維摩
【維摩経】方便品
維摩詰、登場!
その時、ヴァイシャーリー大都市に維摩詰という名前の長者がいました。
爾時毘耶離大城中有長者,名維摩詰,[VK0201001]
維摩詰は、すでに無量の如来を供養し、
已曾供養無量諸佛,[VK0201002]
さまざまな善の特質を深く培い、
深植善本,[VK0201003]
無生法忍の境地に至り、
得無生忍;[VK0201004]
無碍な弁才があり、
辯才無礙,[VK0201005]
遊びのように自在に神通力を操ることができ、
遊戲神通,[VK0201006]
諸総持を習得し、
逮諸總持;[VK0201007]
無畏の境地に至り、
獲無所畏,[VK0201008]
悪魔や怨敵を降伏させ、
降魔勞怨;[VK0201009]
仏法の奥深い領域に入り込み、
入深法門,[VK0201010]
よく智慧を利用して衆生を済度し、
善於智度,[VK0201011]
方便の技巧に通じ、
通達方便,[VK0201012]
大願を成就しました。
大願成就;[VK0201013]
維摩詰は、衆生の好みをよく知り、
明了眾生心之所趣,[VK0201014]
また、衆生の資質を見極めることができ、
又能分別諸根利鈍,[VK0201015]
久しく仏道に進み、
久於佛道,[VK0201016]
心はすっかり清浄で、
心已純淑,[VK0201017]
大乗の信念は揺らぎません。
決定大乘;[VK0201018]
彼は言行を慎み、
諸有所作,能善思量;[VK0201019]
仏の威厳が備わっていて、
住佛威儀,[VK0201020]
心が大海のように広く、
心大如海,[VK0201021]
諸如来に称賛され、
諸佛咨嗟![VK0201022]
弟子・帝釈天・梵天王・護世四天王(天下を守護している四天の天王)に敬われていました。
弟子、釋、梵、世主所敬。[VK0201023]
維摩詰は、衆生を済度するために、巧みな方便を利用し、ヴァイシャーリー大都市に住んでいました。
欲度人故,以善方便,居毘耶離;[VK0201024]
(六波羅蜜:布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)
彼は無量の財産を持って人々に施し、これによって貧民を感化します。
資財無量,攝諸貧民;[VK0201025]
戒律を円満に守り、これによって戒律を犯した者を感化します。
奉戒清淨,攝諸毀禁;[VK0201026]
忍辱を行っていて、これによって怒りっぽい者を感化します。
以忍調行,攝諸恚怒;[VK0201027]
一生懸命に仏道に進み、これによって怠惰な人を感化します。
以大精進,攝諸懈怠;[VK0201028]
一心に禅定に入り、これによって心が乱れる者を感化します。
一心禪寂,攝諸亂意;[VK0201029]
如来の智慧を持って、これによって無智の人を感化します。
以決定慧,攝諸無智;[VK0201030]
維摩詰は、白衣(在家の居士)ですが、沙門の戒律と規定に則っています。
雖為白衣,奉持沙門清淨律行;[VK0201031]
在家ですが、三界の物事に染まっていません。
雖處居家,不著三界;[VK0201032]
妻子がいますが、常に梵行(清浄で淫欲のない生活)を行います。
示有妻子,常修梵行;[VK0201033]
眷属がいますが、心は常に皆を離れています。
現有眷屬,常樂遠離;[VK0201034]
立派な装身具を身につけますが、相好で身を荘厳にします。
雖服寶飾,而以相好嚴身;[VK0201035]
飲食をしますが、禅悦(禅定に入る時の愉悦)を味わいとします。
雖復飲食,而以禪悅為味;[VK0201036]
もし維摩詰が賭博の場所に行けば、機を見て衆生を仏道に導きます。
若至博弈戲處,輒以度人;[VK0201037]
諸異道(仏教以外の宗派)と交流しますが、正信(仏教に対する信心)を損ないません。
受諸異道,不毀正信;[VK0201038]
世典(五明すなわち医学・工芸・論理学・哲学・文学)に通じますが、常に仏法を楽しみます。
雖明世典,常樂佛法;[VK0201039]
維摩詰はすべての人々に敬われていて、一番多くの供養を得ました。
一切見敬,為供養中最;[VK0201040]
正法に則って暮らし、これによって長幼(年長者と年少者)を感化します。
執持正法,攝諸長幼;[VK0201041]
