優波離
【維摩経】弟子品
ウパーリ尊者
そこで、お釈迦様はウパーリ尊者(持律第一)に言いました。
佛告優波離:[VK0308001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0308002]
ウパーリはお釈迦様に語りました。
優波離白佛言:[VK0308003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0308004]
かつて、ある二人の比丘が戒律を犯しましたが、
憶念昔者,有二比丘犯律行,[VK0308005]
恥ずかしくて世尊様に懺悔する勇気はなかったのです。
以為恥,不敢問佛,[VK0308006]
彼らは来て私に言いました。
來問我言:[VK0308007]
『ウパーリさん! 何と言うか、
『唯,優波離![VK0308008]
私たちは戒律を犯しましたが、恥ずかしくて世尊様に懺悔する勇気がないのです。
我等犯律,誠以為恥,不敢問佛,[VK0308009]
お願いします。どうか私たちを疑惑と後悔から解放し、
願解疑悔,[VK0308010]
私たちの苦しみを消してください。』
得免斯咎!』[VK0308011]
それで、私は仏教の律法どおりに彼らに解説いたしました。
我即為其如法解說。[VK0308012]
その時、維摩詰様がお見えになり、私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0308013]
『待ちなさい! ウパーリさんよ! さらに彼らの罪を深めるな!
『唯,優波離!無重增此二比丘罪![VK0308014]
彼らの心を乱さずに直接罪を除くべきだ。なぜなら、
當直除滅,勿擾其心。所以者何?[VK0308015]
罪というものは身内にも、身外にも、内外の中間にもないのだ。
彼罪性不在內、不在外、不在中間,[VK0308016]
世尊様のおっしゃるとおり、
如佛所說,[VK0308017]
心が汚ければ、衆生も汚いのだ。
心垢故眾生垢,[VK0308018]
心が清浄であれば、衆生も清浄だ。
心淨故眾生淨。[VK0308019]
心もまた身内にも、身外にも、内外の中間にもないのだ。
心亦不在內、不在外、不在中間,[VK0308020]
心がそうであるように、罪もそうであり、諸法もそうである。
如其心然,罪垢亦然,諸法亦然,[VK0308021]
真如を離れておらぬからだ。
不出於如。[VK0308022]
例えば、お前が心が解脱の境地に至った時、心には汚れがあるだろうか?』
如優波離,以心相得解脫時,寧有垢不?』[VK0308023]
私はお答えいたしました。
我言:[VK0308024]
『いいえ、ございませんでした。』
『不也!』[VK0308025]
維摩詰様はおっしゃいました。
維摩詰言:[VK0308026]
『まさにそのように、すべての衆生も心には汚れがないのだ。ウパーリさんよ!
『一切眾生心相無垢,亦復如是。唯,優波離![VK0308027]
妄想は垢であり、妄想がなければ清浄だ。
妄想是垢,無妄想是淨;[VK0308028]
転倒は垢であり、転倒がなければ清浄だ。
顛倒是垢,無顛倒是淨;[VK0308029]
我相は垢であり、我相がなければ清浄だ。ウパーリさんよ、
取我是垢,不取我是淨。優波離![VK0308030]
あらゆる法は生滅して変化していること、
一切法生滅不住,[VK0308031]
幻の如く、稲妻の如し。
如幻如電,[VK0308032]
諸法は互いに待っておらず、
諸法不相待,[VK0308033]
一念という瞬間さえとどまっておらぬ。
乃至一念不住;[VK0308034]
諸法は皆妄見であり、
諸法皆妄見,[VK0308035]
夢の如く、陽炎の如く、
如夢、如炎、[VK0308036]
水中の月影(水面に映った月影)の如く、
如水中月、[VK0308037]
鏡中の像(鏡に映った映像)の如く、
如鏡中像,[VK0308038]
妄想から生じるのだ。
以妄想生。[VK0308039]
これが分かった者こそが戒律を守っているのだ。
其知此者,是名奉律;[VK0308040]
これが分かった者こそが仏法に通じたのだ。』
其知此者,是名善解。』[VK0308041]
それで、二人の比丘は維摩詰様を称賛しました。
於是二比丘言:[VK0308042]
『何と素晴らしい智慧でしょう!
