方便品
【維摩経】方便品
身の喩え
維摩詰長者は、このようにさまざまな方便を利用して衆生を益してきましたが、
長者維摩詰,以如是等無量方便饒益眾生。[VK0202001]
いま、方便のひとつとして、病気になったふりをして寝台に横になっていました。
其以方便,現身有疾。[VK0202002]
それを聞いて、国王たち・大臣たち・長者たち・居士たち・婆羅門たち、
以其疾故,國王大臣、長者居士、婆羅門等,[VK0202003]
及び王子たちと官吏たちなど、
及諸王子并餘官屬,[VK0202004]
無数の千の人々が皆、維摩詰を見舞いに行きました。
無數千人,皆往問疾。[VK0202005]
維摩詰は機に乗じて皆に仏法を広く説きました。
其往者,維摩詰因以身疾,廣為說法:[VK0202006]
「御仁たちよ! この身の性質は無常で、
「諸仁者!是身無常、[VK0202007]
強くなく、力なく、堅固ではなく、
無強、無力、無堅、[VK0202008]
すぐ朽ち衰え、当てにできず、
速朽之法,不可信也![VK0202009]
さまざまな苦しみ・悩み・病の集まるものなのだ。
為苦、為惱,眾病所集。[VK0202010]
御仁たちよ! 賢者はこのような身を当てにせぬ。
諸仁者!如此身,明智者所不怙;[VK0202011]
この身は飛沫のように、つかむことができぬ。
是身如聚沫,不可撮摩;[VK0202012]
この身は水の泡のように、久しく存在することができぬ。
是身如泡,不得久立;[VK0202013]
この身は陽炎(水に見える)のように、渇愛(渇して水をほしがるような強い欲望)から生まれるのだ。
是身如炎,從渴愛生;[VK0202014]
この身は芭蕉の幹のように、内部が固くない。
是身如芭蕉,中無有堅;[VK0202015]
この身は幻のように、転倒(真実に反すること)の観念から生まれる。
是身如幻,從顛倒起;[VK0202016]
この身は夢のように、本当の身ではないのだ(魂が暫く寄宿するところ)。
是身如夢,為虛妄見;[VK0202017]
この身は影のように、善悪の業によって成る(影が必ず物に添う)。
是身如影,從業緣現;[VK0202018]
この身はこだまのように、さまざまな因縁によって出現する。
是身如響,屬諸因緣;[VK0202019]
この身は浮雲のように、時々刻々変化して生滅する(新陳代謝する)。
是身如浮雲,須臾變滅;[VK0202020]
この身は稲妻のように、一瞬でもとどまっておらぬ。
是身如電,念念不住;[VK0202021]
この身は大地のように、永遠の主がいない。
是身無主,為如地;[VK0202022]
この身は火のように無我である。
是身無我,為如火;[VK0202023]
この身は風のように寿命がない。
是身無壽,為如風;[VK0202024]
この身は水のようでただ人の形をしているものである。
是身無人,為如水;[VK0202025]
この身は不実で、本質は四大元素(地・水・火・風)の集まりである。
是身不實,四大為家;[VK0202026]
この身は空で、我・我所(我がもの)を離れている。
是身為空,離我我所;[VK0202027]
この身は草・木・瓦礫のように感知しない。
是身無知,如草木瓦礫;[VK0202028]
この身は自主的に行動せず、風の力(気)で運転する(風車のようだ)。
是身無作,風力所轉;[VK0202029]
この身は不浄で、汚いものや嫌悪のものに満ちている。
是身不淨,穢惡充滿;[VK0202030]
この身は偽りで、たとえ沐浴したり、衣食を与えたりしても、最終には必ず滅してなくなる。
是身為虛偽,雖假以澡浴衣食,必歸磨滅;[VK0202031]
この身は災いであり、百一種類の疾病に悩む。
是身為災,百一病惱;[VK0202032]
この身は荒廃した古い井戸のように、老衰が迫っている。
是身如丘井,為老所逼;[VK0202033]
この身は安定せず、死から逃れることができぬ。
是身無定,為要當死;[VK0202034]
この身は、毒蛇・盗賊・廃村の如く、
是身如毒蛇、如怨賊、如空聚,[VK0202035]
五蘊(色・受・想・行・識)と十八界の合成物なのだ。
陰界諸入所共合成。[VK0202036]
御仁たちよ! この身を厭って離れ、仏身を得ることを求めていこう。なぜなら、
諸仁者!此可患厭,當樂佛身。所以者何?[VK0202037]
仏身は、つまり法身(真如の理体)であり、
佛身者即法身也;[VK0202038]
無量の功徳と智慧から誕生し、
