般若心経はんにゃしんぎょう】本義解説


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【目次】



第一部:般若心経の全文
第二部:経名の意味
第三部:般若心経の要旨―「空」
第四部:空の意味
第五部:空という性質
第六部:空の境地(一)
第七部:空の境地(二)
第八部:菩薩たちからの実証
第九部:諸仏からの実証
第十部:結論
第十一部:全文意訳


第一部:はんにゃしんぎょうの全文


はん にゃ   みっ  しん ぎょう 
 かん  ざい  さつ  ぎょう じん はん にゃ   みっ    しょう けん  うん かい くう   いっ さい  やく  しゃ    しき   くう  くう   しき  しき そく  くう  くう そく  しき  じゅ そう ぎょう しき  やく  にょ   しゃ     しょ ほう くう そう   しょう  めつ     じょう   ぞう  げん    くう ちゅう  しき   じゅ そう ぎょう しき   げん   ぜっ しん    しき しょう こう  そく ほう   げん かい  ない    しき かい    みょう  やく   みょう じん  ない   ろう   やく  ろう  じん    しゅう めつ どう    やく  とく    しょ とく    だい さっ    はん にゃ   みっ    しん  けい    けい         おん  いっ さい てん どう  そう   きょう  はん  さん  しょ ぶつ   はん にゃ   みっ    とく  のく   さん みゃく さん  だい    はん にゃ   みっ    だい じん しゅ   だい みょう しゅ    じょう しゅ    とう どう しゅ  のう じょ いっ さい   しん じつ     せつ はん にゃ   みっ  しゅ  そく せつ しゅ わつ  ぎゃ てい  ぎゃ てい    ぎゃ てい    そう ぎゃ てい   だい さっ    



第二部:経名の意味


般若波羅蜜多心経はんにゃはらみったしんぎょう


単語の意味

般若はんにゃ」(梵語)

 素晴らしいにょらい。すべてをきわめることができ、また、ぼんのう・欲望・もうそうを断ち切ることもできる。

波羅蜜はらみつ」(梵語)

 しょうの世界であるがんからはな だつがんに至ること。

」(梵語)

 みつの末尾の音節。

しん

 心を修めること。

ぎょう

 修行の経路。こうじょうへんの理。


経名の意味

 によってがんに至る心法。



第三部:はんにゃしんぎょうの要旨―「空」


観自在菩薩かんじざいぼさつ


単語の意味

かん

 を通じて観察すること。

自在じざい

 心。覚性。

菩薩ぼさつ」(梵語)

 だいさっの略。

菩提ぼだい」(梵語)

 覚悟。真理を悟り、だつきょうに至ること。

薩埵さった」(梵語)

