阿那律
【維摩経】弟子品
アニルッダ尊者
そこで、お釈迦様はアニルッダ尊者(天眼第一)に言いました。
佛告阿那律:[VK0307001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0307002]
アニルッダはお釈迦様に語りました。
阿那律白佛言:[VK0307003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0307004]
かつて、私はあるところでお経行(一定の場所をゆっくり歩き、心身を落ち着かせる修行)をしておりました。
憶念我昔,於一處經行,[VK0307005]
その時、厳浄という名の梵天の王が、
時有梵王,名曰嚴淨,[VK0307006]
一万人の梵天の天人たちと共に、身を清浄な光に輝かせながら、
與萬梵俱,放淨光明,[VK0307007]
私を訪ねてきました。
來詣我所,[VK0307008]
彼は礼をして私に聞きました。
稽首作禮問我言:[VK0307009]
『アニルッダ尊者よ! あなたの天眼はどこまで見えるのですか?』
『幾何阿那律天眼所見?』[VK0307010]
私はお答えいたしました。
我即答言:[VK0307011]
『御仁よ! 私にとって、掌中の菴摩勒果(ユカン)を見るように、このお釈迦様の仏土、つまりこの三千大千世界において、どこでも見えるのです。』
『仁者!吾見此釋迦牟尼佛土三千大千世界,如觀掌中菴摩勒果。』[VK0307012]
その時、維摩詰様がお見えになり、私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0307013]
『ちょっと、アニルッダさん!
『唯,阿那律![VK0307014]
では、天眼で見る映像は作相(心を起こして作り出す映像)か?
天眼所見,為作相耶?[VK0307015]
それとも、無作の相(作り出すことがない映像)か?
無作相耶?[VK0307016]
もしそれが作相であれば、お前の天眼は外道の五神通と同じなのだ。
假使作相,則與外道五通等;[VK0307017]
もしそれが無作の相であれば、つまり無為(やることがない。自然のままに行動する)であり、何も見えないはずだ。』
若無作相,即是無為,不應有見。』[VK0307018]
世尊様! あの時、私は黙り込んでおりました。
世尊!我時默然。[VK0307019]
梵天の天人たちはその話を聞いたことがないと思って、
彼諸梵聞其言,得未曾有![VK0307020]
すぐ礼をして維摩詰様に問いました。
即為作禮而問曰:[VK0307021]
『世の中、誰が真の天眼を持っているのでしょうか?』
『世孰有真天眼者?』[VK0307022]
維摩詰様はお答えになった。
維摩詰言:[VK0307023]
『世尊様でいらっしゃる。世尊様は真のご天眼をお持ちで、
『有佛、世尊,得真天眼,[VK0307024]
常に三昧に入っておいでになり、すべての仏国を見ることがおできになるが、
常在三昧,悉見諸佛國,[VK0307025]
それは作相でも無作の相でもないのだ。』
不以二相。』[VK0307026]
それで、厳浄梵王と五百人の眷属たちは、阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
於是嚴淨梵王及其眷屬五百梵天,皆發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0307027]
皆は平伏して額を維摩詰様のお足につけて拝み、
禮維摩詰足已,[VK0307028]
急に姿が消えてしまいました。
忽然不現![VK0307029]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0307030]
【維摩経】弟子品
アニルッダ尊者
そこで、お釈迦様はアニルッダ尊者(天眼第一)に言いました。
佛告阿那律:[VK0307001]
「お前が維摩詰を見舞いに行ってきなさい。」
「汝行詣維摩詰問疾。」[VK0307002]
アニルッダはお釈迦様に語りました。
阿那律白佛言:[VK0307003]
「申し訳ございません。世尊様。私はその御方を見舞うことができかねます。なぜかというと、
「世尊!我不堪任詣彼問疾。所以者何?[VK0307004]
かつて、私はあるところでお経行(一定の場所をゆっくり歩き、心身を落ち着かせる修行)をしておりました。
憶念我昔,於一處經行,[VK0307005]
その時、厳浄という名の梵天の王が、
時有梵王,名曰嚴淨,[VK0307006]
一万人の梵天の天人たちと共に、身を清浄な光に輝かせながら、
與萬梵俱,放淨光明,[VK0307007]
私を訪ねてきました。
來詣我所,[VK0307008]
彼は礼をして私に聞きました。
稽首作禮問我言:[VK0307009]
『アニルッダ尊者よ! あなたの天眼はどこまで見えるのですか?』
『幾何阿那律天眼所見?』[VK0307010]
私はお答えいたしました。
我即答言:[VK0307011]
『御仁よ! 私にとって、掌中の菴摩勒果(ユカン)を見るように、このお釈迦様の仏土、つまりこの三千大千世界において、どこでも見えるのです。』
『仁者!吾見此釋迦牟尼佛土三千大千世界,如觀掌中菴摩勒果。』[VK0307012]
その時、維摩詰様がお見えになり、私に話しかけられました。
時維摩詰來謂我言:[VK0307013]
『ちょっと、アニルッダさん!
『唯,阿那律![VK0307014]
では、天眼で見る映像は作相(心を起こして作り出す映像)か?
天眼所見,為作相耶?[VK0307015]
それとも、無作の相(作り出すことがない映像)か?
無作相耶?[VK0307016]
もしそれが作相であれば、お前の天眼は外道の五神通と同じなのだ。
假使作相,則與外道五通等;[VK0307017]
もしそれが無作の相であれば、つまり無為(やることがない。自然のままに行動する)であり、何も見えないはずだ。』
若無作相,即是無為,不應有見。』[VK0307018]
世尊様! あの時、私は黙り込んでおりました。
世尊!我時默然。[VK0307019]
梵天の天人たちはその話を聞いたことがないと思って、
彼諸梵聞其言,得未曾有![VK0307020]
すぐ礼をして維摩詰様に問いました。
即為作禮而問曰:[VK0307021]
『世の中、誰が真の天眼を持っているのでしょうか?』
『世孰有真天眼者?』[VK0307022]
維摩詰様はお答えになった。
維摩詰言:[VK0307023]
『世尊様でいらっしゃる。世尊様は真のご天眼をお持ちで、
『有佛、世尊,得真天眼,[VK0307024]
常に三昧に入っておいでになり、すべての仏国を見ることがおできになるが、
常在三昧,悉見諸佛國,[VK0307025]
それは作相でも無作の相でもないのだ。』
不以二相。』[VK0307026]
それで、厳浄梵王と五百人の眷属たちは、阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
於是嚴淨梵王及其眷屬五百梵天,皆發阿耨多羅三藐三菩提心,[VK0307027]
皆は平伏して額を維摩詰様のお足につけて拝み、
禮維摩詰足已,[VK0307028]
急に姿が消えてしまいました。
忽然不現![VK0307029]
それゆえ、私はその御方を見舞うことができかねます。」
故我不任詣彼問疾。」[VK0307030]