403009]
彼が帝釈天だと存じて、私は申しました。
我意謂是帝釋,而語之言:[VK0403010]
『いらっしゃい、カウシカ(憍尸迦。帝釈天の人間時代における名前)!
『善來憍尸迦![VK0403011]
お前はたくさんの福を持っていますが、贅沢三昧に暮らしているべきではないのです。
雖福應有,不當自恣。[VK0403012]
五欲が無常であると理解し、善の境地を追求し、
當觀五欲無常,以求善本,[VK0403013]
身・命・財産を利用して堅固(不壊)の法(法身・慧命・法財)を修めるべきです。』
於身命財而修堅法。』[VK0403014]
波洵は私に言いました。
即語我言:[VK0403015]
『正士(修行者の異称)よ!
『正士![VK0403016]
こちらの一万二千の天女をお受け入れください。
受是萬二千天女,[VK0403017]
皆に掃除や洗濯などの家事を割り当ててもいいのです。』
可備掃灑。』[VK0403018]
私は申しました。
我言:[VK0403019]
『カウシカよ! 仏教の規定に背くものを沙門である私に与えてはなりません。
『憍尸迦!無以此非法之物要我沙門釋子,[VK0403020]
これは私にとって適当ではないからです。』
此非我宜。』[VK0403021]
まだ言い終わらないうちに、
所言未訖,[VK0403022]
維摩詰様がお見えになり、私におっしゃいました。
時維摩詰來謂我言:[VK0403023]
『まったく! この人は帝釈天ではなく、
『非帝釋也,[VK0403024]
お前の修行を邪魔するためにここにやってきた魔王なのだ。』
是為魔來嬈固汝耳!』[VK0403025]
維摩詰様は魔王におっしゃいました。
即語魔言:[VK0403026]
『天女たちを私に譲ってもよい。私には何も問題ない!』
『是諸女等,可以與我,如我應受。』[VK0403027]
魔王は驚いて、
魔即驚懼,念:[VK0403028]
『もしかして、維摩詰様は私のことを怒っただろうか』と思いました。
『維摩詰將無惱我?』[VK0403029]
魔王は隠身の術を使って逃げるようにしましたが、姿を隠すことはできなかったのです。
欲隱形去,而不能隱;[VK0403030]
たとえ全力を尽くしても、逃げ去ることはできなかったのです(結界に閉じ込められていた)。
盡其神力,亦不得去。[VK0403031]
その時、空中から声が聞こえました。
即聞空中聲曰:[VK0403032]
『波洵! 天女たちを維摩詰に譲りなさい!
『波旬!以女與之,[VK0403033]
そうすれば離れることができるのだ。』
乃可得去。』[VK0403034]
魔王は維摩詰様を恐れていましたので、不本意ながら天女たちを維摩詰様に譲りました。
魔以畏故,俛仰而與。[VK0403035]
その時、維摩詰様は天女たちにおっしゃいました。
爾時維摩詰語諸女言:[VK0403036]
『魔王はあなたたちを私に譲ったのだ。
『魔以汝等與我,[VK0403037]
皆は阿耨多羅三藐三菩提心を発すべきだ。』
今汝皆當發阿耨多羅三藐三菩提心。』[VK0403038]
そして、維摩詰様は天女たち皆に説法なさり、
即隨所應而為說法,[VK0403039]
皆に道心を発させ、続けて皆におっしゃいました。
令發道意。復言:[VK0403040]
『あなたたちはすでに道心を発した。
『汝等已發道意,[VK0403041]
法楽(仏法の醍醐味)を味わうことができ、
有法樂可以自娛,[VK0403042]
また五欲に夢中になるべきではないのだ。』
不應復樂五欲樂也。』[VK0403043]
天女は維摩詰様に問いました。