 ゆうじょうかく。他のしゅじょうさいすること。


経文の意味

 二つの意味を含んでいる。

 一、かんおんさつ

 二、すでに心のほんしつを悟り、だつきょうに至ったさつたち。



行深般若波羅蜜多時ぎょうじんはんにゃはらみったじ


単語の意味

ぎょう

 修行。

じん

 極致。


経文の意味

 はんにゃみつを修めて極致のきょうに至った時。



照見五蘊皆空しょうけんごうんかいくう


単語の意味

照見しょうけん

 鏡のように物事を映す(見る)こと(しゅうちゃくがないこと)。

五蘊ごうん

 つまりおんしきじゅそうぎょうしき

うん

 集まること。

いん

 遮ること。しゅじょうおんえいきょうしょうじょうな覚性が覆われている。

しき

 姿・形があるもの。心は色からじん ゆう しゅうぜん あくなどのべつを起こす。

じゅ

 かんじゅべつから苦楽などのかんじゅを起こす。

そう

 色・受に対して起こす執念(しゅ しゃあい ぞう)。

ぎょう

 執念から誘発する行動(業を作ること。いんおうほうはこれから始まる)。

しき

 霊魂に刻んで覚えておく行動のごうしきいんしょう・記憶。報いに導くもの)。


説明※

 うんしょうめつはこのようにじゅんかんしているゆえ、りんは終わらない。

くう

 全きょうてんの要旨。

 一、空の基本的な意味はきょである。しかし、仏教においては完全なきょという意味ではない。

 二、空でも有る。有でも空である。空と有の融合。空と有の間。空でも有でもない(空気のようである)。

 三、空にも有にもしゅうちゃくしないこと(ちゅうどう)を意味する。一般人はすべてが有でなければ無であるという二元的な観点にとらわれている。


経文の意味

 うんほんしつが空であると悟った。



度一切苦厄どいっさいくやく


単語の意味

 ちょうだつ。超えることとはな ること。

 (精神的・肉体的)苦しみ。

やく

 災い。悪いこと。


説明※

 うんしゅうちゃくしなければ(業を作らなければ)、いんおうほうやく)のじゅんかんはとどめられるようになる。


経文の意味

 あらゆるつうと災いをちょうだつしてしまった。



第四部:空の意味


しゃしきくうくうしきしきそくくうくうそくしき


単語の意味

舎利子しゃりし」(梵語)

 二つの意味を含んでいる。

 一、しゃほつそんじゃ(おシャ様の十大弟子の一人であり、弟子の中で第一としょう れる)。

 二、仏や聖者がそうされた後に残るけっしょうのようなこつ。ここでは修行がじょうじゅした者を指す。

不異ふい

 異ならないこと。

即是そくぜ

 すなわち。


説明※

しきくうしきそくくう。」

 色のほんしつは空である。あらゆる物事はさまざまないんねんによって刻々としょうめつしてへんしているゆえ、常住へんな本体は存在しない。『こんごう経』の言葉を引用すると、「あらゆる物事は夢・幻・泡・影のようだ」。

くうしきくうそくしき。」

 一、空は何もないのではない。例えば、部屋とは壁に囲まれている空間(形がある)を指すのである。

 二、空は使用できる。例えば、杯を使うことは杯の内側の空間を使うことである。

 三、空と有の融合。空間がなければ万物は存在できない。

 四、空は色である。夢・幻・泡・影は有でも無でもない。

 りょう科学の発現によると、ぶっしつを構成する原子の99.99%以上の体積はただの空間である。電子はげんかくの周りを運動していて、その範囲は原子の形になる。また、ぶっしつはエネルギー(形がない)である。

 一般人は物事の幻相(ゆう にとらわれているゆえにぼんのうを起こす。一方、修行者はすべてが空(無)であるとしゅうちゃくしているゆえ、何をしても意味はないというじゃけんおちいっている。


経文の意味

 修行がじょうじゅした者は色にしゅうちゃくしない。色のほんしつは空であるからだ。また、空(無)にもしゅうちゃくしない。空は色と異ならないからだ。



じゅそうぎょうしきやくにょ


単語の意味

亦復如是やくぶにょぜ

 ⅩⅩも同じこと。


経文の意味

 じゅそうぎょうしきも同じことだ。



第五部:空という性質


しゃしょほうくうそうしょうめつじょうぞうげん


単語の意味

諸法しょほう

 あらゆる物事。

不生不滅ふしょうふめつ

 生じることも滅することもないこと。

不垢ふく

 汚くない。

不浄ふじょう

 しょうじょうではない。

不増不減ふぞうふげん

 増えることも減ることもないこと。


経文の意味

 あらゆる物事のほんしつは空であり、生じることも滅することもなく、増えることも減ることもなく、汚くなく、しょうじょうでもない。修行がじょうじゅした者が知っている。



第六部:空のきょう(一)