すべての経営は繁盛し、俗世の利益を獲得しましたが、それを喜んではいません。
一切治生諧偶,雖獲俗利,不以喜悅;[VK0201042]
衆生を益するように諸繁華街に遊び、
遊諸四衢,饒益眾生;[VK0201043]
衆生を守るために政治に参加し、
入治政法,救護一切;[VK0201044]
人々を大乗に教え導くために諸講堂に行き、
入講論處,導以大乘;[VK0201045]
子供を啓蒙するために諸学校に入りし、
入諸學堂,誘開童蒙;[VK0201046]
人々に淫欲の害を示すために諸遊女屋に出入り、
入諸婬舍,示欲之過;[VK0201047]
人々を修行に導くために諸酒場に入るのです。
入諸酒肆,能立其志;[VK0201048]
維摩詰は、長者たちの指導者として皆にもっともすぐれた仏法を説いてやり、
若在長者,長者中尊,為說勝法;[VK0201049]
居士たちの指導者として皆に貪欲の心を断ち切らせ、
若在居士,居士中尊,斷其貪著;[VK0201050]
刹帝利(王族)たちの指導者として皆に忍辱を教えてやり、
若在剎利,剎利中尊,教以忍辱;[VK0201051]
婆羅門(インドの四種姓で最高位の司祭階級)たちの指導者として皆に傲慢の心を断ち切らせ、
若在婆羅門,婆羅門中尊,除其我慢;[VK0201052]
大臣たちの指導者として皆に正法を教えてやり、
若在大臣,大臣中尊,教以正法;[VK0201053]
王子たちの指導者として皆に忠孝(忠義と孝行)の道を教えてやり、
若在王子,王子中尊,示以忠孝;[VK0201054]
内官(宮中の女官の管理者)たちの指導者として女官を教化し、
若在內官,內官中尊,化政宮女;[VK0201055]
平民たちの指導者として皆に福徳を積む方法を教えてやり、
若在庶民,庶民中尊,令興福力;[VK0201056]
梵天の天人たちの指導者として皆にすぐれた智慧を教えてやり、
若在梵天,梵天中尊,誨以勝慧;[VK0201057]
帝釈天の指導者として彼に無常の理を諭し、
若在帝釋,帝釋中尊,示現無常;[VK0201058]
護世四天王の指導者として衆生を守護しているのです。
若在護世,護世中尊,護諸眾生。[VK0201059]
【維摩経】方便品
維摩詰、登場!
その時、ヴァイシャーリー大都市に維摩詰という名前の長者がいました。
爾時毘耶離大城中有長者,名維摩詰,[VK0201001]
維摩詰は、すでに無量の如来を供養し、
已曾供養無量諸佛,[VK0201002]
さまざまな善の特質を深く培い、
深植善本,[VK0201003]
無生法忍の境地に至り、
得無生忍;[VK0201004]
無碍な弁才があり、
辯才無礙,[VK0201005]
遊びのように自在に神通力を操ることができ、
遊戲神通,[VK0201006]
諸総持を習得し、
逮諸總持;[VK0201007]
無畏の境地に至り、
獲無所畏,[VK0201008]
悪魔や怨敵を降伏させ、
降魔勞怨;[VK0201009]
仏法の奥深い領域に入り込み、
入深法門,[VK0201010]
よく智慧を利用して衆生を済度し、
善於智度,[VK0201011]
方便の技巧に通じ、
通達方便,[VK0201012]
大願を成就しました。
大願成就;[VK0201013]
維摩詰は、衆生の好みをよく知り、
明了眾生心之所趣,[VK0201014]
また、衆生の資質を見極めることができ、
又能分別諸根利鈍,[VK0201015]
久しく仏道に進み、
久於佛道,[VK0201016]
心はすっかり清浄で、
心已純淑,[VK0201017]
大乗の信念は揺らぎません。
決定大乘;[VK0201018]
彼は言行を慎み、
諸有所作,能善思量;[VK0201019]
仏の威厳が備わっていて、
住佛威儀,[VK0201020]
心が大海のように広く、
心大如海,[VK0201021]
諸如来に称賛され、
諸佛咨嗟![VK0201022]
弟子・帝釈天・梵天王・護世四天王(天下を守護している四天の天王)に敬われていました。
弟子、釋、梵、世主所敬。[VK0201023]
維摩詰は、衆生を済度するために、巧みな方便を利用し、ヴァイシャーリー大都市に住んでいました。
欲度人故,以善方便,居毘耶離;[VK0201024]
(六波羅蜜:布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)
