仏事
【維摩経】菩薩行品
ご飯と仏事
その時、アーナンダはお釈迦様に言いました。
爾時阿難白佛言:[VK1102001]
「世尊様! さっきからしているこの香りは、いったい何の香りでしょうか? 嗅いだことのない香りです。」
「世尊!今所聞香,自昔未有,是為何香?」[VK1102002]
お釈迦様はアーナンダに言いました。
佛告阿難:[VK1102003]
「これは衆香仏国の菩薩たちの身が発している香りなのだ。」
「是彼菩薩毛孔之香。」[VK1102004]
シャーリプトラはアーナンダに言いました。
於是舍利弗語阿難言:[VK1102005]
「私たちの身もまたこの香りを発していますぞ!」
「我等毛孔亦出是香。」[VK1102006]
アーナンダ:
阿難言:[VK1102007]
「えっ? どうして身がこの香りを発するのでしょうか?」
「此所從來?」[VK1102008]
シャーリプトラ:
曰:[VK1102009]
「維摩詰長者様は衆香仏国の香積如来様にご飯を乞うていらっしゃいました。
「是長者維摩詰從眾香國取佛餘飯,[VK1102010]
皆がそのご飯を食べてから、すべての毛穴から香りがしています。」
於舍食者,一切毛孔皆香若此。」[VK1102011]
アーナンダは維摩詰に聞きました。
阿難問維摩詰:[VK1102012]
「この香りはいつまで続くのでしょうか?」
「是香氣住當久如?」[VK1102013]
維摩詰:
維摩詰言:[VK1102014]
「ご飯がすっかり消化されてしまうまでだ。」
「至此飯消。」[VK1102015]
アーナンダ:
曰:[VK1102016]
「では、どれくらいかかるのでしょうか?」
「此飯久如當消?」[VK1102017]
維摩詰:
曰:[VK1102018]
「ご飯の効力は七日間続いて、その後、ご飯はすっかり消化されてしまうのだ。
「此飯勢力至于七日,然後乃消。[VK1102019]
そして、アーナンダよ!
又,阿難![VK1102020]
もし正位にまだ至っていない声聞の弟子がそのご飯を食べたら、
若聲聞人未入正位,食此飯者,[VK1102021]
正位に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまうのだ。
得入正位,然後乃消;[VK1102022]
正位に至った者がそのご飯を食べたら、
已入正位,食此飯者,[VK1102023]
心が解脱の境地に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
得心解脫,然後乃消;[VK1102024]
もし大乗の志をまだ発していない者がそのご飯を食べたら、
若未發大乘意,食此飯者,[VK1102025]
大乗の志を発した時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
至發意乃消;[VK1102026]
もし大乗の志を発した者がそのご飯を食べたら、
已發意,食此飯者,[VK1102027]
無生法忍の境地に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
得無生忍,然後乃消;[VK1102028]
無生法忍の境地に至った者がそのご飯を食べたら、
已得無生忍,食此飯者,[VK1102029]
一生補処(次の世は必ず仏になる菩薩の最高位)の位に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
至一生補處,然後乃消。[VK1102030]
例えば、上味という薬を服用したら、体内の毒素を完全に消してしまってから、薬は消えてなくなるだろう。
譬如有藥,名曰上味,其有服者,身諸毒滅,然後乃消;[VK1102031]
まさにそのように、
此飯如是,[VK1102032]
そのご飯が煩悩という毒素を完全に除いてしまったら、ご飯はすっかり消化されてしまうのだ。」
滅除一切諸煩惱毒,然後乃消。」[VK1102033]
アーナンダはお釈迦様に言いました。
阿難白佛言:[VK1102034]
「これは未曾有でございます! 世尊様!
「未曾有也!世尊![VK1102035]
この香ばしいご飯が仏事を行うことができるなど!」
如此香飯能作佛事。」[VK1102036]
お釈迦様:
佛言:[VK1102037]
「そのとおり! アーナンダよ!
