衆香仏国

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 しゅこうふっこく


その時、シャーリプトラはこう思いました。

於是舍利弗心念:[VK1001001]

「そろそろお昼ご飯の時間です。皆のお食事はいかがしましょうか?」

「日時欲至,此諸菩薩當於何食?」[VK1001002]


ゆいきつはシャーリプトラの思いに気づき、彼に言いました。

時維摩詰知其意而語言:[VK1001003]

にょらい様の弟子は飲食のことを追求すべきではないのだ。

「佛說八解脫,仁者受行,[VK1001004]

仏法を聴きながら食事を思うとはみっともない。

豈雜欲食而聞法乎?[VK1001005]

もし食事を欲しがるなら、少し待ちなさい、お前に食べたことのないご飯を用意してやろう。」

若欲食者,且待須臾,當令汝得未曾有食。」[VK1001006]


それで、ゆいきつざんまいに入り、しんつうりきを使ってしゅこうという名前の仏国を示しました。

時維摩詰即入三昧,以神通力示諸大眾上方界分,[VK1001007]

しゅこう仏国はこの世界の上方の四十二ごうしゃの仏土を通り過ぎたところに位しています。

過四十二恒河沙佛土,有國名眾香,[VK1001008]

仏土のにょらいこうしゃくといい、いまざいせいです。

佛號香積,今現在。[VK1001009]


その仏国はとてもよい香りがして、その香りは、じっぽうの仏国にある人間界と天界において一番香ばしいのです。

其國香氣,比於十方諸佛世界人、天之香,最為第一。[VK1001010]

その仏国にはしょうもんびゃくぶつという名がなく、

彼土無有聲聞、辟支佛名,[VK1001011]

修行者はすべてしょうじょうの大さつであり、こうしゃくにょらいに従って修行します。

唯有清淨大菩薩眾,佛為說法。[VK1001012]

その世界のすべては匂いのよいもので構成され、ろうかくゆうどうていえん等々皆良い香りがしています。

其界一切皆以香作樓閣,經行香地,苑園皆香。[VK1001013]

また、食べ物の香りは、じっぽうすうの世界に広がって漂いました。

其食香氣,周流十方無量世界。[VK1001014]


その時、こうしゃくにょらいさつたちと一緒に座って食事をしていました。

時彼佛與諸菩薩方共坐食,[VK1001015]

しゅこう仏国のてんにんたちは皆香厳と呼ばれ、すでにのくさんみゃくさんだいしんを発し、

有諸天子皆號香嚴,悉發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK1001016]

常にこうしゃくにょらいさつたちをようしています。

供養彼佛及諸菩薩,[VK1001017]


ゆいきつの部屋にいた人々は皆しゅこう仏国のことが見られました。

此諸大眾莫不目見。[VK1001018]


その時、ゆいきつさつたちに聞きました。

時維摩詰問眾菩薩言:[VK1001019]

「御仁たちよ! 誰かしゅこう仏国へ行って、こうしゃくにょらい様にご飯を願ってくることができるか?」

「諸仁者!誰能致彼佛飯?」[VK1001020]

自分はもんじゅさつに及ばないと思って、皆はちんもくしていました。

以文殊師利威神力故,咸皆默然。[VK1001021]


ゆいきつは言いました。

維摩詰言:[VK1001022]

「やれやれ! 自薦する者はいないのか? 皆さん、恥ずかしくないのか?」

「仁此大眾,無乃可恥?」[VK1001023]


もんじゅさつは言いました。

文殊師利曰:[VK1001024]

にょらい様のおっしゃるとおり、後輩をけいしてはなりません。」

「如佛所言,勿輕未學。」[VK1001025]


それで、ゆいきつは座ったまま自分の前に幻のさつを作り出しました。

於是維摩詰不起于座,居眾會前化作菩薩——[VK1001026]

幻のさつにょらいそうごうが備わっていて、身がこうこうと輝いていて、

相好光明,[VK1001027]

げんどくがすぐれていて、部屋ではひときわ目立ちました。

威德殊勝,蔽於眾會——[VK1001028]


ゆいきつは幻のさつに告げました。

而告之曰:[VK1001029]

「上方の四十二ごうしゃの仏土を通り過ぎたところに、しゅこうという名前の仏国があり、

「汝往上方界分,度如四十二恒河沙佛土,有國名眾香,[VK1001030]

こうしゃくとおっしゃるにょらい様がいらっしゃる。

佛號香積,[VK1001031]

その御方はいまさつたちと一緒にお食事をしておいでなのだ。

與諸菩薩方共坐食。[VK1001032]

お前はそこに行って、こうしゃくにょらい様にこう伝えなさい。

汝往到彼,如我辭曰:[VK1001033]


ゆいきつにょらい様のご足下にへいふくいたします。

『維摩詰稽首世尊足下![VK1001034]

にょらい様にりょうの敬意を表します。

致敬無量,[VK1001035]

にょらい様は、最近、いかがでいらっしゃいますか? 

問訊起居,[VK1001036]

お元気でいらっしゃいますか? すべてじゅん調ちょうでいらっしゃいますか? 

少病少惱,氣力安不?[VK1001037]

お願いいたします。にょらい様はお食事の残りを施してくださいますでしょうか? 

