仏道

【維摩経ゆいまきょう】仏道品ぶつどうほん

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　仏ぶつ道どうに深く通じる境きょう地ち

その時、文もん殊じゅ菩ぼ薩さつは維ゆい摩ま詰きつに問いました。

爾時文殊師利問維摩詰言：［VK0801001］

「菩ぼ薩さつが仏道に深く通じるとは、いったいどんなことですか？」

「菩薩云何通達佛道？」［VK0801002］

維ゆい摩ま詰きつは答えました。

維摩詰言：［VK0801003］

「もし菩ぼ薩さつが非道（仏道に逆らう道）を行うことができれば、

「若菩薩行於非道，［VK0801004］

これは仏道に深く通じるということだ。」

是為通達佛道。」［VK0801005］

文もん殊じゅ菩ぼ薩さつ：

又問：［VK0801006］

「菩ぼ薩さつが非道を行うとは、いったいどんなことですか？」

「云何菩薩行於非道？」［VK0801007］

維ゆい摩ま詰きつ：

答曰：［VK0801008］

「菩ぼ薩さつが五無む間けん（五ご逆ぎゃく罪ざい）を行うが、憎しみや怒りを抱いておらぬ。

「若菩薩行五無間，而無惱恚；［VK0801009］

地獄に入るが、罪を持っておらぬ。

至于地獄，無諸罪垢；［VK0801010］

畜ちく生しょうに生まれ変わるが、無む明みょう（真理を悟っていない無知。十二因いん縁ねんの第一）と傲ごう慢まんなどの過ちがない。

至于畜生，無有無明、憍慢等過；［VK0801011］

餓が鬼きに転生するが、功く徳どくが十分に備わっている。

至于餓鬼，而具足功德；［VK0801012］

色しき界かい天・無む色しき界かい天に転生するが、それを自じ慢まんしておらぬ。

行色、無色界道，不以為勝。［VK0801013］


貪たん欲よくな個性を表しているが、欲望に染まっておらぬ。

示行貪欲，離諸染著；［VK0801014］

怒りを顔に表しているが、衆しゅ生じょうを怒らぬ。

示行瞋恚，於諸眾生無有恚閡；［VK0801015］

愚ぐ昧まいな個性を表しているが、智ち慧えによって心を調じょう伏ぶくする。

示行愚癡，而以智慧調伏其心；［VK0801016］

慳けん貪どんな個性を表しているが、すべてを捨てることができ、身と命を惜しまぬ。

示行慳貪，而捨內外所有，不惜身命；［VK0801017］

（身は）戒かい律りつを守らないが、心は清しょう浄じょうの戒かい律りつに従い、どんなささいな罪をも深く防いでいる。

示行毀禁，而安住淨戒，乃至小罪猶懷大懼；［VK0801018］

怒りっぽい個性を表しているが、常に慈じ悲ひの心を持って忍にん辱にくを行う。

示行瞋恚，而常慈忍；［VK0801019］

怠たい惰だな個性を表しているが、努めて功く徳どくを積む。

示行懈怠，而懃修功德；［VK0801020］

不安定な情緒を表すが、常に心を安定させる。

示行亂意，而常念定；［VK0801021］

無知な個性を表しているが、俗ぞく世せ間けん・出しゅっ世せ間けん（俗ぞく世せ間けんから脱した超然の境界）の智ち慧えに通じる。

示行愚癡，而通達世間、出世間慧；［VK0801022］

偽りの個性を表しているが、巧みな方ほう便べんを利用して衆しゅ生じょうを済さい度どする。

示行諂偽，而善方便隨諸經義；［VK0801023］

高こう慢まんな個性を表しているが、衆しゅ生じょうと仏法の橋はし渡わたしをしている。

示行憍慢，而於眾生猶如橋梁；［VK0801024］

顔に苦悩の色を表すが、心が常に清しょう浄じょうである。

示行諸煩惱，而心常清淨；［VK0801025］

魔道に入るが、仏の智ち慧えに則り、他の教えに従わぬ。

示入於魔，而順佛智慧，不隨他教；［VK0801026］

声しょう聞もん乗じょうに入るが、衆しゅ生じょうに聴いたことのない仏法を説く。

示入聲聞，而為眾生說未聞法；［VK0801027］

辟びゃく支し仏ぶつ乗じょうに入るが、慈じ悲ひ心を抱いて衆しゅ生じょうを教きょう化かする。

示入辟支佛，而成就大悲，教化眾生；［VK0801028］

貧窮に陥おちいっているが、宝ほう手しゅ（宝を生成できる手）を持って、無む尽じん蔵ぞうの功く徳どくを持っている。

示入貧窮，而有寶手，功德無盡；［VK0801029］

身が不具になるが、種々の相そう好ごうが備わって姿を荘しょう厳げんにする。

示入刑殘，而具諸相好，以自莊嚴；［VK0801030］

低い身分や地位になるが、如にょ来らいの種しゅ姓せい（家系・階級）が備わっていて（未来仏になる）、さまざまな功く徳どくを持っている。

示入下賤，而生佛種姓中，具諸功德；［VK0801031］

貧弱で醜い体格になるが、実は那な羅ら延えん（天界の金こん剛ごう力士）の報いを持って、衆しゅ生じょうはその姿を見るのを楽しむ。

示入羸劣醜陋，而得那羅延身，一切眾生之所樂見；［VK0801032］

（人間の身は）老ろう衰すいや病気になるが、実はすでに病の根こん源げんを断ち切ってしまい、死亡の恐おそ怖を超ちょう越えつした。

示入老病，而永斷病根，超越死畏；［VK0801033］

事業を営んでいるが、常に無む常じょうを洞察し、金を欲することがない。

示有資生，而恒觀無常，實無所貪；［VK0801034］

妻さい妾しょう・芸げい妓ぎがいるが、常に五欲の泥沼を離はなれ ている。

示有妻妾采女，而常遠離五欲淤泥；［VK0801035］

話下手に見えるが、実は弁べん才さいがあり、智ち慧えが無む欠けつである。

現於訥鈍，而成就辯才，總持無失；［VK0801036］

邪道に入るが、実は衆しゅ生じょうを正しょう道とうに導くようにしている。

示入邪濟，而以正濟度諸眾生；［VK0801037］

六道輪りん廻ねに入るが、実は輪りん廻ねの因（報い）を断ち切ってしまった。

現遍入諸道，而斷其因緣；［VK0801038］

涅ね槃はんの境きょう地ちに至ったが、生しょう死じ輪りん廻ねを断ち切らぬ。

現於涅槃，而不斷生死：［VK0801039］


文もん殊じゅ菩ぼ薩さつ！　菩ぼ薩さつがそのように非道を行うことができれば、

文殊師利！菩薩能如是行於非道，［VK0801040］

これは仏道に深く通じることなのだ。」

是為通達佛道。」［VK0801041］


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