尽無尽解脱
【維摩経】菩薩行品
尽無尽解脱の法門
その時、衆香仏国の菩薩たちは合掌してお釈迦様に言いました。
爾時眾香世界菩薩來者,合掌白佛言:[VK1104001]
「世尊様! 私どもが初めてこの仏土に参った時、これは何たる下等な国土だと存じておりました。
「世尊!我等初見此土生下劣想,[VK1104002]
いまお恥ずかしい限りでございます。そんな下品な思いを二度と抱きません。なぜかというと、
今自悔責,捨離是心。所以者何?[VK1104003]
諸如来様の方便は不思議であり、衆生をお導きになるために、
諸佛方便不可思議,為度眾生故,[VK1104004]
衆生の状況に応じて最適な仏国をお現しになっているのです。
隨其所應,現佛國異。[VK1104005]
お願いいたします! 世尊様!
唯然世尊![VK1104006]
少しだけでもいいです。どうかご仏法をいただきませんか?
願賜少法,[VK1104007]
私どもが衆香仏国に戻った後、きっと世尊様のお教えをお修めいたします。」
還於彼土當念如來。」[VK1104008]
お釈迦様は衆香仏国の菩薩たちに言いました。
佛告諸菩薩:[VK1104009]
「尽無尽解脱の法門があり、お前たちはそれを学んだほうがいいのだ。
「有盡無盡解脫法門,汝等當學。[VK1104010]
では、何を尽くすのか? それは有為の法だ。
何謂為盡?謂有為法。[VK1104011]
何を尽くしていないのか? それは無為の法だ。
何謂無盡?謂無為法。[VK1104012]
菩薩はまさにそのように、有為の法を尽くし、無為の法を尽くしていないのだ。
如菩薩者,不盡有為,不住無為。[VK1104013]
では、有為の法を尽くすとはどんなことか? よく聞きなさい。
何謂不盡有為?[VK1104014]
大慈の心を離れず、大悲の心を捨てない。
謂不離大慈,不捨大悲;[VK1104015]
一切智を求める心を深く発し、片時も忘れない。
深發一切智心,而不忽忘;[VK1104016]
衆生を教化して永遠に飽きない。
教化眾生,終不厭倦,[VK1104017]
常に四摂法を利用して衆生を教化する。
於四攝法,常念順行;[VK1104018]
正法を守り、身や命を惜しまない。
護持正法,不惜軀命,[VK1104019]
種々の善の特質を修め、飽きることはない。
種諸善根,無有疲厭;[VK1104020]
大乗の志を貫いていて、廻向して衆生を益する。
志常安住,方便迴向,[VK1104021]
怠らずに仏法を求め、仏法を惜しまずに衆生に説く。
求法不懈,說法無悋;[VK1104022]
熱心に諸如来を供養するゆえ、生死輪廻に入るのを恐れない。
勤供諸佛;故入生死而無所畏,[VK1104023]
栄誉と恥辱に対して憂うことも喜ぶこともしない。
於諸榮辱,心無憂喜;[VK1104024]
仏法を学んだことのない者をなめず、如来を敬うように敬う。
不輕未學,敬學如佛,[VK1104025]
悩みに陥っている人に正念を発させる。
墮煩惱者,令發正念,[VK1104026]
衆生を離れることが大切ではないと思う。
於遠離樂,不以為貴,[VK1104027]
自分だけの幸福を喜ばず、他人の幸福を喜ぶ。
不著己樂,慶於彼樂;[VK1104028]
禅定の気持ちを地獄の苦しみと見なす。
在諸禪定,如地獄想,[VK1104029]
生死輪廻を庭園に遊ぶことと見なす。