『上智哉![VK0308043]
それはウパーリさんが及ばない智慧なのです。
是優波離所不能及,[VK0308044]
たとえ持律第一と称される尊者でも、このように素晴らしい教示はできないのですね。』
持律之上而不能說。』[VK0308045]
私は申しました。
我即答言:[VK0308046]
『如来様のほかに、声聞でも菩薩でも、維摩詰様を論破できる者はいないのです。
『自捨如來,未有聲聞及菩薩,能制其樂說之辯,[VK0308047]
この御方はこんなに素晴らしい智慧を持っておいでになるのです!』
其智慧明達,為若此也!』[VK0308048]
あの時、二人の比丘は即座に疑惑と後悔から解放され、
時二比丘疑悔即除,[VK0308049]
阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0308050]
そして、その二人はこう祈りました。
作是願言:[VK0308051]
『すべての衆生が皆、維摩詰様のような弁才がありますように。』
『令一切眾生皆得是辯。』[VK0308052]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0308053]
【維摩経】弟子品
ウパーリ尊者
そこで、お釈迦様はウパーリ尊者(持律第一)に言いました。
佛告優波離:[VK0308001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0308002]
ウパーリはお釈迦様に語りました。
優波離白佛言:[VK0308003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0308004]
かつて、ある二人の比丘が戒律を犯しましたが、
憶念昔者,有二比丘犯律行,[VK0308005]
恥ずかしくて世尊様に懺悔する勇気はなかったのです。
以為恥,不敢問佛,[VK0308006]
彼らは来て私に言いました。
來問我言:[VK0308007]
『ウパーリさん! 何と言うか、
『唯,優波離![VK0308008]
私たちは戒律を犯しましたが、恥ずかしくて世尊様に懺悔する勇気がないのです。
我等犯律,誠以為恥,不敢問佛,[VK0308009]
お願いします。どうか私たちを疑惑と後悔から解放し、
願解疑悔,[VK0308010]
私たちの苦しみを消してください。』
得免斯咎!』[VK0308011]
それで、私は仏教の律法どおりに彼らに解説いたしました。
我即為其如法解說。[VK0308012]
その時、維摩詰様がお見えになり、私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0308013]
『待ちなさい! ウパーリさんよ! さらに彼らの罪を深めるな!
『唯,優波離!無重增此二比丘罪![VK0308014]
彼らの心を乱さずに直接罪を除くべきだ。なぜなら、
當直除滅,勿擾其心。所以者何?[VK0308015]
罪というものは身内にも、身外にも、内外の中間にもないのだ。
彼罪性不在內、不在外、不在中間,[VK0308016]
世尊様のおっしゃるとおり、
如佛所說,[VK0308017]
心が汚ければ、衆生も汚いのだ。
心垢故眾生垢,[VK0308018]
心が清浄であれば、衆生も清浄だ。
心淨故眾生淨。[VK0308019]
心もまた身内にも、身外にも、内外の中間にもないのだ。
心亦不在內、不在外、不在中間,[VK0308020]
心がそうであるように、罪もそうであり、諸法もそうである。
如其心然,罪垢亦然,諸法亦然,[VK0308021]
真如を離れておらぬからだ。
不出於如。[VK0308022]
例えば、お前が心が解脱の境地に至った時、心には汚れがあるだろうか?』
如優波離,以心相得解脫時,寧有垢不?』[VK0308023]
私はお答えいたしました。
我言:[VK0308024]
『いいえ、ございませんでした。』
『不也!』[VK0308025]
維摩詰様はおっしゃいました。
維摩詰言:[VK0308026]
『まさにそのように、すべての衆生も心には汚れがないのだ。ウパーリさんよ!
『一切眾生心相無垢,亦復如是。唯,優波離![VK0308027]
妄想は垢であり、妄想がなければ清浄だ。
妄想是垢,無妄想是淨;[VK0308028]
転倒は垢であり、転倒がなければ清浄だ。
顛倒是垢,無顛倒是淨;[VK0308029]
我相は垢であり、我相がなければ清浄だ。ウパーリさんよ、
取我是垢,不取我是淨。優波離![VK0308030]
あらゆる法は生滅して変化していること、
一切法生滅不住,[VK0308031]
幻の如く、稲妻の如し。
如幻如電,[VK0308032]
諸法は互いに待っておらず、
諸法不相待,[VK0308033]
一念という瞬間さえとどまっておらぬ。
乃至一念不住;[VK0308034]
諸法は皆妄見であり、
諸法皆妄見,[VK0308035]
夢の如く、陽炎の如く、
如夢、如炎、[VK0308036]
水中の月影(水面に映った月影)の如く、
如水中月、[VK0308037]
鏡中の像(鏡に映った映像)の如く、
如鏡中像,[VK0308038]
妄想から生じるのだ。
以妄想生。[VK0308039]
これが分かった者こそが戒律を守っているのだ。
其知此者,是名奉律;[VK0308040]
これが分かった者こそが仏法に通じたのだ。』
其知此者,是名善解。』[VK0308041]
それで、二人の比丘は維摩詰様を称賛しました。
於是二比丘言:[VK0308042]
『何と素晴らしい智慧でしょう!
『上智哉![VK0308043]
それはウパーリさんが及ばない智慧なのです。
是優波離所不能及,[VK0308044]
たとえ持律第一と称される尊者でも、このように素晴らしい教示はできないのですね。』
持律之上而不能說。』[VK0308045]
私は申しました。
我即答言:[VK0308046]
『如来様のほかに、声聞でも菩薩でも、維摩詰様を論破できる者はいないのです。
『自捨如來,未有聲聞及菩薩,能制其樂說之辯,[VK0308047]
この御方はこんなに素晴らしい智慧を持っておいでになるのです!』
其智慧明達,為若此也!』[VK0308048]
あの時、二人の比丘は即座に疑惑と後悔から解放され、
時二比丘疑悔即除,[VK0308049]
阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0308050]
そして、その二人はこう祈りました。
作是願言:[VK0308051]
『すべての衆生が皆、維摩詰様のような弁才がありますように。』
『令一切眾生皆得是辯。』[VK0308052]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0308053]