「如是,如是!阿難![VK1102038]
如来の輝きによって仏事を行う仏土がある。
或有佛土以佛光明而作佛事,[VK1102039]
菩薩を派遣して仏事を行う仏土がある。
有以諸菩薩而作佛事,[VK1102040]
幻の分身を利用して仏事を行う仏土がある。
有以佛所化人而作佛事,[VK1102041]
菩提樹によって仏事を行う仏土がある。
有以菩提樹而作佛事,[VK1102042]
袈裟・座布団によって仏事を行う仏土がある。
有以佛衣服、臥具而作佛事,[VK1102043]
食事によって仏事を行う仏土がある。
有以飯食而作佛事,[VK1102044]
庭園・展望台によって仏事を行う仏土がある。
有以園林臺觀而作佛事,[VK1102045]
如来の三十二相八十種好によって仏事を行う仏土がある。
有以三十二相、八十隨形好而作佛事,[VK1102046]
如来の身によって仏事を行う仏土がある。
有以佛身而作佛事,[VK1102047]
虚空によって仏事を行う仏土がある。
有以虛空而作佛事;[VK1102048]
衆生はいろいろな物事によって仏道に入る可能性があるからだ。
眾生應以此緣得入律行。[VK1102049]
また、夢・幻・影・響き・鏡中の像・水中の月影・陽炎などの例えによって仏事を行う仏土がある。
有以夢、幻、影、響、鏡中像、水中月、熱時炎如是等喻,而作佛事;[VK1102050]
声・言語・文字によって仏事を行う仏土がある。
有以音聲、語言、文字而作佛事;[VK1102051]
沈黙・無言・話なし・表示なし・無心・無作・無為によって仏事を行うという清浄な仏土もあるのだ。
或有清淨佛土,寂寞無言、無說、無示、無識、無作、無為,而作佛事。[VK1102052]
アーナンダよ! このように、
如是,阿難![VK1102053]
諸如来のあらゆる威儀と行いは、全部仏事を行うことができるのだ。」
諸佛威儀進止,諸所施為,無非佛事。[VK1102054]
【維摩経】菩薩行品
ご飯と仏事
その時、アーナンダはお釈迦様に言いました。
爾時阿難白佛言:[VK1102001]
「世尊様! さっきからしているこの香りは、いったい何の香りでしょうか? 嗅いだことのない香りです。」
「世尊!今所聞香,自昔未有,是為何香?」[VK1102002]
お釈迦様はアーナンダに言いました。
佛告阿難:[VK1102003]
「これは衆香仏国の菩薩たちの身が発している香りなのだ。」
「是彼菩薩毛孔之香。」[VK1102004]
シャーリプトラはアーナンダに言いました。
於是舍利弗語阿難言:[VK1102005]
「私たちの身もまたこの香りを発していますぞ!」
「我等毛孔亦出是香。」[VK1102006]
アーナンダ:
阿難言:[VK1102007]
「えっ? どうして身がこの香りを発するのでしょうか?」
「此所從來?」[VK1102008]
シャーリプトラ:
曰:[VK1102009]
「維摩詰長者様は衆香仏国の香積如来様にご飯を乞うていらっしゃいました。
「是長者維摩詰從眾香國取佛餘飯,[VK1102010]
皆がそのご飯を食べてから、すべての毛穴から香りがしています。」
於舍食者,一切毛孔皆香若此。」[VK1102011]
アーナンダは維摩詰に聞きました。
阿難問維摩詰:[VK1102012]
「この香りはいつまで続くのでしょうか?」
「是香氣住當久如?」[VK1102013]
維摩詰:
維摩詰言:[VK1102014]
「ご飯がすっかり消化されてしまうまでだ。」
「至此飯消。」[VK1102015]
アーナンダ:
曰:[VK1102016]
「では、どれくらいかかるのでしょうか?」
「此飯久如當消?」[VK1102017]
維摩詰:
曰:[VK1102018]
「ご飯の効力は七日間続いて、その後、ご飯はすっかり消化されてしまうのだ。
「此飯勢力至于七日,然後乃消。[VK1102019]
そして、アーナンダよ!