於生死中,如園觀想;[VK1104030]
仏法を求めてくれる者を善い先生とする。
見來求者,為善師想,[VK1104031]
すべてを捨てることによって一切智を求める。
捨諸所有,具一切智想;[VK1104032]
戒律を犯そうとしている者を見れば、すぐ制止して救う。
見毀戒人,起救護想;[VK1104033]
六波羅蜜を両親と見なす。
諸波羅蜜,為父母想,[VK1104034]
三十七道品の法を眷属と見なす。
道品之法,為眷屬想;[VK1104035]
常に善の特質を際限なく修める。
發行善根,無有齊限,[VK1104036]
他の浄土がある厳かな飾りを参考にして自分の仏土を飾る。
以諸淨國嚴飾之事,成己佛土;[VK1104037]
限度のない布施を行い、その功徳によって相好を求める。
行無限施,具足相好,[VK1104038]
すべての悪い習慣を除き、身・口・意を浄化する。
除一切惡,淨身、口、意;[VK1104039]
無数の劫に生死輪廻を往復しても勇気が減らない。
生死無數劫,意而有勇,[VK1104040]
如来の無量の功徳を聞いても、すべてを達成しようと努めていて、疲れることを知らない。
聞佛無量德,志而不倦;[VK1104041]
智慧の剣によって煩悩の賊を撃破する。
以智慧劍,破煩惱賊,[VK1104042]
五陰・十八界・十二入を離れていて、衆生を済度し、皆を永遠に煩悩から解放する。
出陰、界、入,荷負眾生,永使解脫;[VK1104043]
一生懸命に悪魔の軍団を降伏させる。
以大精進,摧伏魔軍,[VK1104044]
常に『妄念なく実相が見られる智慧』を求める。
常求無念實相智慧行;[VK1104045]
世間の物事について、無欲で足ることを知る。
於世間法少欲知足,[VK1104046]
飽きずに出世間の智慧を求め、同時に世間の智慧を持っている。
於出世間求之無厭,而不捨世間法,[VK1104047]
俗世間の風俗に従っても、菩薩の威儀を損なわない。
不壞威儀法而能隨俗;[VK1104048]
神通と智慧を起こして衆生を仏道に導く。
起神通慧,引導眾生,[VK1104049]
総持を習得し、聞いたことを忘れない。
得念總持,所聞不忘;[VK1104050]
よく衆生の五根を鑑定し、皆の疑いを解く。
善別諸根,斷眾生疑,[VK1104051]
弁才があって無碍に仏法演説をする。
以樂說辯,演法無礙;[VK1104052]
十善の修行が無欠であるゆえに天人の報いを得る。
淨十善道,受天、人福;[VK1104053]
四無量心を修めるゆえに梵天の境地に至る。
修四無量,開梵天道;[VK1104054]
如来に説法を請い、他人の善行を讃え、それゆえ如来の美しい声を得る。
勸請說法,隨喜讚善,得佛音聲;[VK1104055]
身・口・意を浄化してしまったゆえに如来の威儀が現れる。
身、口、意善,得佛威儀;[VK1104056]
善法を深く修めるゆえにもっと高い境地に至る。
深修善法,所行轉勝,[VK1104057]
菩薩・僧侶を大乗の教えに導く。
以大乘教,成菩薩僧;[VK1104058]
心は油断せず、種々の善を失わない。
心無放逸,不失眾善:[VK1104059]
それが菩薩が有為の法を尽くすということである。
行如此法,是名菩薩不盡有為。[VK1104060]
では、菩薩が無為の法を尽くしていないとはどんなことか?