くうちゅうしきじゅそうぎょうしきげんぜっしんしきしょうこうそくほうげんかいないしきかい


単語の意味

眼耳鼻舌身意げんにびぜっしんい

 ろっこんしょうじょうほんしょうを汚染するこんげん

 心。

色声香味触法しきしょうこうみそくほう

 ろっきょうろっこんにんしきする対象。

ほう

 事。

「十八界」

 ろっこんろっきょうろくしき。すなわち、眼界・耳界・鼻界・舌界・身界・意界・色界・声界・香界・味界・触界・法界・眼識界・耳識界・鼻識界・舌識界・身識界・意識界。

乃至ないし

 ⅩⅩからⅩⅩまで。


経文の意味

 この空の理を悟ったら、うんろっこんろっきょうにとらわれず(天空のように何にも絡まれない)、眼界からしき界まで(十八界)にもしゅうちゃくしない。



第七部:空のきょう(二)


みょうやくみょうじんないろうやくろうじんしゅうめつどうやくとく


単語の意味

十二因縁じゅうにいんねん

一、「無明むみょう

 明るさの対語。がないこと。ぼんのうの別称。

二、「ぎょう

 みょういんする行動。

三、「しき

 行動から起こるごうしき

四、「名色みょうしき

 ごうしきによって起こる境(報い)。

五、「六入ろくしょ

 境のろくじんしきこえこうそくほう)がろっこんに入ること。

六、「そく

 ろっこんろくじんの接触。

七、「じゅ

 接触から起こるかんじゅ

八、「あい

 接触の対象を好むこと。

九、「しゅ

 愛する対象を手に入れること。

十、「ゆう

 自分がその対象を持っていること。

十一、「しょう

 有から我としょかんねんを生じること。

十二、「老死ろうし

 老いることと死ぬこと。我(偽の我)があるゆえにろうがある。

じん

 断ち切ること。


説明※

みょうやくみょうじんないろうやくろうじん。」

 十二因縁じゅうにいんねんはもともと空(幻)である。縁覚は十二因縁じゅうにいんねんしゅうちゃくしていて、みょうを断ち切ることによってろうを断ち切る(縁覚がだつに至る方法。究極の悟りではない)。

苦集滅道くしゅうめつどう

 四諦したいしょう れる。

しゅう

 集めること。しゅじょうみょうえいきょうされてさまざまな罪を作る(集める)。苦の因。

 やく。罪を作った後、必ず悪の報いを受ける。苦の果。

どう

 道路。当然の理。修道を意味する。だつの因。

めつ

 ぜつめつやくいんを断ち切ること。だつの果。


説明※

しゅうめつどう

 やくはもともと空(幻)である。しょうもん四諦したいしゅうちゃくしていて、道を修めること(法)によってやくを断ち切る(究極の悟りではない)。

やくとく

 仏法を利用すること。

とく

 しゅうちゃくすること。


経文の意味

 十二因縁じゅうにいんねんはもともと空であり、みょうを断ち切ることによってろうを断ち切る必要はない。四諦したいもまた空であり、仏法を利用する必要はない。何にもしゅうちゃくしない。



第八部:さつたちからのじっしょう


しょとくだいさっはんにゃみっしんけいけいおんいっさいてんどうそうきょうはん


単語の意味

 一心に従うこと。

罣礙けいげ

 困ること。

恐怖くふ

 怖がること。

遠離おんり

 遠ざかりはな ること。

顛倒てんどう

 上下てんとう。さかさま。

夢想むそう

 執念にいんする夢見。

究竟くきょう

 最終。

涅槃ねはん」(梵語)

 しょうめつきょうえんじゃく


経文の意味

 さつたちは一心にはんにゃみつに従っていて、物事にしゅうちゃくせず、何にもとらわれない。それゆえ、物事に対してどうようせず、もうそうを起こさず、最終的にはんきょうに至った。



第九部:諸仏からのじっしょう


さんしょぶつはんにゃみっとくのくさんみゃくさんだい


単語の意味

三世さんぜ

 過去・現在・未来。

阿耨多羅あのくたら」(梵語)

 無上。極上。

さん」(梵語)

