娑婆
【維摩経】仏国品
娑婆世界、不浄?
その時、シャーリプトラ尊者(舎利弗。お釈迦様の十大弟子の一人であり、弟子の中で智慧第一と称される)は、お釈迦様の解答を聞いて、こう思いました。
爾時舍利弗承佛威神作是念:[VK0104001]
「もし菩薩の心が清浄になったら仏土は清浄になるというならば、
「若菩薩心淨,則佛土淨者,[VK0104002]
世尊様がまだ菩薩でいらっしゃった時、もしかしてお心は不浄だったのでしょうか?
我世尊本為菩薩時,意豈不淨,[VK0104003]
なぜこの仏土(世界)はこのように不浄なのでしょうか?」
而是佛土不淨若此?」[VK0104004]
お釈迦様はシャーリプトラの思いを察知し、シャーリプトラに言いました。
佛知其念,即告之言:[VK0104005]
「シャーリプトラよ! お前はどう思うか?
「於意云何?[VK0104006]
盲人は日月が見えない。もしかして日月は不浄であろうか?」
日月豈不淨耶?而盲者不見。」[VK0104007]
シャーリプトラ:
對曰:[VK0104008]
「いいえ、それは不正確です。世尊様!
「不也,世尊![VK0104009]
それは盲人自身の問題であり、決して日月のせいではないのです。」
是盲者過,非日月咎。」[VK0104010]
お釈迦様:
「シャーリプトラよ、
「舍利弗![VK0104011]
衆生の目は罪業に遮られているので、如来の仏土の厳浄(荘厳と清浄)な姿が見られないが、
眾生罪故,不見如來佛土嚴淨,[VK0104012]
これは如来のせいではないのだ。シャーリプトラよ、
非如來咎。舍利弗![VK0104013]
私のこの仏土は清浄なのに、お前は見られないのだ。」
我此土淨,而汝不見。」[VK0104014]
その時、螺髻梵王(螺の形のような髻に結っている梵王)がシャーリプトラに言いました。
爾時螺髻梵王語舍利弗:[VK0104015]
「この仏土が不浄などと思うな! なぜなら、
「勿作是意,謂此佛土以為不淨。所以者何?[VK0104016]
私から見ると、世尊様の仏土は、自在天の宮殿のように清浄なのだ。」
我見釋迦牟尼佛土清淨,譬如自在天宮。」[VK0104017]
シャーリプトラ:
舍利弗言:[VK0104018]
「しかし、私から見れば、この仏土は、
「我見此土[VK0104019]
丘陵・窪地・茨・砂礫(砂と小石)・
丘陵坑坎、荊蕀沙礫、[VK0104020]
土石・山々・汚いもの・嫌悪のものに満ちているのです。」
土石諸山、穢惡充滿。」[VK0104021]
螺髻梵王:
螺髻梵王言:[VK0104022]
「お前は高下の観念を持って、仏の智慧によらないゆえ、
「仁者心有高下,不依佛慧,[VK0104023]
仏土が不浄に見えるのだ。
故見此土為不淨耳![VK0104024]
シャーリプトラさんよ!
舍利弗![VK0104025]
菩薩は平等の心を持って衆生に対し、
菩薩於一切眾生,悉皆平等,[VK0104026]
心は清浄で仏の智慧に則っているゆえ、
深心清淨,依佛智慧,[VK0104027]
この仏土の清浄な姿が見られるのだ。」
則能見此佛土清淨。」[VK0104028]
そこで、お釈迦様がお足の指で大地を押すと、
於是佛以足指按地,[VK0104029]
すぐ数百千の珍宝で厳かに飾った三千大千世界の姿が現れました。
即時三千大千世界,若干百千珍寶嚴飾,[VK0104030]
まるで、宝荘厳如来の無量功徳宝荘厳仏土のような世界になりました。
譬如寶莊嚴佛,無量功德寶莊嚴土,[VK0104031]
そこにいた人々は皆未曾有であると賛嘆し、
一切大眾歎未曾有![VK0104032]
しかも自身が宝蓮華の中に座っているのを見ました。
而皆自見坐寶蓮華。[VK0104033]
お釈迦様はシャーリプトラに言いました。
佛告舍利弗:[VK0104034]
「さあ、いまこの仏土は厳浄でしょうか?」
「汝且觀是佛土嚴淨?」[VK0104035]
シャーリプトラ:
舍利弗言:[VK0104036]
「おっしゃるとおりです! 世尊様!
