阿難

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 > 10.アーナンダ尊者


 アーナンダそんじゃ


そこで、おシャ様はアーナンダそんじゃもん第一)に言いました。

佛告阿難:[VK0310001]

「お前がゆいきついに行ってきなさい。」

「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0310002]


アーナンダはおシャ様に語りました。

阿難白佛言:[VK0310003]

「申し訳ございません。そん様! 私はその御方をうことができかねます。なぜかというと、

「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0310004]

かつて、そん様は軽いご病気になられたので、牛乳を召し上がる必要がございました。

憶念昔時,世尊身小有疾,當用牛乳,[VK0310005]

そのため、私は急いではちを持ち、ある大モンの家に伺い、その家の門前に立っていたのです。

我即持鉢,詣大婆羅門家門下立。[VK0310006]


その時、ゆいきつ様にお会いし、ゆいきつ様は私に話しかけられました。

時維摩詰來謂我言:[VK0310007]

『どうした? アーナンダさんよ! どうして朝早くはちを持ってその門前に立っているのか?』

『唯,阿難!何為晨朝,持鉢住此?』[VK0310008]


私はお答えいたしました。

我言:[VK0310009]

様! そん様は軽いご病気になられたので、牛乳を召し上がる必要がございます。

『居士!世尊身小有疾,當用牛乳,[VK0310010]

それで、私は牛乳を乞うためここに参りました。』

故來至此。』[VK0310011]


しかし、ゆいきつ様は厳しく私をお叱りになりました。

維摩詰言:[VK0310012]

『だめだ! だめだ! アーナンダさんよ! そんなことを言うな! 

『止,止!阿難!莫作是語![VK0310013]

にょらい様のお身はこんごうの身であり、すべての悪がお絶えになり、

如來身者,金剛之體,諸惡已斷,[VK0310014]

さまざまな善が集まっておいでになるお身なのだ。

眾善普會,[VK0310015]

いったい何のご病気になられたのだろうか? 

當有何疾?[VK0310016]

いったい何にお悩みになるだろうか? 

當有何惱?[VK0310017]


黙って帰れ! アーナンダさん! にょらい様をちゅうしょうするな! 

默往,阿難!勿謗如來,[VK0310018]

このあっこうが誰にも聞かれないようにしなさい! 

莫使異人聞此麁言;[VK0310019]

とくげんどく)が備わっている諸天界のてんにんたち、及び他のじょうから来たさつたちに聞かれてはいけないのだ。アーナンダさんよ! 

無令大威德諸天,及他方淨土諸來菩薩得聞斯語。阿難![VK0310020]

てんりんじょうおうでさえただわずかなふくとくのおかげで、病気になったことがないのだ。

轉輪聖王,以少福故,尚得無病,[VK0310021]

ましてや、りょうふくとくを持っておいでになるにょらい様ならなおさらだ! 

豈況如來無量福會普勝者哉![VK0310022]


もういい! アーナンダさん! 我らにこういう恥をかかせるな! 

行矣,阿難!勿使我等受斯恥也。[VK0310023]

もしどうぼんモン)がこの話を聞いたら、皆どう思うだろうか? 

外道、梵志,若聞此語,當作是念:[VK0310024]

『なぜシャしゅじょうの先生と呼ばれるのか? 自分の病が治せないのに、本当にしゅじょうの病(ぼんのう)が治せるのか?』

「何名為師?自疾不能救,而能救諸疾?」[VK0310025]


早く帰れ! 誰にも見つかるな! アーナンダさんよ! よく知りなさい! 

仁可密速去,勿使人聞。當知,阿難![VK0310026]

にょらい様のお身はほっしんであり、五欲(ざいよくしきよくしょくよくめいよくすいみんよく)の身ではない。

諸如來身,即是法身,非思欲身。[VK0310027]

にょらい様はそんであり、三界をちょうえつした存在なのだ。

佛為世尊,過於三界;[VK0310028]

にょらい様のお身はぼんのうのないこと)であり、すべてのぼんのうは尽きた。

佛身無漏,諸漏已盡;[VK0310029]

にょらい様のお身はであり(因を作らない)、諸命数(きっきょうふくの運命)におちいらぬ(果がない)。

佛身無為,不墮諸數。[VK0310030]

そのようなお身が、

如此之身,[VK0310031]

いったい何のご病気になられるだろうか? 

當有何疾?[VK0310032]

いったい何にお悩みになるだろうか?』

當有何惱?』[VK0310033]


そん様、あの時、私は本当に恥ずかしいと存じました。

時我,世尊!實懷慚愧,[VK0310034]

私は常にそん様のそばにおりますが、もしかして何かが間違っていたのでしょうか? 

得無近佛而謬聽耶![VK0310035]


その時、空中から声が聞こえました。

即聞空中聲曰:[VK0310036]

『アーナンダさんよ! のおっしゃるとおりだ。

『阿難!如居士言。[VK0310037]

しかし、そん様がこのじょくこうじょくけんじょくめいじょくぼんのうじょくしゅじょうじょく)のあくれつあくな世代)に出現なさり、ご病気の様子をお現しになっているのは、すべてしゅじょうを教え導くためなのです。

但為佛出五濁惡世,現行斯法,度脫眾生。[VK0310038]

これでいい。アーナンダさんよ! 恥じることはない。牛乳を受け取ろう。』

行矣,阿難!取乳勿慚。』[VK0310039]


そん様! ゆいきつ様のべんさいはこのように素晴らしいのです! 

世尊!維摩詰智慧辯才,為若此也。[VK0310040]

それゆえ、私はその御方をうことができかねます。」

是故不任詣彼問疾。」[VK0310041]


このようにして、五百人の大弟子はそれぞれおシャ様に自分のことを語り、

如是五百大弟子各各向佛說其本緣,[VK0310042]

ゆいきつの言葉を述べ、皆もこう言いました。

稱述維摩詰所言,皆曰:[VK0310043]

「申し訳ございません。その御方をうことができかねます。」

「不任詣彼問疾!」[VK0310044]



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