彼は無量の財産を持って人々に施し、これによって貧民を感化します。
資財無量,攝諸貧民;[VK0201025]
戒律を円満に守り、これによって戒律を犯した者を感化します。
奉戒清淨,攝諸毀禁;[VK0201026]
忍辱を行っていて、これによって怒りっぽい者を感化します。
以忍調行,攝諸恚怒;[VK0201027]
一生懸命に仏道に進み、これによって怠惰な人を感化します。
以大精進,攝諸懈怠;[VK0201028]
一心に禅定に入り、これによって心が乱れる者を感化します。
一心禪寂,攝諸亂意;[VK0201029]
如来の智慧を持って、これによって無智の人を感化します。
以決定慧,攝諸無智;[VK0201030]
維摩詰は、白衣(在家の居士)ですが、沙門の戒律と規定に則っています。
雖為白衣,奉持沙門清淨律行;[VK0201031]
在家ですが、三界の物事に染まっていません。
雖處居家,不著三界;[VK0201032]
妻子がいますが、常に梵行(清浄で淫欲のない生活)を行います。
示有妻子,常修梵行;[VK0201033]
眷属がいますが、心は常に皆を離れています。
現有眷屬,常樂遠離;[VK0201034]
立派な装身具を身につけますが、相好で身を荘厳にします。
雖服寶飾,而以相好嚴身;[VK0201035]
飲食をしますが、禅悦(禅定に入る時の愉悦)を味わいとします。
雖復飲食,而以禪悅為味;[VK0201036]
もし維摩詰が賭博の場所に行けば、機を見て衆生を仏道に導きます。
若至博弈戲處,輒以度人;[VK0201037]
諸異道(仏教以外の宗派)と交流しますが、正信(仏教に対する信心)を損ないません。
受諸異道,不毀正信;[VK0201038]
世典(五明すなわち医学・工芸・論理学・哲学・文学)に通じますが、常に仏法を楽しみます。
雖明世典,常樂佛法;[VK0201039]
維摩詰はすべての人々に敬われていて、一番多くの供養を得ました。
一切見敬,為供養中最;[VK0201040]
正法に則って暮らし、これによって長幼(年長者と年少者)を感化します。
執持正法,攝諸長幼;[VK0201041]
すべての経営は繁盛し、俗世の利益を獲得しましたが、それを喜んではいません。
一切治生諧偶,雖獲俗利,不以喜悅;[VK0201042]
衆生を益するように諸繁華街に遊び、
遊諸四衢,饒益眾生;[VK0201043]
衆生を守るために政治に参加し、
入治政法,救護一切;[VK0201044]
人々を大乗に教え導くために諸講堂に行き、
入講論處,導以大乘;[VK0201045]
子供を啓蒙するために諸学校に入りし、
入諸學堂,誘開童蒙;[VK0201046]
人々に淫欲の害を示すために諸遊女屋に出入り、
入諸婬舍,示欲之過;[VK0201047]
人々を修行に導くために諸酒場に入るのです。
入諸酒肆,能立其志;[VK0201048]
維摩詰は、長者たちの指導者として皆にもっともすぐれた仏法を説いてやり、
若在長者,長者中尊,為說勝法;[VK0201049]
居士たちの指導者として皆に貪欲の心を断ち切らせ、
若在居士,居士中尊,斷其貪著;[VK0201050]
刹帝利(王族)たちの指導者として皆に忍辱を教えてやり、
若在剎利,剎利中尊,教以忍辱;[VK0201051]
婆羅門(インドの四種姓で最高位の司祭階級)たちの指導者として皆に傲慢の心を断ち切らせ、
若在婆羅門,婆羅門中尊,除其我慢;[VK0201052]
大臣たちの指導者として皆に正法を教えてやり、
若在大臣,大臣中尊,教以正法;[VK0201053]
王子たちの指導者として皆に忠孝(忠義と孝行)の道を教えてやり、
若在王子,王子中尊,示以忠孝;[VK0201054]
内官(宮中の女官の管理者)たちの指導者として女官を教化し、
若在內官,內官中尊,化政宮女;[VK0201055]
平民たちの指導者として皆に福徳を積む方法を教えてやり、
若在庶民,庶民中尊,令興福力;[VK0201056]
梵天の天人たちの指導者として皆にすぐれた智慧を教えてやり、
若在梵天,梵天中尊,誨以勝慧;[VK0201057]
帝釈天の指導者として彼に無常の理を諭し、
若在帝釋,帝釋中尊,示現無常;[VK0201058]
護世四天王の指導者として衆生を守護しているのです。
若在護世,護世中尊,護諸眾生。[VK0201059]