何謂菩薩不住無為?[VK1104061]
まず、空の境地に至っても、空の境地を修行の終点としない。
謂修學空,不以空為證;[VK1104062]
無相・無作の境地に至っても、無相・無作の境地を修行の終点としない。
修學無相、無作,不以無相、無作為證;[VK1104063]
無起の境地に至っても、無起の境地を修行の終点としない。
修學無起,不以無起為證;[VK1104064]
無常の理を理解したが、善行にはうんざりしない。
觀於無常,而不厭善本;[VK1104065]
世間が苦しみに満ちていると理解したが、生死輪廻を厭わない。
觀世間苦,而不惡生死;[VK1104066]
無我の境地に至っても、衆生を教化して疲れることを知らない。
觀於無我,而誨人不倦;[VK1104067]
寂滅の境地に至っても、涅槃に入らない。
觀於寂滅,而不永滅;[VK1104068]
心がすべてから離れていても、常に善法を修める。
觀於遠離,而身心修善;[VK1104069]
帰る場所(最終の生息地)がないと知っているが、善の境地にとどまっている。
觀無所歸,而歸趣善法;[VK1104070]
無生の理を理解したが、法を生じて衆生を済度する。
觀於無生,而以生法荷負一切;[VK1104071]
無漏の境地に至っても、煩悩を断ち切らない(衆生を済度するため)。
觀於無漏,而不斷諸漏;[VK1104072]
無為の境地に至っても、有為法を利用して衆生を教化する。
觀無所行,而以行法教化眾生;[VK1104073]
空・無の境地に至っても、大悲の心を捨てない。
觀於空無,而不捨大悲;[VK1104074]
正位に至っても、小乗の道に従わない(無為涅槃に入らない)。
觀正法位,而不隨小乘;[VK1104075]
あらゆる物事は虚妄であり、無人であり、無相であり、束縛なし、主宰なしと知っているが、
觀諸法虛妄,無牢無人、無主無相,[VK1104076]
本願(すべての衆生を彼岸に渡す願望)を達成する前、福徳・禅定・智慧を利用して衆生を済度する。
本願未滿,而不虛福德、禪定、智慧:[VK1104077]
それは、菩薩が無為の法を尽くしていないということである。
修如此法,是名菩薩不住無為。[VK1104078]
また、福徳を積むために、無為の法を尽くしていない。
又具福德故,不住無為;[VK1104079]
智慧を培うために、有為の法を尽くす。
具智慧故,不盡有為。[VK1104080]
大慈悲の心を持っているゆえ、無為の法を尽くしていない。
大慈悲故,不住無為;[VK1104081]
本願を達成するため、有為の法を尽くす。
滿本願故,不盡有為。[VK1104082]
仏法の薬を採るため、無為の法を尽くしていない。
集法藥故,不住無為;[VK1104083]
衆生に薬を処方するため、有為の法を尽くす。
隨授藥故,不盡有為。[VK1104084]
衆生が病気になっていると知っているゆえ、無為の法を尽くしていない。
知眾生病故,不住無為;[VK1104085]
衆生の病気を治すため、有為の法を尽くすのだ。
滅眾生病故,不盡有為。[VK1104086]
そのように、正士たちと菩薩たちは有為の法を尽くし、無為の法を尽くさない。
諸正士菩薩以修此法,不盡有為、不住無為,[VK1104087]
それが、尽無尽解脱の法門なのだ。
是名盡無盡解脫法門,[VK1104088]
お前たち! それを学んだほうがいいのだ。」
汝等當學。」[VK1104089]
その時、衆香仏国の菩薩たちはこの説法を聴いて、皆とてもうれしくて、
爾時彼諸菩薩聞說是法,皆大歡喜,[VK1104090]
さまざまな色・香りの花を三千大千世界に遍く散らしました。
以眾妙華、若干種色、若干種香,散遍三千大千世界,[VK1104091]
皆はお釈迦様、尽無尽解脱の法門及び娑婆世界の菩薩たちを供養した後、
供養於佛及此經法并諸菩薩已,[VK1104092]
平伏して額をお釈迦様のお足につけて拝み、未曾有であると賛嘆し、そして、
稽首佛足,歎未曾有,[VK1104093]
「釈迦牟尼世尊様はこのように方便を利用して衆生を済度することができるのです!」と言いました。
言:「釋迦牟尼佛乃能於此善行方便。」[VK1104094]
そして、皆は急に姿を消し、衆香仏国に帰りました。
言已,忽然不現,還到彼國。[VK1104095]
【維摩経】菩薩行品
尽無尽解脱の法門
その時、衆香仏国の菩薩たちは合掌してお釈迦様に言いました。
爾時眾香世界菩薩來者,合掌白佛言:[VK1104001]
「世尊様! 私どもが初めてこの仏土に参った時、これは何たる下等な国土だと存じておりました。
「世尊!我等初見此土生下劣想,[VK1104002]
いまお恥ずかしい限りでございます。そんな下品な思いを二度と抱きません。なぜかというと、
今自悔責,捨離是心。所以者何?[VK1104003]
諸如来様の方便は不思議であり、衆生をお導きになるために、
諸佛方便不可思議,為度眾生故,[VK1104004]
衆生の状況に応じて最適な仏国をお現しになっているのです。
隨其所應,現佛國異。[VK1104005]
お願いいたします! 世尊様!