「唯然,世尊![VK0104037]
もともと見えず、もともと存じませんでしたが、
本所不見,本所不聞,[VK0104038]
いま、私は仏土の厳浄な姿がすべて見えました。」
今佛國土嚴淨悉現。」[VK0104039]
お釈迦様:
佛語舍利弗:[VK0104040]
「私の仏土は常にこのように清浄で、下劣な品性の人々を教え導くために、
「我佛國土常淨若此,為欲度斯下劣人故,[VK0104041]
皆にさまざまな嫌悪のものに満ちている不浄な世界を現しているのだ。
示是眾惡不淨土耳![VK0104042]
例えば諸天の天人たちは、同じ宝器上のご飯を食べても、
譬如諸天,共寶器食,[VK0104043]
それぞれが積んだ福徳(善行の報い)によって宝器から生じるご飯は異なるのだ。
隨其福德,飯色有異。[VK0104044]
シャーリプトラよ! まさにそのように、
如是,舍利弗![VK0104045]
もし心が清浄であれば、この仏土のさまざまな功徳と荘厳な姿が見られるのだ。」
若人心淨,便見此土功德莊嚴。」[VK0104046]
お釈迦様が仏土の厳浄な姿を現した時、
當佛現此國土嚴淨之時,[VK0104047]
宝積に率いられた五百人の長者は無生法忍の境地に至り、
寶積所將五百長者子皆得無生法忍,[VK0104048]
八万四千人は皆阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
八萬四千人皆發阿耨多羅三藐三菩提心。[VK0104049]
お釈迦様が神足(如来のお足の敬称)を地上から引っ込めると、世界はもとのとおりになりました。
佛攝神足,於是世界還復如故。[VK0104050]
声聞乗(仏法を聴くことによって悟りを開くこと。小乗に属する)を目指す三万二千人の天人と人々は、
求聲聞乘三萬二千天及人,[VK0104051]
あらゆる有為の法(作られる物事)が無常であると理解し、
知有為法皆悉無常,[VK0104052]
心は邪見から離れ、清浄な法眼(あらゆる法が分かる目)を獲得しました。
遠塵離垢,得法眼淨。[VK0104053]
八千人の比丘は、諸法にとらわれず、心は煩悩から解放されたのです。
八千比丘,不受諸法,漏盡意解。[VK0104054]
【維摩経】仏国品
娑婆世界、不浄?
その時、シャーリプトラ尊者(舎利弗。お釈迦様の十大弟子の一人であり、弟子の中で智慧第一と称される)は、お釈迦様の解答を聞いて、こう思いました。
爾時舍利弗承佛威神作是念:[VK0104001]
「もし菩薩の心が清浄になったら仏土は清浄になるというならば、
「若菩薩心淨,則佛土淨者,[VK0104002]
世尊様がまだ菩薩でいらっしゃった時、もしかしてお心は不浄だったのでしょうか?
我世尊本為菩薩時,意豈不淨,[VK0104003]
なぜこの仏土(世界)はこのように不浄なのでしょうか?」
而是佛土不淨若此?」[VK0104004]
お釈迦様はシャーリプトラの思いを察知し、シャーリプトラに言いました。
佛知其念,即告之言:[VK0104005]
「シャーリプトラよ! お前はどう思うか?
「於意云何?[VK0104006]
盲人は日月が見えない。もしかして日月は不浄であろうか?」
日月豈不淨耶?而盲者不見。」[VK0104007]
シャーリプトラ:
對曰:[VK0104008]
「いいえ、それは不正確です。世尊様!
「不也,世尊![VK0104009]
それは盲人自身の問題であり、決して日月のせいではないのです。」
是盲者過,非日月咎。」[VK0104010]
お釈迦様:
「シャーリプトラよ、
「舍利弗![VK0104011]
衆生の目は罪業に遮られているので、如来の仏土の厳浄(荘厳と清浄)な姿が見られないが、
眾生罪故,不見如來佛土嚴淨,[VK0104012]
これは如来のせいではないのだ。シャーリプトラよ、
非如來咎。舍利弗![VK0104013]
私のこの仏土は清浄なのに、お前は見られないのだ。」
我此土淨,而汝不見。」[VK0104014]
その時、螺髻梵王(螺の形のような髻に結っている梵王)がシャーリプトラに言いました。
爾時螺髻梵王語舍利弗:[VK0104015]
「この仏土が不浄などと思うな! なぜなら、
「勿作是意,謂此佛土以為不淨。所以者何?[VK0104016]
私から見ると、世尊様の仏土は、自在天の宮殿のように清浄なのだ。」
我見釋迦牟尼佛土清淨,譬如自在天宮。」[VK0104017]
シャーリプトラ:
舍利弗言:[VK0104018]
「しかし、私から見れば、この仏土は、
「我見此土[VK0104019]
丘陵・窪地・茨・砂礫(砂と小石)・
丘陵坑坎、荊蕀沙礫、[VK0104020]
土石・山々・汚いもの・嫌悪のものに満ちているのです。」
土石諸山、穢惡充滿。」[VK0104021]
螺髻梵王:
螺髻梵王言:[VK0104022]
「お前は高下の観念を持って、仏の智慧によらないゆえ、
「仁者心有高下,不依佛慧,[VK0104023]
仏土が不浄に見えるのだ。
故見此土為不淨耳![VK0104024]
シャーリプトラさんよ!