願得世尊所食之餘,[VK1001038]

いましゃ世界で行っている仏事(しゅじょうさいすること)のため。

當於娑婆世界施作佛事,[VK1001039]

法会の中のしょうじょうの教えを好む者はだいじょうに入ることができるように、

令此樂小法者得弘大道,[VK1001040]

また、にょらい様のご名声は世間に知れ渡ることにもなるのです』と。」

亦使如來名聲普聞。』」[VK1001041]


それで、幻のさつは皆の目の前で上方に向かって飛び去りました。

時化菩薩即於會前,昇于上方。[VK1001042]

まもなく幻のさつしゅこう仏国に到着し、へいふくして額をにょらいのお足につけて拝み、

舉眾皆見其去,到眾香界,禮彼佛足,[VK1001043]

そして、こうしゃくにょらいに言いました。

又聞其言:[VK1001044]

ゆいきつを代表してにょらい様のご足下にへいふくいたします。

「維摩詰稽首世尊足下![VK1001045]

にょらい様にりょうの敬意を表します。

致敬無量,[VK1001046]

にょらい様は、最近いかがでいらっしゃいますか? 

問訊起居,[VK1001047]

お元気でいらっしゃいますか? すべてじゅん調ちょうでいらっしゃいますか? 

少病少惱,氣力安不?[VK1001048]

お願いいたします。にょらい様はお食事の残りを施してくださいますでしょうか? 

願得世尊所食之餘,[VK1001049]

いましゃ世界で行っている仏事(しゅじょうさいすること)のため。

欲於娑婆世界施作佛事,[VK1001050]

法会の中のしょうじょうの教えを好む者はだいじょうに入ることができるように、

使此樂小法者得弘大道,[VK1001051]

また、にょらい様のご名声は世間に知れ渡ることにもなるのです。」

亦使如來名聲普聞。」[VK1001052]


しゅこう仏国のさつたちは幻のさつを見て、であるとさんたんし、そしてこうしゃくにょらいに問いました。

彼諸大士見化菩薩,歎未曾有:[VK1001053]

「そちらの御方はどこからいらっしゃったのでしょうか? 

「今此上人從何所來?[VK1001054]

しゃ世界はどこにあるのでしょうか? 

娑婆世界為在何許?[VK1001055]

しょうじょうの教えを好む者とはいったいどういう意味なのですか? どうかお教えください。」

云何名為樂小法者?」即以問佛。[VK1001056]


こうしゃくにょらいは答えました。

佛告之曰:[VK1001057]

「この世界の下方の四十二ごうしゃの仏土を通り過ぎたところに、しゃという世界がある。

「下方度如四十二恒河沙佛土,有世界名娑婆,[VK1001058]

その世界のにょらいは、シャと言い、いまざいせいだ。

佛號釋迦牟尼,今現在。[VK1001059]

その方はじょくあくしょうじょうの教えを好む者に広く仏法を説いている。

於五濁惡世,為樂小法眾生敷演道教。[VK1001060]

その世界にはゆいきつというさつがいて、ゆいきつだつきょうに至り、

彼有菩薩名維摩詰,住不可思議解脫,[VK1001061]

さつたちに説法してあげるために、幻のさつをここに派遣したのだ。

為諸菩薩說法,故遣化來,[VK1001062]

同時に、私の名声を広く世間にあげ、しゅこう仏国のことを広く世人に知らせ、

稱揚我名,并讚此土,[VK1001063]

また、この世界のさつたちのどくを増加させるのだ。」

令彼菩薩增益功德。」[VK1001064]


しゅこう仏国のさつこうしゃくにょらいに問いました。

彼菩薩言:[VK1001065]

ゆいきつ様の力はいったいどれほどでしょうか? 

「其人何如,[VK1001066]

このような幻のさつを作り出すことがおできになり、

乃作是化?[VK1001067]

どくしんそくつう(どこにでもざいに行ける力)がこのような程度にお達しになっているとは。」

德力無畏,神足若斯!」[VK1001068]


こうしゃくにょらいは答えました。

佛言:[VK1001069]

ゆいきつ様の力はとても強いのだ! 

「甚大![VK1001070]

じっぽうのすべての世界に幻のさつを派遣し、仏事を行ってしゅじょうを益しているのだ。」

一切十方皆遣化往,施作佛事饒益眾生。」[VK1001071]


それで、こうしゃくにょらいしゅこうはち(いろいろな香りがしているはち)に香ばしいご飯をたっぷり盛り付け、幻のさつに手渡しました。

於是香積如來以眾香鉢盛滿香飯,與化菩薩。[VK1001072]

その時、九百万人のしゅこう仏国のさつは共に願いました。

時彼九百萬菩薩俱發聲言:[VK1001073]

「私どもはしゃ世界に参ってシャにょらい様をよういたしましょう。

「我欲詣娑婆世界供養釋迦牟尼佛,[VK1001074]

そしてゆいきつ様と他のさつたちにお目にかかるのです。」

并欲見維摩詰等諸菩薩眾。」[VK1001075]


こうしゃくにょらいは答えました。

佛言:[VK1001076]

「行きなさい。ただし、身の香りを隠しなさい。

「可往。攝汝身香,[VK1001077]

しゃ世界のしゅじょうがこの香りに迷わないように。

無令彼諸眾生起惑著心;[VK1001078]

また、ほんらいの姿を変え、その国土の新米のさつに劣等感を抱かせてはならない。

又當捨汝本形,勿使彼國求菩薩者,而自鄙恥;[VK1001079]

また、その国土が下等だなどけいべつの念を抱いてはならない。なぜなら、

又汝於彼莫懷輕賤,而作礙想。所以者何?[VK1001080]

じっぽうの国土はくうのようであるからだ。

十方國土,皆如虛空,[VK1001081]

また、諸にょらいしょうじょうの教えを好む者をきょうするために、仏土のしょうじょうな姿を不完全に現しているのだ。」

又諸佛為欲化諸樂小法者,不盡現其清淨土耳!」[VK1001082]



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