阿難
【維摩経】弟子品
アーナンダ尊者
そこで、お釈迦様はアーナンダ尊者(多聞第一)に言いました。
佛告阿難:[VK0310001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0310002]
アーナンダはお釈迦様に語りました。
阿難白佛言:[VK0310003]
「申し訳ございません。世尊様! 私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0310004]
かつて、世尊様は軽いご病気になられたので、牛乳を召し上がる必要がございました。
憶念昔時,世尊身小有疾,當用牛乳,[VK0310005]
そのため、私は急いで鉢を持ち、ある大婆羅門の家に伺い、その家の門前に立っていたのです。
我即持鉢,詣大婆羅門家門下立。[VK0310006]
その時、維摩詰様にお会いし、維摩詰様は私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0310007]
『どうした? アーナンダさんよ! どうして朝早く鉢を持ってその門前に立っているのか?』
『唯,阿難!何為晨朝,持鉢住此?』[VK0310008]
私はお答えいたしました。
我言:[VK0310009]
『居士様! 世尊様は軽いご病気になられたので、牛乳を召し上がる必要がございます。
『居士!世尊身小有疾,當用牛乳,[VK0310010]
それで、私は牛乳を乞うためここに参りました。』
故來至此。』[VK0310011]
しかし、維摩詰様は厳しく私をお叱りになりました。
維摩詰言:[VK0310012]
『だめだ! だめだ! アーナンダさんよ! そんなことを言うな!
『止,止!阿難!莫作是語![VK0310013]
如来様のお身は金剛の身であり、すべての悪がお絶えになり、
如來身者,金剛之體,諸惡已斷,[VK0310014]
さまざまな善が集まっておいでになるお身なのだ。
眾善普會,[VK0310015]
いったい何のご病気になられたのだろうか?
當有何疾?[VK0310016]
いったい何にお悩みになるだろうか?
當有何惱?[VK0310017]
黙って帰れ! アーナンダさん! 如来様を中傷するな!
默往,阿難!勿謗如來,[VK0310018]
この悪口が誰にも聞かれないようにしなさい!
莫使異人聞此麁言;[VK0310019]
大威徳(威厳と功徳)が備わっている諸天界の天人たち、及び他の浄土から来た菩薩たちに聞かれてはいけないのだ。アーナンダさんよ!
無令大威德諸天,及他方淨土諸來菩薩得聞斯語。阿難![VK0310020]
転輪聖王でさえただわずかな福徳のおかげで、病気になったことがないのだ。
轉輪聖王,以少福故,尚得無病,[VK0310021]
ましてや、無量の福徳を持っておいでになる如来様ならなおさらだ!
豈況如來無量福會普勝者哉![VK0310022]
もういい! アーナンダさん! 我らにこういう恥をかかせるな!
行矣,阿難!勿使我等受斯恥也。[VK0310023]
もし外道や梵志(婆羅門)がこの話を聞いたら、皆どう思うだろうか?
外道、梵志,若聞此語,當作是念:[VK0310024]
『なぜ釈迦牟尼は衆生の先生と呼ばれるのか? 自分の病が治せないのに、本当に衆生の病(煩悩)が治せるのか?』
「何名為師?自疾不能救,而能救諸疾?」[VK0310025]
早く帰れ! 誰にも見つかるな! アーナンダさんよ! よく知りなさい!
仁可密速去,勿使人聞。當知,阿難![VK0310026]
諸如来様のお身は法身であり、五欲(財欲・色欲・食欲・名誉欲・睡眠欲)の身ではない。
諸如來身,即是法身,非思欲身。[VK0310027]
如来様は世尊であり、三界を超越した存在なのだ。
佛為世尊,過於三界;[VK0310028]
如来様のお身は無漏(煩悩のないこと)であり、すべての煩悩は尽きた。
佛身無漏,諸漏已盡;[VK0310029]
如来様のお身は無為であり(因を作らない)、諸命数(吉凶禍福の運命)に陥らぬ(果がない)。
佛身無為,不墮諸數。[VK0310030]
そのようなお身が、
如此之身,[VK0310031]
いったい何のご病気になられるだろうか?
當有何疾?[VK0310032]
いったい何にお悩みになるだろうか?』
當有何惱?』[VK0310033]
世尊様、あの時、私は本当に恥ずかしいと存じました。
時我,世尊!實懷慚愧,[VK0310034]
私は常に世尊様のそばにおりますが、もしかして何かが間違っていたのでしょうか?
得無近佛而謬聽耶![VK0310035]
その時、空中から声が聞こえました。
即聞空中聲曰:[VK0310036]
『アーナンダさんよ! 居士のおっしゃるとおりだ。
『阿難!如居士言。[VK0310037]
しかし、世尊様がこの五濁(劫濁・見濁・命濁・煩悩濁・衆生濁)の悪世(劣悪な世代)に出現なさり、ご病気の様子をお現しになっているのは、すべて衆生を教え導くためなのです。
但為佛出五濁惡世,現行斯法,度脫眾生。[VK0310038]
これでいい。アーナンダさんよ! 恥じることはない。牛乳を受け取ろう。』
行矣,阿難!取乳勿慚。』[VK0310039]
世尊様! 維摩詰様の智慧と弁才はこのように素晴らしいのです!