天女即問:[VK0403044]
『法楽を味わうとはいったいどんなことでしょうか?』
『何謂法樂?』[VK0403045]
維摩詰様はお答えになった。
答言:[VK0403046]
『常に如来様を信じること、
『樂常信佛,[VK0403047]
如来様のご教示を聴くこと、
樂欲聽法,[VK0403048]
四部の衆を供養すること、
樂供養眾,[VK0403049]
五欲から離れること、
樂離五欲;[VK0403050]
五受陰を盗賊と見なすこと、
樂觀五陰如怨賊,[VK0403051]
四大元素(地・水・火・風。身の構成要素)を毒蛇と見なすこと、
樂觀四大如毒蛇,[VK0403052]
六塵が廃村に入ったと思うこと、
樂觀內入如空聚;[VK0403053]
道心を守ること、
樂隨護道意,[VK0403054]
常に衆生を益すること、
樂饒益眾生,[VK0403055]
先生を敬ったり、供養したりすること、
樂敬養師;[VK0403056]
広く布施を行うこと、
樂廣行施,[VK0403057]
動揺せずに戒律を守ること、
樂堅持戒,[VK0403058]
忍辱をしたり、優しくしたりすること、
樂忍辱柔和,[VK0403059]
努めてさまざまな善の特質を修めること、
樂勤集善根,[VK0403060]
心を乱さないこと、禅定に入ること、
樂禪定不亂,[VK0403061]
邪見を離れたり、智慧を高めたりすること、
樂離垢明慧;[VK0403062]
菩提心を広めること、
樂廣菩提心,[VK0403063]
さまざまな魔を降伏させること、
樂降伏眾魔,[VK0403064]
さまざまな煩悩を断ち切ること、
樂斷諸煩惱,[VK0403065]
仏土を清浄にすること、
樂淨佛國土,[VK0403066]
相好になるようにさまざまな功徳を修めること、
樂成就相好故,修諸功德;[VK0403067]
道場を荘厳にすること、
樂嚴道場;[VK0403068]
恐れずに奥深い仏法を聴くこと、
樂聞深法不畏;[VK0403069]
三解脱門(三種の解脱に至る修行。空解脱・無相解脱・無願解脱)を修めること、
樂三脫門,[VK0403070]
非時(修行がまだ円満になっていない時、途中で涅槃の境地に入ること)を離れること、
不樂非時;[VK0403071]
同門に親しみ近づくこと、
樂近同學,[VK0403072]
非同門に対しても、心にわだかまりを持たないこと、
樂於非同學中,心無恚礙;[VK0403073]
悪知識(人々を邪道に誘い導く人)を正道に導くこと、
樂將護惡知識,[VK0403074]
善知識に親しんで近づくこと、
樂親近善知識;[VK0403075]
心を清浄にすること、
樂心喜清淨,[VK0403076]
無量の道品の法(涅槃の境地に至る修行方法)を修めることなど、
樂修無量道品之法。[VK0403077]
菩薩はこれらのことから法楽を味わうのだ。』
是為菩薩法樂。』[VK0403078]
その時、波洵は天女たちに言いました。
於是波旬告諸女言:[VK0403079]
『皆、一緒に天宮に帰るぞ。』
『我欲與汝俱還天宮。』[VK0403080]
天女たちは答えました。
諸女言:[VK0403081]
『お前は私たちを維摩詰様に譲りました。
『以我等與此居士,[VK0403082]
居士様が法楽のことを教えてくださって、私たちはとてもうれしいです。
有法樂,我等甚樂,[VK0403083]
私たちはもう五欲に夢中になりません。』
不復樂五欲樂也。』[VK0403084]
魔王は維摩詰様に言いました。
魔言:[VK0403085]
『居士様は天女たちを捨ててもよいのではないでしょうか?