 正しい。

みゃく」(梵語)

 平等。普遍。

三菩提さんぼだい」(梵語)

 正覚。


経文の意味

 過去・現在・未来のにょらいたちも、一心にはんにゃみつに従っていて、じょうしょうとうがくきょうに至った。



第十部:結論


はんにゃみっだいじんしゅだいみょうしゅじょうしゅとうどうしゅのうじょいっさいしんじつ


単語の意味

しゅ

 ぼんの偈(詩)。ほう。秘密の言葉。

大神だいじん

 神の力のようにで、誰も邪魔できない。

大明だいみょう

 最も明るい。どこでも照らせる。

無上むじょう

 この上もないこと。

無等等むとうどう

 同等。この法を修めたら、他の法を修める必要はない。

真実不虚しんじつふこ

 しんじちで嘘ではない。


経文の意味

 こういうわけで、このはんにゃみつは大神のほうであり、最も明るいほうであり、無上のほうである。このほうを修めたら、他の法を修める必要はなく、あらゆるつうと災いをちょうだつできる。これはしんじちで嘘ではない。



せつはんにゃみっしゅそくせつしゅわつぎゃていぎゃていぎゃていそうぎゃていさっ


単語の意味

羯諦ぎゃてい」(梵語)

 往くこと。至ること。

波羅はら」(梵語)

 みっの略。

そう」(梵語)

 そうぎゃの略。しゅじょう

菩提薩ぼだいさっ」(梵語)

 だいさっの略。

婆訶わか」(梵語)

 の略。じょうじゅすること。


経文の意味

 最後ははんにゃみつの呪によってきょうてんの完結にする。
「往こう! 往こう! がんに至ろう! しゅじょうと共にがんに至ろう! 真理を悟り、しゅじょうさいしよう! すぐにじょうじゅする!」


説明※

 この真言は秘密の意味を含んでいる。言葉ではなく、心だけでしか理解できない。



第十一部:全文意訳


 すでに心のほんしつを悟り、だつきょうに至ったさつたちが、はんにゃみつを修めて極致のきょうに至った時、うんほんしつは空であると悟り、それで、あらゆるつうと災いをちょうだつしてしまった。

 修行がじょうじゅした者は色にしゅうちゃくしない。色のほんしつは空であるからだ。また、空にもしゅうちゃくしない。空は色と異ならないからだ。じゅそうぎょうしきも同じことだ。

 あらゆる物事のほんしつは空であり、生じることも滅することもなく、増えることも減ることもなく、汚くなく、しょうじょうでもない。修行がじょうじゅした者が知っている。

 この空の理を悟ったら、うんを断ち切ることができ、ろっきょうえいきょうされず、ろっこんしょうじょうになる。十八界は空であるからだ。

 縁覚はみょうを断ち切ることによってろうを断ち切る。一方、しょうもんは道を修めることによってやくを断ち切る。もし空の理を悟ることができれば、みょうろうを断ち切る必要はなく、やくを断ち切る必要もない。何にもしゅうちゃくしないからだ。

 さつたちは一心にはんにゃみつに従っていて、物事にしゅうちゃくせず、何にもとらわれない。それゆえ、物事に対してどうようせず、もうそうを起こさず、最終的にはんきょうに至った。

 過去・現在・未来のにょらいたちも、一心にはんにゃみつに従っていて、じょうしょうとうがくきょうに至ったのだ。

 こういうわけで、このはんにゃみつで、最も明るく、無上のほうである。これを修めたら、他の法を修める必要はなく、あらゆるつうと災いをちょうだつできる。これはしんじちで嘘ではないのだ。

 最後にはんにゃみつの呪によってきょうてんの完結にする。

 「往こう! 往こう! がんに至ろう! しゅじょうと共にがんに至ろう! 真理を悟り、しゅじょうさいしよう! すぐにじょうじゅする!」

〈終わり〉



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