世尊!維摩詰智慧辯才,為若此也。[VK0310040]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
是故不任詣彼問疾。」[VK0310041]
このようにして、五百人の大弟子はそれぞれお釈迦様に自分のことを語り、
如是五百大弟子各各向佛說其本緣,[VK0310042]
維摩詰の言葉を述べ、皆もこう言いました。
稱述維摩詰所言,皆曰:[VK0310043]
「申し訳ございません。その御方を見舞うことができかねます。」
「不任詣彼問疾!」[VK0310044]
【維摩経】弟子品
アーナンダ尊者
そこで、お釈迦様はアーナンダ尊者(多聞第一)に言いました。
佛告阿難:[VK0310001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0310002]
アーナンダはお釈迦様に語りました。
阿難白佛言:[VK0310003]
「申し訳ございません。世尊様! 私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0310004]
かつて、世尊様は軽いご病気になられたので、牛乳を召し上がる必要がございました。
憶念昔時,世尊身小有疾,當用牛乳,[VK0310005]
そのため、私は急いで鉢を持ち、ある大婆羅門の家に伺い、その家の門前に立っていたのです。
我即持鉢,詣大婆羅門家門下立。[VK0310006]
その時、維摩詰様にお会いし、維摩詰様は私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0310007]
『どうした? アーナンダさんよ! どうして朝早く鉢を持ってその門前に立っているのか?』
『唯,阿難!何為晨朝,持鉢住此?』[VK0310008]
私はお答えいたしました。
我言:[VK0310009]
『居士様! 世尊様は軽いご病気になられたので、牛乳を召し上がる必要がございます。
『居士!世尊身小有疾,當用牛乳,[VK0310010]
それで、私は牛乳を乞うためここに参りました。』
故來至此。』[VK0310011]
しかし、維摩詰様は厳しく私をお叱りになりました。
維摩詰言:[VK0310012]
『だめだ! だめだ! アーナンダさんよ! そんなことを言うな!
『止,止!阿難!莫作是語![VK0310013]
如来様のお身は金剛の身であり、すべての悪がお絶えになり、
如來身者,金剛之體,諸惡已斷,[VK0310014]
さまざまな善が集まっておいでになるお身なのだ。
眾善普會,[VK0310015]
いったい何のご病気になられたのだろうか?
當有何疾?[VK0310016]
いったい何にお悩みになるだろうか?
當有何惱?[VK0310017]
黙って帰れ! アーナンダさん! 如来様を中傷するな!
默往,阿難!勿謗如來,[VK0310018]
この悪口が誰にも聞かれないようにしなさい!
莫使異人聞此麁言;[VK0310019]
大威徳(威厳と功徳)が備わっている諸天界の天人たち、及び他の浄土から来た菩薩たちに聞かれてはいけないのだ。アーナンダさんよ!
無令大威德諸天,及他方淨土諸來菩薩得聞斯語。阿難![VK0310020]
転輪聖王でさえただわずかな福徳のおかげで、病気になったことがないのだ。
轉輪聖王,以少福故,尚得無病,[VK0310021]
ましてや、無量の福徳を持っておいでになる如来様ならなおさらだ!
豈況如來無量福會普勝者哉![VK0310022]
もういい! アーナンダさん! 我らにこういう恥をかかせるな!
行矣,阿難!勿使我等受斯恥也。[VK0310023]
もし外道や梵志(婆羅門)がこの話を聞いたら、皆どう思うだろうか?
外道、梵志,若聞此語,當作是念:[VK0310024]
『なぜ釈迦牟尼は衆生の先生と呼ばれるのか? 自分の病が治せないのに、本当に衆生の病(煩悩)が治せるのか?』
「何名為師?自疾不能救,而能救諸疾?」[VK0310025]
早く帰れ! 誰にも見つかるな! アーナンダさんよ! よく知りなさい!
仁可密速去,勿使人聞。當知,阿難![VK0310026]
諸如来様のお身は法身であり、五欲(財欲・色欲・食欲・名誉欲・睡眠欲)の身ではない。
諸如來身,即是法身,非思欲身。[VK0310027]
如来様は世尊であり、三界を超越した存在なのだ。
佛為世尊,過於三界;[VK0310028]
如来様のお身は無漏(煩悩のないこと)であり、すべての煩悩は尽きた。
佛身無漏,諸漏已盡;[VK0310029]
如来様のお身は無為であり(因を作らない)、諸命数(吉凶禍福の運命)に陥らぬ(果がない)。
佛身無為,不墮諸數。[VK0310030]
そのようなお身が、
如此之身,[VK0310031]
いったい何のご病気になられるだろうか?
當有何疾?[VK0310032]
いったい何にお悩みになるだろうか?』
當有何惱?』[VK0310033]
世尊様、あの時、私は本当に恥ずかしいと存じました。
時我,世尊!實懷慚愧,[VK0310034]
私は常に世尊様のそばにおりますが、もしかして何かが間違っていたのでしょうか?
得無近佛而謬聽耶![VK0310035]
その時、空中から声が聞こえました。
即聞空中聲曰:[VK0310036]
『アーナンダさんよ! 居士のおっしゃるとおりだ。
『阿難!如居士言。[VK0310037]
しかし、世尊様がこの五濁(劫濁・見濁・命濁・煩悩濁・衆生濁)の悪世(劣悪な世代)に出現なさり、ご病気の様子をお現しになっているのは、すべて衆生を教え導くためなのです。
但為佛出五濁惡世,現行斯法,度脫眾生。[VK0310038]
これでいい。アーナンダさんよ! 恥じることはない。牛乳を受け取ろう。』
行矣,阿難!取乳勿慚。』[VK0310039]
世尊様! 維摩詰様の智慧と弁才はこのように素晴らしいのです!
世尊!維摩詰智慧辯才,為若此也。[VK0310040]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
是故不任詣彼問疾。」[VK0310041]
このようにして、五百人の大弟子はそれぞれお釈迦様に自分のことを語り、
如是五百大弟子各各向佛說其本緣,[VK0310042]
維摩詰の言葉を述べ、皆もこう言いました。
稱述維摩詰所言,皆曰:[VK0310043]
「申し訳ございません。その御方を見舞うことができかねます。」
「不任詣彼問疾!」[VK0310044]