羅睺羅
【維摩経】弟子品
ラーフラ尊者
そこで、お釈迦様はラーフラ尊者(密行第一)に言いました。
佛告羅睺羅:[VK0309001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0309002]
ラーフラはお釈迦様に語りました。
羅睺羅白佛言:[VK0309003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0309004]
かつて、ヴァイシャーリー大都市の長者たちは私のところに来て、礼をして私に聞きました。
憶念昔時,毘耶離諸長者子來詣我所,稽首作禮,問我言:[VK0309005]
『ラーフラ尊者よ! あなたは世尊様の息子ですね。
『唯,羅睺羅!汝佛之子,[VK0309006]
仏道を求めるために、転輪王(世界の統治者)の位を捨てて出家されましたが、
捨轉輪王位,出家為道。[VK0309007]
この出家にいったい何の利益があるのでしょうか?』
其出家者,有何等利?』[VK0309008]
それで、私は世尊様の教えどおり皆に出家の功徳と利益をお説きいたしました。
我即如法為說出家功德之利。[VK0309009]
その時、維摩詰様がお見えになり、私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0309010]
『ちょっと! ラーフラさんよ! 出家の功徳と利益を説くべきではないのだ。なぜなら、
『唯,羅睺羅!不應說出家功德之利。所以者何?[VK0309011]
功徳も利益もないこと、これこそ出家だからだ。
無利無功德,是為出家;[VK0309012]
有為の法には、功徳や利益などがあるかもしれないが、
有為法者,可說有利有功德。[VK0309013]
出家とは無為であり、無為には功徳も利益もないのだ。ラーフラさんよ!
夫出家者,為無為法,無為法中,無利無功德。羅睺羅![VK0309014]
出家とは、
出家者,[VK0309015]
区別をせず、
無彼無此,亦無中間;[VK0309016]
六十二種類の邪見を離れていて、
離六十二見,[VK0309017]
涅槃の境地に入り、
處於涅槃;[VK0309018]
賢者に認められ、聖者に則られ、
智者所受,聖所行處;[VK0309019]
さまざまな魔を降伏させ、
降伏眾魔,[VK0309020]
五道の衆生を済度し、
度五道,[VK0309021]
五眼(肉眼・天眼・慧眼・法眼・仏眼)を清め、
淨五眼,[VK0309022]
五力(信力・精進力・念力・定力・慧力)を培い、
得五力,[VK0309023]
五根(信根・精進根・念根・定根・慧根)を強固にするのだ。
立五根;[VK0309024]
また、物事に悩まず、
不惱於彼,[VK0309025]
さまざまな悪行を離れていて、
離眾雜惡;[VK0309026]
諸外道を破り、
摧諸外道,[VK0309027]
仮名(存在しないものに、仮に名をつけること)に惑わされず、
超越假名;[VK0309028]
泥より出でて泥に染まらず(世俗の中にいても、煩悩に染まらない)、
出淤泥,無繫著;[VK0309029]
我所を離れていて、
無我所,[VK0309030]
五蘊を離れていて、
無所受;[VK0309031]
心が乱れておらず、
無擾亂,[VK0309032]
法喜(仏法を聴いて、うれしい思いで味わっていること)に浸っていて、
內懷喜;[VK0309033]
道心を守り、
護彼意,[VK0309034]
禅定の境地を離れず、
隨禪定,[VK0309035]
さまざまな過ちを離れている。
離眾過。[VK0309036]
もしそうできれば、これこそ真の出家なのだ。』
若能如是,是真出家。』[VK0309037]
それで、維摩詰様は長者たちにおっしゃいました。
於是維摩詰語諸長者子:[VK0309038]
『いまちょうど正法の時代(正法が世間に出現する時代)であり、お前たちは出家したほうがいいのだ。なぜなら、
『汝等於正法中,宜共出家。所以者何?[VK0309039]
ちょうど如来様がいらっしゃる時代に逢うことはとても珍しいからだ。』
佛世難值!』[VK0309040]
長者たちは言いました。
諸長者子言:[VK0309041]
『居士様! でも、世尊様は、
『居士!我聞佛言,[VK0309042]
両親が賛成しなければ、出家してはいけないとおっしゃいました。』
父母不聽,不得出家。』[VK0309043]
維摩詰様はお答えになりました。
維摩詰言:[VK0309044]
『そのとおりだ。それでは、お前たちは阿耨多羅三藐三菩提心を発すればよい。
『然!汝等便發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0309045]
これがつまり出家のことであり、
是即出家,[VK0309046]
具足戒(比丘、比丘尼の戒律)を受けたということなのだ。』
是即具足。』[VK0309047]
あの時、三十二人の長者たちは皆、阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
爾時三十二長者子皆發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0309048]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0309049]