唯然世尊![VK1104006]
少しだけでもいいです。どうかご仏法をいただきませんか?
願賜少法,[VK1104007]
私どもが衆香仏国に戻った後、きっと世尊様のお教えをお修めいたします。」
還於彼土當念如來。」[VK1104008]
お釈迦様は衆香仏国の菩薩たちに言いました。
佛告諸菩薩:[VK1104009]
「尽無尽解脱の法門があり、お前たちはそれを学んだほうがいいのだ。
「有盡無盡解脫法門,汝等當學。[VK1104010]
では、何を尽くすのか? それは有為の法だ。
何謂為盡?謂有為法。[VK1104011]
何を尽くしていないのか? それは無為の法だ。
何謂無盡?謂無為法。[VK1104012]
菩薩はまさにそのように、有為の法を尽くし、無為の法を尽くしていないのだ。
如菩薩者,不盡有為,不住無為。[VK1104013]
では、有為の法を尽くすとはどんなことか? よく聞きなさい。
何謂不盡有為?[VK1104014]
大慈の心を離れず、大悲の心を捨てない。
謂不離大慈,不捨大悲;[VK1104015]
一切智を求める心を深く発し、片時も忘れない。
深發一切智心,而不忽忘;[VK1104016]
衆生を教化して永遠に飽きない。
教化眾生,終不厭倦,[VK1104017]
常に四摂法を利用して衆生を教化する。
於四攝法,常念順行;[VK1104018]
正法を守り、身や命を惜しまない。
護持正法,不惜軀命,[VK1104019]
種々の善の特質を修め、飽きることはない。
種諸善根,無有疲厭;[VK1104020]
大乗の志を貫いていて、廻向して衆生を益する。
志常安住,方便迴向,[VK1104021]
怠らずに仏法を求め、仏法を惜しまずに衆生に説く。
求法不懈,說法無悋;[VK1104022]
熱心に諸如来を供養するゆえ、生死輪廻に入るのを恐れない。
勤供諸佛;故入生死而無所畏,[VK1104023]
栄誉と恥辱に対して憂うことも喜ぶこともしない。
於諸榮辱,心無憂喜;[VK1104024]
仏法を学んだことのない者をなめず、如来を敬うように敬う。
不輕未學,敬學如佛,[VK1104025]
悩みに陥っている人に正念を発させる。
墮煩惱者,令發正念,[VK1104026]
衆生を離れることが大切ではないと思う。
於遠離樂,不以為貴,[VK1104027]
自分だけの幸福を喜ばず、他人の幸福を喜ぶ。
不著己樂,慶於彼樂;[VK1104028]
禅定の気持ちを地獄の苦しみと見なす。
在諸禪定,如地獄想,[VK1104029]
生死輪廻を庭園に遊ぶことと見なす。
於生死中,如園觀想;[VK1104030]
仏法を求めてくれる者を善い先生とする。
見來求者,為善師想,[VK1104031]
すべてを捨てることによって一切智を求める。
捨諸所有,具一切智想;[VK1104032]
戒律を犯そうとしている者を見れば、すぐ制止して救う。
見毀戒人,起救護想;[VK1104033]
六波羅蜜を両親と見なす。