『居士可捨此女?[VK0403086]
自分のすべてを他人に施す、それが菩薩というものでしょう。』
一切所有施於彼者,是為菩薩。』[VK0403087]
維摩詰様はおっしゃいました。
維摩詰言:[VK0403088]
『かまわない! 天女たちを連れて帰りなさい。
『我已捨矣!汝便將去,[VK0403089]
すべての衆生が仏法を聴くことができますように。』
令一切眾生得法願具足。』[VK0403090]
天女たちは維摩詰様に問いました。
於是諸女問維摩詰:[VK0403091]
『居士様! 私たちはこれからどのように魔宮で暮らせばよいのでしょうか?』
『我等云何,止於魔宮?』[VK0403092]
維摩詰様はお答えになりました。
維摩詰言:[VK0403093]
『皆さん! 無尽灯という法門がある。それを学んだほうがいいのだ。
『諸姊!有法門名無盡燈,汝等當學。[VK0403094]
無尽灯とは、例えば、一の灯(油灯・燭台)で百千の灯を灯すことができ、
無盡燈者,譬如一燈,燃百千燈,[VK0403095]
あちらこちらの暗闇も明るくなり、それで、明かりが尽きないということだ。
冥者皆明,明終不盡。[VK0403096]
皆さん! まさにそのように、一人の菩薩が百千の衆生を教え導き、
如是,諸姊!夫一菩薩開導百千眾生,[VK0403097]
皆に阿耨多羅三藐三菩提心を発させ、
令發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0403098]
自分の道心は尽きず、
於其道意亦不滅盡,[VK0403099]
さらに教化が進むにつれて、世間の善はますます増えていく。
隨所說法,而自增益一切善法,[VK0403100]
これが無尽灯ということなのだ。
是名無盡燈也。[VK0403101]
あなたたちはこれから魔宮に暮らすが、
汝等雖住魔宮,[VK0403102]
この無尽灯の法門によって、無数の天子・天女たちに阿耨多羅三藐三菩提心を発させることができる。
以是無盡燈,令無數天子天女,發阿耨多羅三藐三菩提心者,[VK0403103]
これで、仏の恩に報うことができ、
為報佛恩,[VK0403104]
また、すべての衆生を益することもできるのだ。』
亦大饒益一切眾生。』[VK0403105]
そして、天女たちは平伏して額を維摩詰様のお足につけて拝み、
爾時天女頭面禮維摩詰足,[VK0403106]
一瞬で姿を消し、魔王に従って魔宮に帰りました。
隨魔還宮,忽然不現。[VK0403107]
世尊様よ! 維摩詰様はそのような自在な神力、智慧と弁才を持っておいでになりますので、
世尊!維摩詰有如是自在神力,智慧辯才,[VK0403108]
私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0403109]
【維摩経】菩薩品
持世菩薩
そこで、お釈迦様は持世菩薩に言いました。
佛告持世菩薩:[VK0403001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0403002]
持世菩薩はお釈迦様に言いました。
持世白佛言:[VK0403003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0403004]
かつて、私はある静室(静かな部屋)に住んでおりました。
憶念我昔,住於靜室,[VK0403005]
あの日、魔王波洵が姿を帝釈天に変えて、一万二千人の天女を連れて私のところにやってきました。
時魔波旬,從萬二千天女,狀如帝釋,[VK0403006]
天女たちは歌ったり、楽器を演奏したりしました。
鼓樂絃歌,[VK0403007]
そして、皆は平伏して額を私の足につけて拝み、
來詣我所。與其眷屬,稽首我足,[VK0403008]
その後、恭しく合掌してそばに立っていました。
合掌恭敬,於一面立。[VK0403009]
彼が帝釈天だと存じて、私は申しました。
我意謂是帝釋,而語之言:[VK0403010]
『いらっしゃい、カウシカ(憍尸迦。帝釈天の人間時代における名前)!
『善來憍尸迦![VK0403011]
お前はたくさんの福を持っていますが、贅沢三昧に暮らしているべきではないのです。
雖福應有,不當自恣。[VK0403012]
五欲が無常であると理解し、善の境地を追求し、
當觀五欲無常,以求善本,[VK0403013]
身・命・財産を利用して堅固(不壊)の法(法身・慧命・法財)を修めるべきです。』
於身命財而修堅法。』[VK0403014]
波洵は私に言いました。
即語我言:[VK0403015]
『正士(修行者の異称)よ!
『正士![VK0403016]
こちらの一万二千の天女をお受け入れください。
受是萬二千天女,[VK0403017]
皆に掃除や洗濯などの家事を割り当ててもいいのです。』
可備掃灑。』[VK0403018]
私は申しました。
我言:[VK0403019]
『カウシカよ! 仏教の規定に背くものを沙門である私に与えてはなりません。
『憍尸迦!無以此非法之物要我沙門釋子,[VK0403020]
これは私にとって適当ではないからです。』
此非我宜。』[VK0403021]
まだ言い終わらないうちに、
所言未訖,[VK0403022]
維摩詰様がお見えになり、私におっしゃいました。
時維摩詰來謂我言:[VK0403023]
『まったく! この人は帝釈天ではなく、
『非帝釋也,[VK0403024]
お前の修行を邪魔するためにここにやってきた魔王なのだ。』
是為魔來嬈固汝耳!』[VK0403025]
維摩詰様は魔王におっしゃいました。
即語魔言:[VK0403026]
『天女たちを私に譲ってもよい。私には何も問題ない!』
『是諸女等,可以與我,如我應受。』[VK0403027]
魔王は驚いて、
魔即驚懼,念:[VK0403028]
『もしかして、維摩詰様は私のことを怒っただろうか』と思いました。
『維摩詰將無惱我?』[VK0403029]
魔王は隠身の術を使って逃げるようにしましたが、姿を隠すことはできなかったのです。
欲隱形去,而不能隱;[VK0403030]
たとえ全力を尽くしても、逃げ去ることはできなかったのです(結界に閉じ込められていた)。
盡其神力,亦不得去。[VK0403031]
その時、空中から声が聞こえました。
即聞空中聲曰:[VK0403032]
『波洵! 天女たちを維摩詰に譲りなさい!
