文殊

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 > 1.文殊菩薩-対-維摩詰!


 もんじゅさつ-対-ゆいきつ


その時、おシャ様はもんじゅさつ第一のさつしょう れる)に言いました。

爾時佛告文殊師利:[VK0501001]

「お前がゆいきついに行ってきなさい。」

「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0501002]


もんじゅさつは語りました。

文殊師利白佛言:[VK0501003]

そん様! そのしょうにんとくたくえつした聖者)に応対するのは難しいのです。

「世尊!彼上人者,難為詶對。[VK0501004]

その方は、万物のじっそうに深く通じ、

深達實相,[VK0501005]

説法は上手であり、

善說法要,[VK0501006]

べんさいは立て板に水を流すようであり、

辯才無滯,[VK0501007]

けつであり、

智慧無礙;[VK0501008]

さつのことについてすべて知っていて、

一切菩薩法式悉知,[VK0501009]

にょらい様がぞうした心得について知らないことはなく、

諸佛祕藏無不得入;[VK0501010]

すべての悪魔をこうふくさせることができ、

降伏眾魔,[VK0501011]

遊びのようにしんつうりきを操り、

遊戲神通,[VK0501012]

ほう便べんの力はすでに極致のきょうに至りました。

其慧方便,皆已得度。[VK0501013]

それでも、私はそん様のごせいしんせいな指示)を拝受し、ゆいきついに参ります。」

雖然,當承佛聖旨,詣彼問疾。」[VK0501014]


それで、そこにいたさつたち・大弟子たち・

於是眾中諸菩薩、大弟子、[VK0501015]

たいしゃくてんぼんてんのうてんのうなどの人々は皆こう思いました。

釋、梵、四天王等,咸作是念:[VK0501016]

もんじゅさつ様はゆいきつ様をお訪ねになり、

「今二大士文殊師利、維摩詰共談,[VK0501017]

素晴らしい仏法をお説きになるに違いないのだ!」

必說妙法!」[VK0501018]


すぐ、八千人のさつ・五百人のしょうもん・百千人のてんにんは皆、もんじゅさつに同行することを願いました。

即時八千菩薩、五百聲聞、百千天人皆欲隨從。[VK0501019]

そこで、もんじゅさつさつたち・大弟子たち・てんにんたちにうやうやしく取り囲まれて、

於是文殊師利與諸菩薩、大弟子眾及諸天人,恭敬圍繞,[VK0501020]

皆と一緒にヴァイシャーリー大都市に入っていきました。

入毘耶離大城。[VK0501021]


その時、ゆいきつちょうしゃはこう思いました。

爾時長者維摩詰心念:[VK0501022]

「やれやれ! もんじゅさつが大勢の人々と共にやってくるのか!」

「今文殊師利與大眾俱來!」[VK0501023]

ゆいきつは、すぐしんつうりきを使ってしつないを空っぽにし、

即以神力空其室內,[VK0501024]

すべてのめし使つかいたちを別の場所へてんそうしておき、

除去所有及諸侍者;[VK0501025]

ただ一つしんだいが置いてある部屋で、病気になったふりをして横になっていました。

唯置一床,以疾而臥。[VK0501026]


そして、もんじゅさつが皆とゆいきつていたくに入ると、

文殊師利既入其舍,[VK0501027]

部屋は空っぽで何もなく、ただゆいきつ一人がしんだいに横になっている姿が目に入りました。

見其室空,無諸所有,獨寢一床。[VK0501028]


その時、ゆいきつもんじゅさつに言いました。

時維摩詰言:[VK0501029]

「いらっしゃい、もんじゅさつよ! 

「善來文殊師利![VK0501030]

お前は来ていないままここに来た。

不來相而來,[VK0501031]

会わないまま私に面会した。」

不見相而見。」[VK0501032]


もんじゅさつは語りました。

文殊師利言:[VK0501033]

「そのとおりです! ! 

「如是!居士![VK0501034]

もしすでに来ていたら、さらに来ることができないのです。

若來已,更不來;[VK0501035]

もしすでに去っていたら、さらに去ることができないのです。なぜなら、

若去已,更不去。所以者何?[VK0501036]

来るということは来る起点がないのです。

來者無所從來,[VK0501037]

去るということは帰る終点がないのです。

去者無所至,[VK0501038]

見えるものは実は見えないのです。

所可見者,更不可見。[VK0501039]

    (しんにょじっそうのこと)


それより、! ご病気の具合はいかがでしょうか? 

且置是事,居士!是疾寧可忍不?[VK0501040]

ご回復はじゅん調ちょうでしょうか? 

療治有損,不至增乎?[VK0501041]

そん様は心よりおいを申し上げております。

世尊慇懃致問無量。[VK0501042]

! このご病気は何が原因で起こったのでしょうか? 

居士!是疾何所因起?[VK0501043]

いつからご病気になりましたか? 