諸波羅蜜,為父母想,[VK1104034]
三十七道品の法を眷属と見なす。
道品之法,為眷屬想;[VK1104035]
常に善の特質を際限なく修める。
發行善根,無有齊限,[VK1104036]
他の浄土がある厳かな飾りを参考にして自分の仏土を飾る。
以諸淨國嚴飾之事,成己佛土;[VK1104037]
限度のない布施を行い、その功徳によって相好を求める。
行無限施,具足相好,[VK1104038]
すべての悪い習慣を除き、身・口・意を浄化する。
除一切惡,淨身、口、意;[VK1104039]
無数の劫に生死輪廻を往復しても勇気が減らない。
生死無數劫,意而有勇,[VK1104040]
如来の無量の功徳を聞いても、すべてを達成しようと努めていて、疲れることを知らない。
聞佛無量德,志而不倦;[VK1104041]
智慧の剣によって煩悩の賊を撃破する。
以智慧劍,破煩惱賊,[VK1104042]
五陰・十八界・十二入を離れていて、衆生を済度し、皆を永遠に煩悩から解放する。
出陰、界、入,荷負眾生,永使解脫;[VK1104043]
一生懸命に悪魔の軍団を降伏させる。
以大精進,摧伏魔軍,[VK1104044]
常に『妄念なく実相が見られる智慧』を求める。
常求無念實相智慧行;[VK1104045]
世間の物事について、無欲で足ることを知る。
於世間法少欲知足,[VK1104046]
飽きずに出世間の智慧を求め、同時に世間の智慧を持っている。
於出世間求之無厭,而不捨世間法,[VK1104047]
俗世間の風俗に従っても、菩薩の威儀を損なわない。
不壞威儀法而能隨俗;[VK1104048]
神通と智慧を起こして衆生を仏道に導く。
起神通慧,引導眾生,[VK1104049]
総持を習得し、聞いたことを忘れない。
得念總持,所聞不忘;[VK1104050]
よく衆生の五根を鑑定し、皆の疑いを解く。
善別諸根,斷眾生疑,[VK1104051]
弁才があって無碍に仏法演説をする。
以樂說辯,演法無礙;[VK1104052]
十善の修行が無欠であるゆえに天人の報いを得る。
淨十善道,受天、人福;[VK1104053]
四無量心を修めるゆえに梵天の境地に至る。
修四無量,開梵天道;[VK1104054]
如来に説法を請い、他人の善行を讃え、それゆえ如来の美しい声を得る。
勸請說法,隨喜讚善,得佛音聲;[VK1104055]
身・口・意を浄化してしまったゆえに如来の威儀が現れる。
身、口、意善,得佛威儀;[VK1104056]
善法を深く修めるゆえにもっと高い境地に至る。
深修善法,所行轉勝,[VK1104057]
菩薩・僧侶を大乗の教えに導く。
以大乘教,成菩薩僧;[VK1104058]
心は油断せず、種々の善を失わない。
心無放逸,不失眾善:[VK1104059]
それが菩薩が有為の法を尽くすということである。
行如此法,是名菩薩不盡有為。[VK1104060]
では、菩薩が無為の法を尽くしていないとはどんなことか?
