不二の法門に入る

【維摩経ゆいまきょう】入不二法門品にゅうふにほうもんほん

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　不ふ二に法ほう門もん（二）

善ぜん意い菩ぼ薩さつ：

善意菩薩曰：［VK0902001］

「生しょう死じと涅ね槃はんは二です。

「生死、涅槃為二。［VK0902002］

生しょう死じの本ほん質しつを見み極きわめれば、実は生しょう死じがなく、束そく縛ばくも解げ脱だつもなく、生しょう滅めつもないと理解します。

若見生死性，則無生死，無縛無解，不然不滅，如是解者，［VK0902003］

これが不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

是為入不二法門。」［VK0902004］

現げん見けん菩ぼ薩さつ：

現見菩薩曰：［VK0902005］

「尽じん（ 尽きること）と不ふ尽じん（尽きないこと）は二です。

「盡、不盡為二。［VK0902006］

もしすべてが最終的に尽きれば（なくなる）、あるいは尽きなければ、

法若究竟盡、若不盡，［VK0902007］

どちらも無尽じん（ 尽きのない）です。

皆是無盡相；［VK0902008］

無む尽じんはつまり空であり、空は尽きることも尽きないこともないのです。

無盡相即是空，空則無有盡、不盡相。［VK0902009］

これを悟ることが、不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

如是入者，是為入不二法門。」［VK0902010］

普ふ守しゅ菩ぼ薩さつ：

普守菩薩曰：［VK0902011］

「我と無む我がは二です。

「我、無我為二。［VK0902012］

もともと我というものが存在しないのに、無む我がというものが存在するのでしょうか？　

我尚不可得，非我何可得？［VK0902013］

我の本ほん質しつを見み極きわめ、我と無む我がの観かん念ねんを起こさない。

見我實性者，不復起二，［VK0902014］

これが不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

是為入不二法門。」［VK0902015］

電でん天てん菩ぼ薩さつ：

電天菩薩曰：［VK0902016］

「明みょう（ 真理を悟った状じょう態たい）と無む明みょうは二です。

「明、無明為二。［VK0902017］

無む明みょうの本ほん質しつはつまり明であり（智ち慧えは煩ぼん悩のうに覆われているだけ）、

無明實性即是明，［VK0902018］

さらに明という観かん念ねんを断ち切り、すべての区く別べつを離はなれ て平等の境きょう地ちに入ることが、

明亦不可取，離一切數，於其中平等無二者，［VK0902019］

不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

是為入不二法門。」［VK0902020］

喜き見けん菩ぼ薩さつ：

喜見菩薩曰：［VK0902021］

「色しき（ 物）と色しき空くう（物がなく空である）は二です。

「色、色空為二。［VK0902022］

色はつまり空であり、これは色が滅してから空になるという意味ではなく、

色即是空，非色滅空，［VK0902023］

色の本ほん質しつはもともと空なのです（因いん縁ねんによって生しょう滅めつする）。

色性自空；［VK0902024］

受・想・行・識も同じなのです。

如是，受、想、行、識、［VK0902025］

識と空は二です。

識空為二，［VK0902026］

識はつまり空であり、これは識が滅してから空になるという意味ではなく、

識即是空，非識滅空，［VK0902027］

識の本ほん質しつは空なのです。

識性自空，［VK0902028］

これを悟ることが、不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

於其中而通達者，是為入不二法門。」［VK0902029］

明みょう相そう菩ぼ薩さつ：

明相菩薩曰：［VK0902030］

「四大（地・水・火・風）と四大の空は二です。

「四種異、空種異為二。［VK0902031］

四大の本ほん質しつはつまり空です。なぜなら、

四種性即是空種性，［VK0902032］

四大の過去（起こる前）も未来（滅した後）も現在（生しょう滅めつして変へん化かしている）も空であるからです。

如前際、後際空故，中際亦空。［VK0902033］

そのように四大の本ほん質しつを悟ることが、不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

若能如是知諸種性者，是為入不二法門。」［VK0902034］

妙みょう意い菩ぼ薩さつ：

妙意菩薩曰：［VK0902035］

「眼（目）と色しき（ 色しき塵じん。光線・映像）は二です。

「眼、色為二。［VK0902036］

もし目の性質（鏡のように映像を映し出すだけ）を悟れば、

若知眼性，［VK0902037］

（鏡のように）対象に対して欲したり、嫌ったり、迷ったりしません。

於色不貪、不恚、不癡，［VK0902038］

これは寂じゃく滅めつの境きょう地ちなのです。

是名寂滅；［VK0902039］

同様に、耳と声・鼻と匂い・舌と味・身と触覚・意（意い識しき）と法（概念）は二です。

如是，耳、聲，鼻、香，舌、味，身、觸，意、法為二，［VK0902040］

もし意の性質を悟れば、法に対して欲したり、嫌ったり、迷ったりしません。

若知意性，於法不貪、不恚、不癡，［VK0902041］

これは寂じゃく滅めつの境きょう地ちなのです。

是名寂滅，［VK0902042］

この境きょう地ちに入ることが、不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

安住其中，是為入不二法門。」［VK0902043］

無む尽じん意い菩ぼ薩さつ：

無盡意菩薩曰：［VK0902044］

「布ふ施せと廻え向こう一いっ切さい智（功く徳どくによって廻え向こうして一いっ切さい智を求めること）は二です。

「布施、迴向一切智為二。［VK0902045］

布ふ施せの報いはつまり廻え向こう一いっ切さい智です。

布施性即是迴向一切智性，［VK0902046］

同様に、持じ戒かい・忍にん辱にく・精しょう進じん・禅ぜん定じょう・智ち慧えと廻え向こう一いっ切さい智は二です。

如是，持戒、忍辱、精進、禪定、智慧、迴向一切智為二，［VK0902047］

智ち慧えの報いはつまり廻え向こう一いっ切さい智です。

智慧性即是迴向一切智性，［VK0902048］

これを悟って一いっ相そうに入ることが、不ふ二に法ほう門もんに入ることです。」

於其中入一相者，是為入不二法門。」［VK0902049］


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