從無量功德智慧生,[VK0202039]
戒・定・慧・解脱・解脱知見(知見から解放されること)から誕生し、
從戒、定、慧、解脫、解脫知見生,[VK0202040]
慈・悲・喜・捨から誕生し、
從慈、悲、喜、捨生,[VK0202041]
布施・持戒・忍辱・柔和・勤行・精進・禅定・解脱・
從布施、持戒、忍辱、柔和、勤行精進、禪定、解脫、[VK0202042]
三昧(雑念を除いて心は一つの対象に集中すること)・
三昧、[VK0202043]
多聞(多くの物事を聞いて知っていること)・
多聞、[VK0202044]
智慧・諸波羅蜜から誕生し、
智慧、諸波羅蜜生,[VK0202045]
方便から誕生し、
從方便生,[VK0202046]
六神通(天眼通・天耳通・他心通・神足通・宿命通・漏尽通)から誕生し、
從六通生,[VK0202047]
三明(宿命明・天眼明・漏尽明)から誕生し、
從三明生,[VK0202048]
三十七道品から誕生し、
從三十七道品生,[VK0202049]
止観(止は心中の混乱を止めること。観は智慧を通じて物事の本質を洞察すること)から誕生し、
從止觀生,[VK0202050]
十力・四無所畏(説一切智無所畏・説漏尽無所畏・説障道無所畏・説尽苦道無所畏)・
從十力、四無所畏、[VK0202051]
十八不共法から誕生し、
十八不共法生,[VK0202052]
一切の不善を断ち切ることから誕生し、一切の善を集めることから誕生し、
從斷一切不善法、集一切善法生,[VK0202053]
真実から誕生し、不怠惰から誕生し、
從真實生,從不放逸生;[VK0202054]
如来の身は無量の清浄なことから誕生するのだ。御仁たちよ!
從如是無量清淨法生如來身。諸仁者![VK0202055]
仏身を欲しがるなら、及びあらゆる病を断ち切りたいなら、
欲得佛身、斷一切眾生病者,[VK0202056]
まさに阿耨多羅三藐三菩提心を発すべきだ。」
當發阿耨多羅三藐三菩提心。」[VK0202057]
このように、維摩詰長者は、見舞いに来た人々に応じて説法してやり、
如是長者維摩詰,為諸問疾者,如應說法,[VK0202058]
無数の千の人々に阿耨多羅三藐三菩提心を発させたのです。
令無數千人皆發阿耨多羅三藐三菩提心。[VK0202059]
【維摩経】方便品
身の喩え
維摩詰長者は、このようにさまざまな方便を利用して衆生を益してきましたが、
長者維摩詰,以如是等無量方便饒益眾生。[VK0202001]
いま、方便のひとつとして、病気になったふりをして寝台に横になっていました。
其以方便,現身有疾。[VK0202002]
それを聞いて、国王たち・大臣たち・長者たち・居士たち・婆羅門たち、
以其疾故,國王大臣、長者居士、婆羅門等,[VK0202003]
及び王子たちと官吏たちなど、
及諸王子并餘官屬,[VK0202004]
無数の千の人々が皆、維摩詰を見舞いに行きました。
無數千人,皆往問疾。[VK0202005]
維摩詰は機に乗じて皆に仏法を広く説きました。
其往者,維摩詰因以身疾,廣為說法:[VK0202006]
「御仁たちよ! この身の性質は無常で、
「諸仁者!是身無常、[VK0202007]
強くなく、力なく、堅固ではなく、
無強、無力、無堅、[VK0202008]
すぐ朽ち衰え、当てにできず、
速朽之法,不可信也![VK0202009]
さまざまな苦しみ・悩み・病の集まるものなのだ。
為苦、為惱,眾病所集。[VK0202010]
御仁たちよ! 賢者はこのような身を当てにせぬ。
諸仁者!如此身,明智者所不怙;[VK0202011]
この身は飛沫のように、つかむことができぬ。
是身如聚沫,不可撮摩;[VK0202012]
この身は水の泡のように、久しく存在することができぬ。
是身如泡,不得久立;[VK0202013]
この身は陽炎(水に見える)のように、渇愛(渇して水をほしがるような強い欲望)から生まれるのだ。
是身如炎,從渴愛生;[VK0202014]
この身は芭蕉の幹のように、内部が固くない。
是身如芭蕉,中無有堅;[VK0202015]
この身は幻のように、転倒(真実に反すること)の観念から生まれる。
是身如幻,從顛倒起;[VK0202016]
この身は夢のように、本当の身ではないのだ(魂が暫く寄宿するところ)。
是身如夢,為虛妄見;[VK0202017]
この身は影のように、善悪の業によって成る(影が必ず物に添う)。
是身如影,從業緣現;[VK0202018]
この身はこだまのように、さまざまな因縁によって出現する。