『波旬!以女與之,[VK0403033]
そうすれば離れることができるのだ。』
乃可得去。』[VK0403034]
魔王は維摩詰様を恐れていましたので、不本意ながら天女たちを維摩詰様に譲りました。
魔以畏故,俛仰而與。[VK0403035]
その時、維摩詰様は天女たちにおっしゃいました。
爾時維摩詰語諸女言:[VK0403036]
『魔王はあなたたちを私に譲ったのだ。
『魔以汝等與我,[VK0403037]
皆は阿耨多羅三藐三菩提心を発すべきだ。』
今汝皆當發阿耨多羅三藐三菩提心。』[VK0403038]
そして、維摩詰様は天女たち皆に説法なさり、
即隨所應而為說法,[VK0403039]
皆に道心を発させ、続けて皆におっしゃいました。
令發道意。復言:[VK0403040]
『あなたたちはすでに道心を発した。
『汝等已發道意,[VK0403041]
法楽(仏法の醍醐味)を味わうことができ、
有法樂可以自娛,[VK0403042]
また五欲に夢中になるべきではないのだ。』
不應復樂五欲樂也。』[VK0403043]
天女は維摩詰様に問いました。
天女即問:[VK0403044]
『法楽を味わうとはいったいどんなことでしょうか?』
『何謂法樂?』[VK0403045]
維摩詰様はお答えになった。
答言:[VK0403046]
『常に如来様を信じること、
『樂常信佛,[VK0403047]
如来様のご教示を聴くこと、
樂欲聽法,[VK0403048]
四部の衆を供養すること、
樂供養眾,[VK0403049]
五欲から離れること、
樂離五欲;[VK0403050]
五受陰を盗賊と見なすこと、
樂觀五陰如怨賊,[VK0403051]
四大元素(地・水・火・風。身の構成要素)を毒蛇と見なすこと、
樂觀四大如毒蛇,[VK0403052]
六塵が廃村に入ったと思うこと、
樂觀內入如空聚;[VK0403053]
道心を守ること、
樂隨護道意,[VK0403054]
常に衆生を益すること、
樂饒益眾生,[VK0403055]
先生を敬ったり、供養したりすること、
樂敬養師;[VK0403056]
広く布施を行うこと、
樂廣行施,[VK0403057]
動揺せずに戒律を守ること、
樂堅持戒,[VK0403058]
忍辱をしたり、優しくしたりすること、
樂忍辱柔和,[VK0403059]
努めてさまざまな善の特質を修めること、
樂勤集善根,[VK0403060]
心を乱さないこと、禅定に入ること、
樂禪定不亂,[VK0403061]
邪見を離れたり、智慧を高めたりすること、
樂離垢明慧;[VK0403062]
菩提心を広めること、
樂廣菩提心,[VK0403063]
さまざまな魔を降伏させること、
樂降伏眾魔,[VK0403064]
さまざまな煩悩を断ち切ること、
樂斷諸煩惱,[VK0403065]
仏土を清浄にすること、
樂淨佛國土,[VK0403066]
相好になるようにさまざまな功徳を修めること、
樂成就相好故,修諸功德;[VK0403067]
道場を荘厳にすること、
樂嚴道場;[VK0403068]
恐れずに奥深い仏法を聴くこと、
樂聞深法不畏;[VK0403069]
三解脱門(三種の解脱に至る修行。空解脱・無相解脱・無願解脱)を修めること、
樂三脫門,[VK0403070]
非時(修行がまだ円満になっていない時、途中で涅槃の境地に入ること)を離れること、
不樂非時;[VK0403071]
同門に親しみ近づくこと、
樂近同學,[VK0403072]
非同門に対しても、心にわだかまりを持たないこと、
樂於非同學中,心無恚礙;[VK0403073]
悪知識(人々を邪道に誘い導く人)を正道に導くこと、
樂將護惡知識,[VK0403074]
善知識に親しんで近づくこと、
樂親近善知識;[VK0403075]
心を清浄にすること、