又,阿難![VK1102020]
もし正位にまだ至っていない声聞の弟子がそのご飯を食べたら、
若聲聞人未入正位,食此飯者,[VK1102021]
正位に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまうのだ。
得入正位,然後乃消;[VK1102022]
正位に至った者がそのご飯を食べたら、
已入正位,食此飯者,[VK1102023]
心が解脱の境地に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
得心解脫,然後乃消;[VK1102024]
もし大乗の志をまだ発していない者がそのご飯を食べたら、
若未發大乘意,食此飯者,[VK1102025]
大乗の志を発した時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
至發意乃消;[VK1102026]
もし大乗の志を発した者がそのご飯を食べたら、
已發意,食此飯者,[VK1102027]
無生法忍の境地に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
得無生忍,然後乃消;[VK1102028]
無生法忍の境地に至った者がそのご飯を食べたら、
已得無生忍,食此飯者,[VK1102029]
一生補処(次の世は必ず仏になる菩薩の最高位)の位に至った時、ご飯はすっかり消化されてしまう。
至一生補處,然後乃消。[VK1102030]
例えば、上味という薬を服用したら、体内の毒素を完全に消してしまってから、薬は消えてなくなるだろう。
譬如有藥,名曰上味,其有服者,身諸毒滅,然後乃消;[VK1102031]
まさにそのように、
此飯如是,[VK1102032]
そのご飯が煩悩という毒素を完全に除いてしまったら、ご飯はすっかり消化されてしまうのだ。」
滅除一切諸煩惱毒,然後乃消。」[VK1102033]
アーナンダはお釈迦様に言いました。
阿難白佛言:[VK1102034]
「これは未曾有でございます! 世尊様!
「未曾有也!世尊![VK1102035]
この香ばしいご飯が仏事を行うことができるなど!」
如此香飯能作佛事。」[VK1102036]
お釈迦様:
佛言:[VK1102037]
「そのとおり! アーナンダよ!
「如是,如是!阿難![VK1102038]
如来の輝きによって仏事を行う仏土がある。
或有佛土以佛光明而作佛事,[VK1102039]
菩薩を派遣して仏事を行う仏土がある。
有以諸菩薩而作佛事,[VK1102040]
幻の分身を利用して仏事を行う仏土がある。
有以佛所化人而作佛事,[VK1102041]
菩提樹によって仏事を行う仏土がある。
有以菩提樹而作佛事,[VK1102042]
袈裟・座布団によって仏事を行う仏土がある。
有以佛衣服、臥具而作佛事,[VK1102043]
食事によって仏事を行う仏土がある。
有以飯食而作佛事,[VK1102044]
庭園・展望台によって仏事を行う仏土がある。
有以園林臺觀而作佛事,[VK1102045]
如来の三十二相八十種好によって仏事を行う仏土がある。
有以三十二相、八十隨形好而作佛事,[VK1102046]
如来の身によって仏事を行う仏土がある。
有以佛身而作佛事,[VK1102047]
虚空によって仏事を行う仏土がある。
有以虛空而作佛事;[VK1102048]
衆生はいろいろな物事によって仏道に入る可能性があるからだ。
眾生應以此緣得入律行。[VK1102049]
また、夢・幻・影・響き・鏡中の像・水中の月影・陽炎などの例えによって仏事を行う仏土がある。
有以夢、幻、影、響、鏡中像、水中月、熱時炎如是等喻,而作佛事;[VK1102050]
声・言語・文字によって仏事を行う仏土がある。
有以音聲、語言、文字而作佛事;[VK1102051]
沈黙・無言・話なし・表示なし・無心・無作・無為によって仏事を行うという清浄な仏土もあるのだ。
或有清淨佛土,寂寞無言、無說、無示、無識、無作、無為,而作佛事。[VK1102052]
アーナンダよ! このように、
如是,阿難![VK1102053]
諸如来のあらゆる威儀と行いは、全部仏事を行うことができるのだ。」
諸佛威儀進止,諸所施為,無非佛事。[VK1102054]