其生久如?[VK0501044]

どのように治療しますか?」

當云何滅?」[VK0501045]


ゆいきつは答えました。

維摩詰言:[VK0501046]

まいから愛というしゅうちゃくが生じ(りんの根本の原因)、そしてしゅうの病が起こる。

「從癡、有愛,則我病生。[VK0501047]

しゅじょうは病気にかかっているので私も病気にかかっているのだ。

以一切眾生病,是故我病;[VK0501048]

もしすべてのしゅじょうの病気が治ったら、その時私の病気も治る。なぜなら、

若一切眾生病滅,則我病滅。所以者何?[VK0501049]

さつしゅじょうのためにしょうりんに入っているから、

菩薩為眾生故入生死,[VK0501050]

しょうがあれば、必ず病気にかかるだろう。

有生死則有病;[VK0501051]

もししゅじょうが病気からはな ることができれば、その時、さつが病気にかかることはないのだ。

若眾生得離病者,則菩薩無復病。[VK0501052]


例えば、ある父母にただ一人の子がいるとする。

譬如長者唯有一子。[VK0501053]

その唯一の子供が病気になったら、両親も心配しすぎて病気になるだろう。

其子得病,父母亦病;[VK0501054]

もし子供の病気が治ったら、両親の病気もまた治るのだ。

若子病愈,父母亦愈。[VK0501055]

さつはまさにそのように、子供を愛するかのようにしゅじょうを愛し、

菩薩如是,於諸眾生愛之若子。[VK0501056]

しゅじょうが病気になれば、さつもまた病気になり、

眾生病,則菩薩病;[VK0501057]

しゅじょうの病気が治ったら、さつの病気も治るのだ。

眾生病愈,菩薩亦愈。[VK0501058]


また、『この病気は何が原因で起こったか』と言ったが、

又言『是疾何所因起?』[VK0501059]

さつが病気になった原因は、大の心を持っているからだ。」

菩薩病者,以大悲起。」[VK0501060]


もんじゅさつ

文殊師利言:[VK0501061]

「ところで、! どうしてこの部屋は空っぽで、めし使つかいがいないのでしょうか?」

「居士!此室何以空無侍者?」[VK0501062]


ゆいきつ

維摩詰言:[VK0501063]

「諸にょらい様の国土も同じ空(空っぽ)だ(いんねんによって出現し、ほんしつは空である)。」

「諸佛國土亦復皆空。」[VK0501064]


もんじゅさつ

又問:[VK0501065]

「空とは何の空(ない)ですか?」

「以何為空?」[VK0501066]


ゆいきつ

答曰:[VK0501067]

「空の空だ。」

「以空空。」[VK0501068]


もんじゅさつ

又問:[VK0501069]

「なぜさらに空を空にするのですか?」

「空何用空?」[VK0501070]


ゆいきつ

答曰:[VK0501071]

「空のべつ(空・ゆう もなく、これこそ本当の空だ(空の概念があれば、つまり心には空というものがある。それゆえ、空の概念さえも除く)。」

「以無分別空故空。」[VK0501072]


もんじゅさつ

又問:[VK0501073]

「空をべつすることができるのでしょうか?」

「空可分別耶?」[VK0501074]


ゆいきつ

答曰:[VK0501075]

べつほんしつも同じ空だ(思想は実在ではない)。」

「分別亦空。」[VK0501076]


もんじゅさつ

又問:[VK0501077]

「どこから空の意味を探し求めるべきでしょうか?」

「空當於何求?」[VK0501078]


ゆいきつ

答曰:[VK0501079]

「六十二見(六十二種類のどうじゃけん。空のたいりつ)から探し求めるべきだ。」

「當於六十二見中求。」[VK0501080]


もんじゅさつ

又問:[VK0501081]

「どこから六十二見を探し求めるべきでしょうか?」

「六十二見當於何求?」[VK0501082]


ゆいきつ

答曰:[VK0501083]

「諸にょらい様のだつきょうじゃけんを破ってしまったきょう)から探し求めるべきだ。」

「當於諸佛解脫中求。」[VK0501084]


もんじゅさつ

又問:[VK0501085]

「どこから諸にょらい様のだつきょうを探し求めるべきでしょうか?」

「諸佛解脫當於何求?」[VK0501086]


ゆいきつ

答曰:[VK0501087]

「さまざまなぼんのうだつたいりつ)から探し求めるべきだ。

「當於一切眾生心行中求。[VK0501088]


また、さっきお前は『どうしてめし使つかいがいないか』と聞いたが、

又仁所問:『何無侍者?』[VK0501089]

すべての悪魔とどうは私のめし使つかいなのだ。なぜなら、

一切眾魔及諸外道,皆吾侍也。所以者何?[VK0501090]

悪魔はしょうりんを好み、

眾魔者樂生死,[VK0501091]

さつしゅじょうのためにしょうりんに入り、

菩薩於生死而不捨;[VK0501092]

どうはさまざまなじゃけんを好み、

外道者樂諸見,[VK0501093]

さつはさまざまなじゃけんに対して、心が動かないからだ。」

菩薩於諸見而不動。」[VK0501094]



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