樂心喜清淨,[VK0403076]
無量の道品の法(涅槃の境地に至る修行方法)を修めることなど、
樂修無量道品之法。[VK0403077]
菩薩はこれらのことから法楽を味わうのだ。』
是為菩薩法樂。』[VK0403078]
その時、波洵は天女たちに言いました。
於是波旬告諸女言:[VK0403079]
『皆、一緒に天宮に帰るぞ。』
『我欲與汝俱還天宮。』[VK0403080]
天女たちは答えました。
諸女言:[VK0403081]
『お前は私たちを維摩詰様に譲りました。
『以我等與此居士,[VK0403082]
居士様が法楽のことを教えてくださって、私たちはとてもうれしいです。
有法樂,我等甚樂,[VK0403083]
私たちはもう五欲に夢中になりません。』
不復樂五欲樂也。』[VK0403084]
魔王は維摩詰様に言いました。
魔言:[VK0403085]
『居士様は天女たちを捨ててもよいのではないでしょうか?
『居士可捨此女?[VK0403086]
自分のすべてを他人に施す、それが菩薩というものでしょう。』
一切所有施於彼者,是為菩薩。』[VK0403087]
維摩詰様はおっしゃいました。
維摩詰言:[VK0403088]
『かまわない! 天女たちを連れて帰りなさい。
『我已捨矣!汝便將去,[VK0403089]
すべての衆生が仏法を聴くことができますように。』
令一切眾生得法願具足。』[VK0403090]
天女たちは維摩詰様に問いました。
於是諸女問維摩詰:[VK0403091]
『居士様! 私たちはこれからどのように魔宮で暮らせばよいのでしょうか?』
『我等云何,止於魔宮?』[VK0403092]
維摩詰様はお答えになりました。
維摩詰言:[VK0403093]
『皆さん! 無尽灯という法門がある。それを学んだほうがいいのだ。
『諸姊!有法門名無盡燈,汝等當學。[VK0403094]
無尽灯とは、例えば、一の灯(油灯・燭台)で百千の灯を灯すことができ、
無盡燈者,譬如一燈,燃百千燈,[VK0403095]
あちらこちらの暗闇も明るくなり、それで、明かりが尽きないということだ。
冥者皆明,明終不盡。[VK0403096]
皆さん! まさにそのように、一人の菩薩が百千の衆生を教え導き、
如是,諸姊!夫一菩薩開導百千眾生,[VK0403097]
皆に阿耨多羅三藐三菩提心を発させ、
令發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0403098]
自分の道心は尽きず、
於其道意亦不滅盡,[VK0403099]
さらに教化が進むにつれて、世間の善はますます増えていく。
隨所說法,而自增益一切善法,[VK0403100]
これが無尽灯ということなのだ。
是名無盡燈也。[VK0403101]
あなたたちはこれから魔宮に暮らすが、
汝等雖住魔宮,[VK0403102]
この無尽灯の法門によって、無数の天子・天女たちに阿耨多羅三藐三菩提心を発させることができる。
以是無盡燈,令無數天子天女,發阿耨多羅三藐三菩提心者,[VK0403103]
これで、仏の恩に報うことができ、
為報佛恩,[VK0403104]
また、すべての衆生を益することもできるのだ。』
亦大饒益一切眾生。』[VK0403105]
そして、天女たちは平伏して額を維摩詰様のお足につけて拝み、
爾時天女頭面禮維摩詰足,[VK0403106]
一瞬で姿を消し、魔王に従って魔宮に帰りました。
隨魔還宮,忽然不現。[VK0403107]
世尊様よ! 維摩詰様はそのような自在な神力、智慧と弁才を持っておいでになりますので、
世尊!維摩詰有如是自在神力,智慧辯才,[VK0403108]
私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0403109]