何謂菩薩不住無為?[VK1104061]
まず、空の境地に至っても、空の境地を修行の終点としない。
謂修學空,不以空為證;[VK1104062]
無相・無作の境地に至っても、無相・無作の境地を修行の終点としない。
修學無相、無作,不以無相、無作為證;[VK1104063]
無起の境地に至っても、無起の境地を修行の終点としない。
修學無起,不以無起為證;[VK1104064]
無常の理を理解したが、善行にはうんざりしない。
觀於無常,而不厭善本;[VK1104065]
世間が苦しみに満ちていると理解したが、生死輪廻を厭わない。
觀世間苦,而不惡生死;[VK1104066]
無我の境地に至っても、衆生を教化して疲れることを知らない。
觀於無我,而誨人不倦;[VK1104067]
寂滅の境地に至っても、涅槃に入らない。
觀於寂滅,而不永滅;[VK1104068]
心がすべてから離れていても、常に善法を修める。
觀於遠離,而身心修善;[VK1104069]
帰る場所(最終の生息地)がないと知っているが、善の境地にとどまっている。
觀無所歸,而歸趣善法;[VK1104070]
無生の理を理解したが、法を生じて衆生を済度する。
觀於無生,而以生法荷負一切;[VK1104071]
無漏の境地に至っても、煩悩を断ち切らない(衆生を済度するため)。
觀於無漏,而不斷諸漏;[VK1104072]
無為の境地に至っても、有為法を利用して衆生を教化する。
觀無所行,而以行法教化眾生;[VK1104073]
空・無の境地に至っても、大悲の心を捨てない。
觀於空無,而不捨大悲;[VK1104074]
正位に至っても、小乗の道に従わない(無為涅槃に入らない)。
觀正法位,而不隨小乘;[VK1104075]
あらゆる物事は虚妄であり、無人であり、無相であり、束縛なし、主宰なしと知っているが、
觀諸法虛妄,無牢無人、無主無相,[VK1104076]
本願(すべての衆生を彼岸に渡す願望)を達成する前、福徳・禅定・智慧を利用して衆生を済度する。
本願未滿,而不虛福德、禪定、智慧:[VK1104077]
それは、菩薩が無為の法を尽くしていないということである。
修如此法,是名菩薩不住無為。[VK1104078]
また、福徳を積むために、無為の法を尽くしていない。
又具福德故,不住無為;[VK1104079]
智慧を培うために、有為の法を尽くす。
具智慧故,不盡有為。[VK1104080]
大慈悲の心を持っているゆえ、無為の法を尽くしていない。
大慈悲故,不住無為;[VK1104081]
本願を達成するため、有為の法を尽くす。
滿本願故,不盡有為。[VK1104082]
仏法の薬を採るため、無為の法を尽くしていない。
集法藥故,不住無為;[VK1104083]
衆生に薬を処方するため、有為の法を尽くす。
隨授藥故,不盡有為。[VK1104084]
衆生が病気になっていると知っているゆえ、無為の法を尽くしていない。
知眾生病故,不住無為;[VK1104085]
衆生の病気を治すため、有為の法を尽くすのだ。
滅眾生病故,不盡有為。[VK1104086]
そのように、正士たちと菩薩たちは有為の法を尽くし、無為の法を尽くさない。
諸正士菩薩以修此法,不盡有為、不住無為,[VK1104087]
それが、尽無尽解脱の法門なのだ。
是名盡無盡解脫法門,[VK1104088]
お前たち! それを学んだほうがいいのだ。」
汝等當學。」[VK1104089]
その時、衆香仏国の菩薩たちはこの説法を聴いて、皆とてもうれしくて、
爾時彼諸菩薩聞說是法,皆大歡喜,[VK1104090]
さまざまな色・香りの花を三千大千世界に遍く散らしました。
以眾妙華、若干種色、若干種香,散遍三千大千世界,[VK1104091]
皆はお釈迦様、尽無尽解脱の法門及び娑婆世界の菩薩たちを供養した後、
供養於佛及此經法并諸菩薩已,[VK1104092]
平伏して額をお釈迦様のお足につけて拝み、未曾有であると賛嘆し、そして、
稽首佛足,歎未曾有,[VK1104093]
「釈迦牟尼世尊様はこのように方便を利用して衆生を済度することができるのです!」と言いました。
言:「釋迦牟尼佛乃能於此善行方便。」[VK1104094]
そして、皆は急に姿を消し、衆香仏国に帰りました。
言已,忽然不現,還到彼國。[VK1104095]