【維摩経】弟子品
ラーフラ尊者
そこで、お釈迦様はラーフラ尊者(密行第一)に言いました。
佛告羅睺羅:[VK0309001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0309002]
ラーフラはお釈迦様に語りました。
羅睺羅白佛言:[VK0309003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0309004]
かつて、ヴァイシャーリー大都市の長者たちは私のところに来て、礼をして私に聞きました。
憶念昔時,毘耶離諸長者子來詣我所,稽首作禮,問我言:[VK0309005]
『ラーフラ尊者よ! あなたは世尊様の息子ですね。
『唯,羅睺羅!汝佛之子,[VK0309006]
仏道を求めるために、転輪王(世界の統治者)の位を捨てて出家されましたが、
捨轉輪王位,出家為道。[VK0309007]
この出家にいったい何の利益があるのでしょうか?』
其出家者,有何等利?』[VK0309008]
それで、私は世尊様の教えどおり皆に出家の功徳と利益をお説きいたしました。
我即如法為說出家功德之利。[VK0309009]
その時、維摩詰様がお見えになり、私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0309010]
『ちょっと! ラーフラさんよ! 出家の功徳と利益を説くべきではないのだ。なぜなら、
『唯,羅睺羅!不應說出家功德之利。所以者何?[VK0309011]
功徳も利益もないこと、これこそ出家だからだ。
無利無功德,是為出家;[VK0309012]
有為の法には、功徳や利益などがあるかもしれないが、
有為法者,可說有利有功德。[VK0309013]
出家とは無為であり、無為には功徳も利益もないのだ。ラーフラさんよ!
夫出家者,為無為法,無為法中,無利無功德。羅睺羅![VK0309014]
出家とは、
出家者,[VK0309015]
区別をせず、
無彼無此,亦無中間;[VK0309016]
六十二種類の邪見を離れていて、
離六十二見,[VK0309017]
涅槃の境地に入り、
處於涅槃;[VK0309018]
賢者に認められ、聖者に則られ、
智者所受,聖所行處;[VK0309019]
さまざまな魔を降伏させ、
降伏眾魔,[VK0309020]
五道の衆生を済度し、
度五道,[VK0309021]
五眼(肉眼・天眼・慧眼・法眼・仏眼)を清め、
淨五眼,[VK0309022]
五力(信力・精進力・念力・定力・慧力)を培い、
得五力,[VK0309023]
五根(信根・精進根・念根・定根・慧根)を強固にするのだ。
立五根;[VK0309024]
また、物事に悩まず、
不惱於彼,[VK0309025]
さまざまな悪行を離れていて、
離眾雜惡;[VK0309026]
諸外道を破り、
摧諸外道,[VK0309027]
仮名(存在しないものに、仮に名をつけること)に惑わされず、
超越假名;[VK0309028]
泥より出でて泥に染まらず(世俗の中にいても、煩悩に染まらない)、
出淤泥,無繫著;[VK0309029]
我所を離れていて、
無我所,[VK0309030]
五蘊を離れていて、
無所受;[VK0309031]
心が乱れておらず、
無擾亂,[VK0309032]
法喜(仏法を聴いて、うれしい思いで味わっていること)に浸っていて、
內懷喜;[VK0309033]
道心を守り、
護彼意,[VK0309034]
禅定の境地を離れず、
隨禪定,[VK0309035]
さまざまな過ちを離れている。
離眾過。[VK0309036]
もしそうできれば、これこそ真の出家なのだ。』
若能如是,是真出家。』[VK0309037]
それで、維摩詰様は長者たちにおっしゃいました。
於是維摩詰語諸長者子:[VK0309038]
『いまちょうど正法の時代(正法が世間に出現する時代)であり、お前たちは出家したほうがいいのだ。なぜなら、
『汝等於正法中,宜共出家。所以者何?[VK0309039]
ちょうど如来様がいらっしゃる時代に逢うことはとても珍しいからだ。』
佛世難值!』[VK0309040]
長者たちは言いました。
諸長者子言:[VK0309041]
『居士様! でも、世尊様は、
『居士!我聞佛言,[VK0309042]
両親が賛成しなければ、出家してはいけないとおっしゃいました。』
父母不聽,不得出家。』[VK0309043]
維摩詰様はお答えになりました。
維摩詰言:[VK0309044]
『そのとおりだ。それでは、お前たちは阿耨多羅三藐三菩提心を発すればよい。
『然!汝等便發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0309045]
これがつまり出家のことであり、
是即出家,[VK0309046]
具足戒(比丘、比丘尼の戒律)を受けたということなのだ。』
是即具足。』[VK0309047]
あの時、三十二人の長者たちは皆、阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
爾時三十二長者子皆發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0309048]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0309049]