是身如響,屬諸因緣;[VK0202019]
この身は浮雲のように、時々刻々変化して生滅する(新陳代謝する)。
是身如浮雲,須臾變滅;[VK0202020]
この身は稲妻のように、一瞬でもとどまっておらぬ。
是身如電,念念不住;[VK0202021]
この身は大地のように、永遠の主がいない。
是身無主,為如地;[VK0202022]
この身は火のように無我である。
是身無我,為如火;[VK0202023]
この身は風のように寿命がない。
是身無壽,為如風;[VK0202024]
この身は水のようでただ人の形をしているものである。
是身無人,為如水;[VK0202025]
この身は不実で、本質は四大元素(地・水・火・風)の集まりである。
是身不實,四大為家;[VK0202026]
この身は空で、我・我所(我がもの)を離れている。
是身為空,離我我所;[VK0202027]
この身は草・木・瓦礫のように感知しない。
是身無知,如草木瓦礫;[VK0202028]
この身は自主的に行動せず、風の力(気)で運転する(風車のようだ)。
是身無作,風力所轉;[VK0202029]
この身は不浄で、汚いものや嫌悪のものに満ちている。
是身不淨,穢惡充滿;[VK0202030]
この身は偽りで、たとえ沐浴したり、衣食を与えたりしても、最終には必ず滅してなくなる。
是身為虛偽,雖假以澡浴衣食,必歸磨滅;[VK0202031]
この身は災いであり、百一種類の疾病に悩む。
是身為災,百一病惱;[VK0202032]
この身は荒廃した古い井戸のように、老衰が迫っている。
是身如丘井,為老所逼;[VK0202033]
この身は安定せず、死から逃れることができぬ。
是身無定,為要當死;[VK0202034]
この身は、毒蛇・盗賊・廃村の如く、
是身如毒蛇、如怨賊、如空聚,[VK0202035]
五蘊(色・受・想・行・識)と十八界の合成物なのだ。
陰界諸入所共合成。[VK0202036]
御仁たちよ! この身を厭って離れ、仏身を得ることを求めていこう。なぜなら、
諸仁者!此可患厭,當樂佛身。所以者何?[VK0202037]
仏身は、つまり法身(真如の理体)であり、
佛身者即法身也;[VK0202038]
無量の功徳と智慧から誕生し、
從無量功德智慧生,[VK0202039]
戒・定・慧・解脱・解脱知見(知見から解放されること)から誕生し、
從戒、定、慧、解脫、解脫知見生,[VK0202040]
慈・悲・喜・捨から誕生し、
從慈、悲、喜、捨生,[VK0202041]
布施・持戒・忍辱・柔和・勤行・精進・禅定・解脱・
從布施、持戒、忍辱、柔和、勤行精進、禪定、解脫、[VK0202042]
三昧(雑念を除いて心は一つの対象に集中すること)・
三昧、[VK0202043]
多聞(多くの物事を聞いて知っていること)・
多聞、[VK0202044]
智慧・諸波羅蜜から誕生し、
智慧、諸波羅蜜生,[VK0202045]
方便から誕生し、
從方便生,[VK0202046]
六神通(天眼通・天耳通・他心通・神足通・宿命通・漏尽通)から誕生し、
從六通生,[VK0202047]
三明(宿命明・天眼明・漏尽明)から誕生し、
從三明生,[VK0202048]
三十七道品から誕生し、
從三十七道品生,[VK0202049]
止観(止は心中の混乱を止めること。観は智慧を通じて物事の本質を洞察すること)から誕生し、
從止觀生,[VK0202050]
十力・四無所畏(説一切智無所畏・説漏尽無所畏・説障道無所畏・説尽苦道無所畏)・
從十力、四無所畏、[VK0202051]
十八不共法から誕生し、
十八不共法生,[VK0202052]
一切の不善を断ち切ることから誕生し、一切の善を集めることから誕生し、
從斷一切不善法、集一切善法生,[VK0202053]
真実から誕生し、不怠惰から誕生し、
從真實生,從不放逸生;[VK0202054]
如来の身は無量の清浄なことから誕生するのだ。御仁たちよ!
從如是無量清淨法生如來身。諸仁者![VK0202055]
仏身を欲しがるなら、及びあらゆる病を断ち切りたいなら、
欲得佛身、斷一切眾生病者,[VK0202056]
まさに阿耨多羅三藐三菩提心を発すべきだ。」
當發阿耨多羅三藐三菩提心。」[VK0202057]
このように、維摩詰長者は、見舞いに来た人々に応じて説法してやり、
如是長者維摩詰,為諸問疾者,如應說法,[VK0202058]
無数の千の人々に阿耨多羅三藐三菩提心を発させたのです。
令無數千人皆發阿耨多羅三藐三菩提心。[VK0202059]