舍利弗![VK0104025]
菩薩は平等の心を持って衆生に対し、
菩薩於一切眾生,悉皆平等,[VK0104026]
心は清浄で仏の智慧に則っているゆえ、
深心清淨,依佛智慧,[VK0104027]
この仏土の清浄な姿が見られるのだ。」
則能見此佛土清淨。」[VK0104028]
そこで、お釈迦様がお足の指で大地を押すと、
於是佛以足指按地,[VK0104029]
すぐ数百千の珍宝で厳かに飾った三千大千世界の姿が現れました。
即時三千大千世界,若干百千珍寶嚴飾,[VK0104030]
まるで、宝荘厳如来の無量功徳宝荘厳仏土のような世界になりました。
譬如寶莊嚴佛,無量功德寶莊嚴土,[VK0104031]
そこにいた人々は皆未曾有であると賛嘆し、
一切大眾歎未曾有![VK0104032]
しかも自身が宝蓮華の中に座っているのを見ました。
而皆自見坐寶蓮華。[VK0104033]
お釈迦様はシャーリプトラに言いました。
佛告舍利弗:[VK0104034]
「さあ、いまこの仏土は厳浄でしょうか?」
「汝且觀是佛土嚴淨?」[VK0104035]
シャーリプトラ:
舍利弗言:[VK0104036]
「おっしゃるとおりです! 世尊様!
「唯然,世尊![VK0104037]
もともと見えず、もともと存じませんでしたが、
本所不見,本所不聞,[VK0104038]
いま、私は仏土の厳浄な姿がすべて見えました。」
今佛國土嚴淨悉現。」[VK0104039]
お釈迦様:
佛語舍利弗:[VK0104040]
「私の仏土は常にこのように清浄で、下劣な品性の人々を教え導くために、
「我佛國土常淨若此,為欲度斯下劣人故,[VK0104041]
皆にさまざまな嫌悪のものに満ちている不浄な世界を現しているのだ。
示是眾惡不淨土耳![VK0104042]
例えば諸天の天人たちは、同じ宝器上のご飯を食べても、
譬如諸天,共寶器食,[VK0104043]
それぞれが積んだ福徳(善行の報い)によって宝器から生じるご飯は異なるのだ。
隨其福德,飯色有異。[VK0104044]
シャーリプトラよ! まさにそのように、
如是,舍利弗![VK0104045]
もし心が清浄であれば、この仏土のさまざまな功徳と荘厳な姿が見られるのだ。」
若人心淨,便見此土功德莊嚴。」[VK0104046]
お釈迦様が仏土の厳浄な姿を現した時、
當佛現此國土嚴淨之時,[VK0104047]
宝積に率いられた五百人の長者は無生法忍の境地に至り、
寶積所將五百長者子皆得無生法忍,[VK0104048]
八万四千人は皆阿耨多羅三藐三菩提心を発しました。
八萬四千人皆發阿耨多羅三藐三菩提心。[VK0104049]
お釈迦様が神足(如来のお足の敬称)を地上から引っ込めると、世界はもとのとおりになりました。
佛攝神足,於是世界還復如故。[VK0104050]
声聞乗(仏法を聴くことによって悟りを開くこと。小乗に属する)を目指す三万二千人の天人と人々は、
求聲聞乘三萬二千天及人,[VK0104051]
あらゆる有為の法(作られる物事)が無常であると理解し、
知有為法皆悉無常,[VK0104052]
心は邪見から離れ、清浄な法眼(あらゆる法が分かる目)を獲得しました。
遠塵離垢,得法眼淨。[VK0104053]
八千人の比丘は、諸法にとらわれず、心は煩悩から解放されたのです。
八千比丘,不受諸法,漏盡意解。[VK0104054]